日本の水生植物 水生植物図譜
カヤツリグサ科(1) Cyperaceae
(APGV:カヤツリグサ科 Cyperaceae
絶滅危惧種表示:環境省レッドリスト2017準拠
外来生物表示:外来生物法第八次指定
植物分類:APGW分類 併記
genus search
アンペライ属 ウキヤガラ属 カヤツリグサ属
アンペライ属 Machaerina
標準和名 ネビキグサ 学名 Machaerina nipponensis (Ohwi) Ohwi & T. Koyama 生活型 多年草 自生環境 湿地
環境省レッドリスト2017:記載なし

 別名アンペライ。アンペラはAmpero(ポルトガル語、敷物や筵の意)に由来し、この植物がそうした日用品の材料となっていたことを伺わせる。カヤツリグサ科ではカサスゲ等と同様の用途があったのだろう。
 関東地方には自生せず、国内では東海地方以西、海外では東南アジア、インド、オーストラリアにも自生する南方系の植物である。ネビキグサ(=根引草)は根(匐枝)を引き抜くことで多くの株が引き抜ける状態をさした和名であるとする説がある。

 沿岸部の湿地に生え、モウセンゴケやミミカキグサ等の貧栄養湿地を好む植物が生える湿地に自生する。和名由来通り長い匐枝を発達させ、所々か株立する。画像のように株は密な状態となる。
 草丈は50cm〜1m程度、茎の断面は円形〜楕円形で固く、先端が尖る。小穂は長さ5〜6mmで赤褐色、6〜7の花を付ける。(撮影時には出穂していなかった)

(P)2010年9月 茨城県(筑波実験植物園)
ウキヤガラ属 Bolboschoenus
標準和名 ウキヤガラ 学名 Bolboschoenus fluviatilis (Torr.) Sojak subsp.yagara (Ohwi) T.Koyama 生活型 多年草 自生環境 湿地
環境省レッドリスト2017:記載なし

 池や沼の浅い水中から立ち上がるカヤツリグサ科の植物。茎断面が三角形であり、カンガレイやサンカクイなどにも似るが開花すればご覧の通り位置、形状が異なるために判別できる。カヤツリグサやホタルイと異なり、環境(主に水深)により、かなり大型化する。水中から立ち上がり、冬には枯れて茎が水に浮く姿を矢柄に例えて浮矢柄という和名になったと言われている。
 自生は上記の通りため池や湖沼の水深が浅い場所が中心だが、近年これまで見られなかった水田への侵入が報告されている。下画像は家の近所の休耕田に進出した本種であり、ガマやマツカサススキと混生していた。実生に加えて地下茎で増殖し、ため池の岸近くなどで大群落となっている姿を見かける。

 草姿の近似したエゾウキヤガラとの判別は本種は必ず花序柄があること(エゾウキヤガラはない場合も多い)に加え、種子に種子と同長程度の刺針状花被片があることで、種子を見れば確実に同定可能。エゾウキヤガラは「エゾ」を名乗るが関東地方でも普通種であり、水田地帯への侵入も多い。

(P)2008年5月 東京都
2013年5月 茨城県 同左
2013年6月 茨城県
種子。未成熟の状態だが種子と同長の刺針状花被片が見える
同左
小穂。開花が終了し結実が始まった段階
出穂初期 開花が始まる
満開 同左
標準和名 エゾウキヤガラ 学名 Bolboschoenus koshevnikovii (Litv.) A.E.Kozhevn. 生活型 多年草 自生環境 湿地
環境省レッドリスト2017:記載なし

 ウキヤガラと似ているが一回り小さく、別名コウキヤガラとも呼ばれる。エゾウキヤガラを標準和名としたのはoNLINE植物アルバムの標記に準拠したためである。エゾを名乗るが北海道の固有種または国内帰化種ではなく、日本全国、沖縄にいたるまで分布する。

