日本の水生植物 探査記録

Vol.191 越谷のコシガヤホシクサ 秋



Location 埼玉県越谷市
Date 2019.10.04(THU)
Photograph iPhone6S

Weather Fine

Temperature 32℃

(C)2019 半夏堂


■葛西用水 秋


(P)葛西用水は春と姿を変えていた 左の建物は越谷市役所
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ついでの越谷その2

■再訪

 先週の渡良瀬遊水地の帰り(探査記録Vol.189 秋の遠足 釣舟草編)に砂沼でコシガヤホシクサを空振りし、天気が良ければ休みに筑波実験植物園にでも行くか、と考えていたが(別にどうしても見たかったわけではないが)久しぶりに越谷で仕事があり、モノはついでで少し早く職場を出て見物することにした。モノはついでなので当然のようにカメラは持っていない。前回同様に型落ちのスマホでの撮影である点はご容赦願いたい。

 東武線の越谷の駅から徒歩10分程度と近い越谷市役所を過ぎるとすぐに葛西用水と元荒川の橋がある。見物地点はこの周辺なのでアクセスは極めて良い。橋の