 小穂は細長い花序柄を持つものと、持たないものが混在し、まとまって付く。包葉は2〜3本、退化していない葉も持つ。茎は三稜でやや硬質である。ウキヤガラとは印象が違い、概して小型である。画像は稲の出穂期であるが、この時期成熟して開花している草体がほぼ稲と同じ高さ、50cm前後である。ウキヤガラは通常80cm以上となる。種子が精査できれば、ウキヤガラは刺針状花被片があるが本種は無い。肉眼でも目視可能である。
 本種を収録した図鑑では「本来河川の河口部や塩性湿地など海の影響の強い湿地に自生する」とされるが千葉県などではかなり内陸部にも見られる。これは元々沿岸部であった土地が土砂の堆積や埋め立て等に拠り海水の影響の少ない内陸部となり、そのまま残存したのではないか、と考えられる。この点を考えれば特に塩分濃度や土壌の性質が自生の条件となっている様子はない。

 水田や湿地に多いカヤツリグサ科にあって、従来そうした地形では見ることが少なく、湖沼の浅水域に抽水して自生する姿をよく見かけた。しかし近年水田でも大繁殖し、大きな問題となっている。下画像は茨城県取手市の水田であるが、この水田ほぼ全域に繁茂していた。これでは養分収奪もさることながら稲刈・脱穀の際に確実に混入し、品質を大きく落としてしまう。気候変動のためかどうか不明だが、従来水田に侵入することがなかったクサネムでも同じことが起きている。

(P)2010年6月 茨城県

2010年6月 茨城県 花序 同左 包葉
2014年7月 千葉県 手賀沼干拓地での水田への侵入 同左
カヤツリグサ属 Cyperus
標準和名 アオガヤツリ 学名 Cyperus nipponicus Franch. et Sav. 生活型 一年草 自生環境 湿地
環境省レッドリスト2017:記載なし

 河川敷や湿地に生える小型のカヤツリグサ。別名オオタマガヤツリ。シロガヤツリと草姿が似るが、アオガヤツリは花序に柄があり識別ポイントとなる。また茎は3稜するが角が丸く、翼のあるシロガヤツリと異なる。また小穂の印象がタマガヤツリにも似るが、タマガヤツリに比べると全体的に小さく、小穂が緑色であることで識別できる。
 和名は上記特徴の通り小穂が緑色を帯びることに拠るもの。根元から放射状に広がり叢生して株となる。基部には1.5mm〜2.5mm幅、線形の葉を付ける。茎の先端に花序より長い苞葉を2〜4付け、淡緑色の小穂を球状に付ける。
 本種と酷似するヒメアオガヤツリ(Cyperus extremiorientalis Ohwi)は草丈が10p以下で小さく、頭状花序が単生、柄がないことで判別できる。

 本種は湿地にも自生するが乾燥に強く、川岸からかなり離れた乾地にも進出している姿をよく見かける。小貝川沿い、利根川沿いではごく普通の植物。

(P)2010年8月 茨城県
標準和名 アゼガヤツリ 学名 Cyperus flavidus Retz. 生活型 一年草 自生環境 水田
環境省レッドリスト2017:記載なし

 関東地方ではその名の通り水田の畦や湿地などで普通に見られるカヤツリグサ。分布資料によれば関東地方以西との事で東北・北海道には少ない南方型かも知れない。様々な類似のカヤツリグサがあるが、穂軸の先端に小穂が集まり鱗片の先端が閉じるという特徴があり、複雑なカヤツリグサ属のなかでの同定容易度は中程度。

 アゼ、と水を連想させる和名であるがホタルイ属と異なり抽水はせず、水田に侵入している姿は見たことがない。もちろん水中生育もしない。一方多少の湿り気があればかなり水辺から離れた陸上にも進出する。水田依存度はないと思われるが、畦道近辺で見ることが多い。

(P)2008年9月 茨城県
2014年9月 茨城県
標準和名 イガガヤツリ 学名 Cyperus polystachyos Rottb. 生活型 一年草 自生環境 湿地
環境省レッドリスト2017:記載なし

 本来は、と云うか植物図鑑上でも陸上植物に分類されることが多く、図鑑によっては海岸の砂地などに自生するとあるが、海岸近くでは見たことがなく普通に湿地や畦にある。ちなみにこの画像も内陸の湿地で撮影したものである。
 イガに模されるように密集した花穂の形状が独特である。特にイガ状の種子が出来るわけではない。花穂の形状以外はカヤツリグサやアゼガヤツリに見た目がそっくりである。
 間違いやすいのはカワラスガナ(Cyperus sanguinolentus Vahl)で、専門的に言えばイガガヤツリは痩果の稜が小穂の中軸に向き、花序は頭状で柱頭が2個である点が同定ポイント。見比べれば密集度が異なるので慣れれば見た目でも分かると思う。

 当地では水田、畔、畑地などに一般的。発生量が多く場所によっては群生が見られる。

(P)2008年9月 千葉県
2011年8月 茨城県 花序 同左 小穂
2014年9月 茨城県 同左
標準和名 オニガヤツリ 学名 Cyperus pillosus  Vahl 生活型 多年草 自生環境 湿地
環境省レッドリスト2017:記載なし

 大型のカヤツリグサ属の多年草。草丈は30cmから最長100cmになる。茎は鋭い稜を持つ3稜形、花序は複散房状、長さ18cmに及び、斜上する花序枝も長い(最大15cm)のも特徴の一つ。全体的な印象がミズガヤツリに似るが、ミズガヤツリより慨して大型になるのと、鱗片が鋭頭(ミズガヤツリは鈍頭)、柱頭が3分岐(ミズガヤツリは2分岐)することで判別できる。

 関東地方北部ではあまり自生地が多くなく、ミズガヤツリが出現する休耕田などでも見られない。自然湿地で適度に攪乱が発生するような環境で稀に見かける。

(P)2015年9月 茨城県
2015年9月 茨城県 同左

2019年9月 栃木県(渡良瀬遊水地)
標準和名 カヤツリグサ 学名 Cyperus microiria Steud. 生活型 一年草 自生環境 湿地
環境省レッドリスト2017:記載なし

 カヤツリグサ科は水田・湿地に発生する科としては非常に多くの種類がある一族。本種は科名・属名植物、フラッグシップであるが、それだけに水田地帯では畔、休耕田、やや湿った路傍などいたるところで見る事ができる。別名キガヤツリ、マスクサ(枡草)など。(スゲ属に同名「マスクサ」あり)
 湿地植物としては珍しく光合成タイプがC4植物であり、畑地・乾地でも生育可能。逆に湿潤な土壌では見られるが湛水の水田内では見られない。同じカヤツリグサ属でもハリイ属やフトイ属とは生活史、挙動が異なっている。

 草丈30〜50cm、茎は叢生し、花序枝を5本から7本出す。茎の断面は三角形である。よく誤解されるがカヤツリグサの葉は基部にあり、花序の基部にあるのは包葉である。

(P)2010年8月 茨城県
2014年9月 茨城県 同左
2011年9月 茨城県 花序 同左 小穂

2015年6月 千葉県
標準和名 カワラスガナ 学名 Cyperus sanguinolentus Vahl 生活型 一年草 自生環境 湿地
環境省レッドリスト2017:記載なし

 水田の畦や湿地に自生する小型のカヤツリグサ科一年生草本。叢生し多数の花茎を形成する。赤褐色の密集した小穂を付けた独特の形状で花期であれば同定は容易。情報ソースの分類に従いカヤツリグサ属とするが、柱頭の数、果実の形状の相違によりカワラスガナ属(Pycreus)とされる場合もある。(Pycreus sanguinolentudVahl)
 漢字で書けば河原菅菜だが、河原よりも撹乱のある環境が好きなようで水田や周辺に自生が偏っている。「菅菜」はスゲに似ていることに由来する、という説もあるが、詳細は不明。少なくても食用のニュアンスがある「菜」は実態に合わない。(食用にはならない)

 非常に似通った種にナンゴクカワラスガナ(Cyperus sanguinolentus f. sanguinolentus)があるが、forma扱いされており見かける機会もないので詳細は不明。一応カワラスガナの小花序の柄が伸びるタイプ、とされるが、同様の相違でフタバムグラとナガエフタバムグラの関係はvar.であるのでこの辺の分類は正直よく分からない。

2008年9月 千葉県
2014年9月 茨城県 同左

2015年9月 千葉県
標準和名 カンエンガヤツリ 学名 Cyperus exaltatus Retz. var. iwasakii (Makino) T. Koyama 生活型 一年草 自生環境 湿地
環境省レッドリスト2017:絶滅危惧II類(VU)
 和名にも学名にも献名されている岩崎灌園(1786〜1842)という人が紹介した大型のカヤツリグサ。岩崎灌園は本草図譜という日本で最初の植物図鑑も著している。なかなかの「好き者」で、自宅の庭は採集した野草で一杯だったというから、我々の如き数少ない野草変人の嚆矢のような人だったようだ。

 和名由来の岩崎灌園同様、この草も変わっている。水湿地に自生する湿地植物であることは動かないが、何処に行けば見られる、という類のものではない。環境遷移とともに現れては消え、を繰り返す。湿地で工事などがあり環境撹乱が起きると姿を現すようだ。今回ご紹介する写真も、休耕田と排水路を整備する土木工事付近の撹乱された湿地のものである。時間が経過し大型の多年草などが定着すると勢力に負けて姿を消してしまう。渡り鳥によって種子が運搬された帰化種であるとする説もあるが、どの地域のものか特定された文献は見当たらない。
 草体は大型で1mを超える場合もある。茎は太く三稜し、葉は幅15mm以下、苞葉も葉と同形で著しく長い。花序には10程度の花序枝が付き、さらに分岐した花穂が付く。小穂は約1pの線形で独特の光沢がある。色は成熟度により草色〜褐色。鱗片の中肋が緑色、先端が芒となる。(画像参照)

(P)2010年9月 茨城県
2010年9月 茨城県 花序 同左 包葉と花序の様子
2010年9月 花序拡大 同左 小穂
標準和名 キンガヤツリ 学名 Cyperus odoratus L. 生活型 一年草 自生環境 水田
外来生物:外来生物法指定なし

 大型のカヤツリグサで熱帯原産の帰化種である。千葉県などで帰化が報告されていたが、現在では各地で見かけるようになった。千葉県隣県である本県地元でも普通種であり水田の畦などに大きな群落を形成している。
 本種は花穂が特徴的で、名に恥じない輝きを放つ。とは言え所詮雑草で観賞用の植物ではないため、帰化ルートは輸入牧草などへの種子混入などによるものではないかと考えられている。

 現状、在来他種カヤツリグサ科植物との交雑や排他性は見られないが、強い繁殖力を持つため十分な注意が必要であると思われる。

(P)2006年9月 茨城県
2014年9月 茨城県 同左
標準和名 コアゼガヤツリ 学名 Cyperus haspan L. 生活型 多年草 自生環境 水田
環境省レッドリスト2017:記載なし

 和名はアゼガヤツリの小型のもの、を示しているが非常に紛らわしく、ヒメガヤツリ(別名ミズハナビ)という種がほぼ同じ特徴を備えており、顕著な相違は多年草か一年草か、という点ぐらいしかない。別名の「ミズハナビ」(*ヒメガヤツリの和名シノニムとは別)はアゼガヤツリも含めて呼称される場合がある。本種、アゼガヤツリ、ヒメガヤツリの別名ミズハナビは、湿地や水田に生えて花序が線香花火状に広がることによる。
 やや変異もあるとされるが掘り出してみると横に走る地下茎があるので同定できる。しかし地下茎のないツルナシコアゼガヤツリ(Cyperus haspan var.microhaspan Makino)という変種もあり、なかなか特定がやっかいな種である。

 暖地性の種とされ、関東地方では利根川以南に多いので当地近辺が北限かも知れない。茨城県内ではかなり稀、手賀沼から印旛沼のラインを越えるとやや多く見られるようになる。

(P)2009年10月 千葉県
2015年8月 千葉県 同左

2015年8月 千葉県
標準和名 コゴメガヤツリ 学名 Cyperus iria L. 生活型 一年草 自生環境 水田
環境省レッドリスト2017:記載なし

 水田や湿地にごく普通の植物。カヤツリグサに似るが小穂が丸く密集して付くので「小さな米」に見立ててコゴメガヤツリ、と呼ばれる。英名もrice flatsedgeである。小穂全体もカヤツリグサに比べると小ぶりな印象で、鱗片が小型かつ芒が突出しないという特徴があり、目視レベルで同定が可能である。画像は時期が少し早い状態だが、熟すと黄色が強くなり垂れ下がる。
 カヤツリグサはどちらかと言うと湿地、陸地両性の性質を持っており、畑地や道端など乾地にも進出するが、本種はより湿地性が強く水田や湿地周辺にまとまって自生する傾向が強い。似通った植物でも性質はかなり異なっている。

 似通った両種、カヤツリグサとコゴメガヤツリには種間交雑がある、とする説があるが残念ながら未見である。両種が折り重なるように自生する場所はいくらでもあるが、不思議な事に中間型は見ない。

(P)2009年9月 茨城県
2014年6月 茨城県 同左 イヌスギナやクサネムと混生する
標準和名 シュロガヤツリ 学名 Cyperus alternifolius L. 生活型 多年草 自生環境 湿地
外来生物:外来生物法指定なし

 マダカスカル原産の外来種で、草丈1mを超える大型の多年草。パピルス(カミガヤツリ)に近い仲間。日本には観賞用として持ち込まれたものが意外な耐寒性を発揮して帰化している。当地では利根川河川敷の工事跡など撹乱環境にスポット的に定着している姿を見ることができる。ただし大規模な群落に発達することはないので、完全に日本の気候にフィットしていない可能性もある。
 地下茎が発達し、根茎から三角柱状の茎を出す。葉は退化して鞘状である。シュロガヤツリの名の元になったシュロに似た部分は葉ではなく総苞である。(画像下左)総苞は長さ約30cm、線形で硬質。花は淡褐色(画像下右)だが、日本の気候下では花期が一定しないようで、春〜秋にかけてアバウトに開花するようだ。画像は11月に撮影。

 本種は鑑賞以外に水質浄化目的で水辺公園などに植栽される場合が多く、事実効果もあるようだ。しかし帰化の実態も確認されているので、無制限の利用は理想的な方法論とは言えないだろう。

(P)2012年11月 茨城県
2012年11月 茨城県 総苞 同左 開花
標準和名 ショクヨウガヤツリ 学名 Cyperus esculentus L. 生活型 多年草 自生環境 湿地
外来生物:生態系被害防止外来種

 別名キハマスゲ、ヨーロッパ原産、アフリカ、アジア、アセアニア、南北アメリカに分布。在来種ハマスゲに似た帰化植物。草姿は似ているが、ハマスゲの小穂は赤〜紫褐色で疎らなのに対し、ショクヨウガヤツリの小穂は黄褐色で密であり、開花期には判別が容易。日本では1980年代に帰化し、畑地や牧草地などで猛威を奮っている他、水田など湿地でも発生が見られる。

 食用、を名乗るが食用にされているのは地中海沿岸域、西アフリカ等で栽培される品種であり本種そのものではない。(食用とされるのは塊茎)増殖は凄まじく、1株あたりの種子数は9万個、塊茎数も年間7,000まで増えるという。畑地に於いてはトウモロコシ等に対するアレロパシー作用が報告されている。

(P)2015年9月 東京都
2015年9月 東京都 同左

2015年9月 東京都
標準和名 シロガヤツリ 学名 Cyperus pacificus (Ohwi) Ohwi 生活型 一年草 自生環境 水田
環境省レッドリスト2017:記載なし

 やや分布に偏りがあるカヤツリグサ科の一年草。アオガヤツリ(Cyperus nipponicus Franch. et Sav.)に非常に似るが、アオガヤツリは痩果が倒卵形で、稜に翼を持たない特徴がある。またシロガヤツリは画像のように苞葉が水平に広がり明らかな花序枝を持たない。

 関東地方の水田、湿地では発生量は多くないながらやや普通に見られるが、北国では生育地が限られ福井県ではRDBに記載されているほどである。これは史前帰化種の水田雑草全般の傾向であるが、それ以外にも本種は分布の偏りがあるように思う。近郊の水田では水田に侵入することは稀で、概ね畦や用水路の土手などに自生している。タマガヤツリやアゼガヤツリと混生することもしばしばで、よほど注意していないと見過ごしてしまいそうだ。

(P)2009年8月 茨城県
標準和名 セイタカハマスゲ 学名 Cyperus longus L. 生活型 多年草 自生環境 湿地
外来生物:外来生物法指定なし

 ヨーロッパ南部〜地中海沿岸地方原産の多年草。1984年に東京都江東区で確認された帰化植物であるが、いつ頃侵入したのか正確には分からない。その名の通り生育条件により草丈1m前後にもなる大型のシペルスだ。(スゲを名乗るがカヤツリグサ属)ハマスゲにも似るが草が大型になる特徴の他、苞葉が花序より長くなる。(ハマスゲは苞葉が花序とほぼ同長)

 地下に塊茎を形成し、この塊茎から根が横走し所々で発芽する。このため群落となりやすい。本来湿地性とされているが乾地にも進出するようだ。自分の行動範囲では東京都、千葉県で確認しているが茨城県南部では現時点では見られないようだ。

(P)2015年7月 東京都
2015年7月 東京都 同左
標準和名 タマガヤツリ 学名 Cyperus difformis Linn. 生活型 一年草 自生環境 水田
環境省レッドリスト2017:記載なし

 水田の畦などに自生するカヤツリグサの一種。同定が難しいカヤツリグサ科にあって特徴的な多数の小穂が頭状に集まる形状から見分けが容易。けっして綺麗ではないが草姿と花穂の形状が面白い。周辺地域では普通に見られるが、カヤツリグサが陸上にも自生するのに対し、本種は休耕田や用水路際など湿り気が多い場所に自生する。
 カヤツリグサ科は水田ではおしなべて強害草であるが、農薬使用量の減った昨今本種も大きな群落を形成しているのをよく見かけるようになった。根張りも凄く、手作業で防除するのも不可能だと思う。

 この畦際のタマガヤツリの群落は農作業の障害となったり養分収奪が大きな問題となっており、稲には影響がなくタマガヤツリに作用する選択殺草性を持った除草剤が出回っている程だ。

(P)2005年9月 茨城県
2014年8月 茨城県 同左
2014年9月 茨城県 同左
標準和名 ヌマガヤツリ 学名 Cyperus glomeratus L. 生活型 一年草 自生環境 湿地
環境省レッドリスト2017:記載なし

 関東地方以西に自生する大型のカヤツリグサで、開けた環境では1m以上にも成長する。耕作水田や池などの環境よりも休耕田や堤防工事後など遷移環境で見かけることが多い。「ヌマ」ガヤツリであるが沈水状態で生育することはなく、積極的に抽水する姿もあまり見られない。本質的には湿地植物である。
 茎の断面は3稜形、花穂は特徴的な楕円形で多数の小穂を付ける。稈は肥厚して太い事と併せ、全体の印象が他種カヤツリグサ属の植物と比べても異彩を放っている。

 関東地方での分布はカヤツリグサ、アゼガヤツリ等の一般種に比べると薄いが、上記の通り休耕田や工事のあった水辺などに出現する場合が多く、やや普通に見られる植物である。

(P)2010年9月 茨城県
2010年9月 茨城県 同左
2010年9月 茨城県 花序 同左 拡大

2015年8月 千葉県
標準和名 ハマスゲ 学名 Cyperus rotundus L. 生活型 多年草 自生環境 水田
環境省レッドリスト2017:記載なし

 水田や湿地の他、乾地にも育つ多年草。全国に分布し、古来から薬草として利用されており、正倉院にも漢方薬として保存されている。外来種のキハマスゲ(ショクヨウガヤツリ)に似るが、小穂が褐色がかることで判別できる。ハマスゲの名の通り海浜にも自生するが塩湿地性というわけではない。

 株の基部と地下茎の先端部分が肥大し、独特の芳香がある。地上部の構造は他のカヤツリグサ属の植物とほぼ同様で、花序の基部に苞葉を持ち、花序枝と苞葉はほぼ同長である。同属他種に比べて花穂はやや疎な印象を受ける。畦や休耕田、湿地の他、畑地などでもごく普通に見られる植物である。

(P)2015年6月 東京都
2015年6月 東京都 同左
標準和名 ヒナガヤツリ 学名 Cyperus flaccidus R.Br. 生活型 一年草 自生環境 水田
環境省レッドリスト2017:記載なし

 湿地や水田に生える一年草。草丈10〜20cm程度でカヤツリグサ属としては最小の部類に入る非常に小さな植物。草体全体が柔軟であり、ややまとまりのない印象の株となる。
 根出葉はあるが、数が少なく、花茎が増える夏以降はほとんど発達せず目立たない。精査してみると鞘はあるが葉身が発達していない草体が多い。画像では小穂が花茎の側面に出ているように見えるが、小穂から上は苞葉となっている。(苞葉は花茎1本に対し1枚)
 小穂は長さ数mmから1cm前後で偏平である。鱗片の先端が尖って反り、周囲に細かい鋸歯状となって目立つ。これが本種の外見上の特徴となっている。

 茨城県南部では水田、休耕田、畔、湿地、河川敷などに広範に分布し、最も普遍的なカヤツリグサ属植物の一つである。

(P)2010年9月 茨城県
2011年9月 茨城県 同左
標準和名 ヒメクグ 学名 Cyperus brevifolius Hassk.var.leiolepis T. Koyama. 生活型 多年草 自生環境 水田
環境省レッドリスト2017:記載なし

 畦や用水路際に自生する小型のカヤツリグサ。「クグ」はカヤツリグサの古語である。尚「クグ」を名乗るカヤツリグサ科の植物は他にオニヒメクグ、アイダクグ(タイワンヒメクグ)などがある。
 タマガヤツリ(Cyperus difformis Linn.)と草姿が似ているが、タマガヤツリは花を複数個つけること、ヒメクグは花に独特の甘い芳香があることで区別できる。茎が非常にしなやかで、乾燥させて草履表に用いられる事もあると言う。

 どこにでもあるように思うが、カヤツリグサ科他種と比べると目にする機会は少ない。画像のイメージ通りの何となく気品がある姿が好ましい。尚、本種をヒメクグ属とする説もあるが、属名はCyperusの方が一般的なのでカヤツリグサ属とした。ヒメクグ属の場合、属名はKillingaとなる。

(P)2005年7月 東京都
2014年9月 茨城県 同左

2011年10月 茨城県
標準和名 ホソミキンガヤツリ 学名 Cyperus engelmannii Steud. 生活型 一年草 自生環境 水田
外来生物:外来生物法指定なし

 水田周辺に自生する大型のカヤツリグサ。キンガヤツリとともに雑草としては一際豪華な印象である。様々な資料で「帰化種と考えられている」と書かれているが、いつごろどこから入って来たのか?ということは分かっていない模様。従来は千葉県に帰化していると報告されていたが、現在では茨城県南部でも普通に見られるようになっている。
 同様に帰化種とされるキンガヤツリとは痩果の形状が異なり、この程度の接近画像でもかなり印象が異なるのが分かる。水田には侵入していないが、休耕田や畦際には大きな群落を形成している。農業の被害云々よりも、キンガヤツリとともに畦の植物の生態的地位を脅かしている点が気がかり。

(P)2009年9月 茨城県
標準和名 ミズガヤツリ 学名 Cyperus serotinus Rottb. 生活型 多年草 自生環境 湿地
環境省レッドリスト2017:記載なし

 以前はしぶとく繁殖力の強い水田雑草として嫌われていたが、近年の乾田化によって急速に減少しているカヤツリグサ。このことから、カヤツリグサ属の中でも最も湿地依存性が高い種の一つであると思われる。草丈は50cm〜1m程度、長さ50〜60cm、線形の苞葉を持つ。花穂は特徴的であり、開花期(8月〜10月)であれば同定は容易だろう。
 本種は実生も行うが、開花する頃から地下茎の先端に紡錐形の塊茎を多数形成し、無性生殖を行う。栄養条件が避ければ1uあたり500〜1000個形成するらしい。養分収奪が問題となる殖え方だ。

 利根川流域では水田で見ることは無く、以前湿田であった休耕田や冠水を繰り返す河川敷などで見られるが、極めて稀な状況となっている。画像のものは休耕田由来の湿地のものだが、傍らを流れる小河川の改修のために工事が入った場所で発芽したもの。おそらく根茎が地下水位によって生き残っていたものと思われる。

(P)2010年9月 茨城県
2010年9月 茨城県 同左
2010年9月 茨城県 花序 同左 小穂
標準和名 ミズハナビ 学名 Cyperus tenuispica Steud. 生活型 一年草 自生環境 湿地
環境省レッドリスト2017:記載なし

 別名ヒメガヤツリ、コアゼガヤツリに酷似する。相違点はコアゼガヤツリが多年草で明瞭な匍匐根茎を持つのに対し、一年草の本種には見られない点である。他にも小穂や鱗片の形状など微小な差異はあるが、引き抜いてみれば一目瞭然である。

 厄介なのは「ツルナシコアゼガヤツリ(Cyperus haspan L.var. microhaspan Makino)」という種類があり、こちらは通常根茎が見られず、一年草であることからミズハナビとの誤認の可能性が大きい。こちらは根茎の有無(ない時点でミズハナビかツルナシコアゼガヤツリ)に加え、鱗片の間の隙間を確認(あればツルナシコアゼガヤツリ、なければミズハナビ)という最低2段階の判別が必要になる。

(P)2017年8月 茨城県
2017年8月 茨城県 同左

2017年8月 茨城県
標準和名 メリケンガヤツリ 学名 Cyperus eragrostis Lam. 生活型 多年草 自生環境 湿地
外来生物:外来生物法上生態系被害防止外来種

 熱帯アメリカ原産の帰化植物。戦後の帰化植物としてはわりと古株で1959年に三重県ではじめて帰化が確認されている。現在では関東地方以西の全国に広がっている。一年草説と多年草説があるが我が国では根茎からの発芽も見られるようなので多年草に分類した。もちろん実生も行う。
 花序の形状や印象が独特で、他のカヤツリグサ属にない雰囲気を持った植物なので同定は容易。草丈30〜100cm、茎が束生し株となる。茎は三角柱状、包葉は幅4〜8mm程度の線形で4〜7枚と数多い。

 霞ヶ浦・利根川水系での帰化状況であるが、自分の調査ではまだ利根川を越えていないようだが正確には分からない。利根川南岸、野田市や柏市には自生が多く、少し前のヒレタゴボウやアメリカキカシグサなどと同じ状況となっている。北上も時間の問題と思われる。凄まじい繁殖力を持った植物と言われており、今後の動向に注意が必要。

(P)2011年10月 千葉県 More invaderメリケンガヤツリ
2011年10月 千葉県 成熟した株 同左
2011年10月 千葉県 やや若い株 同左
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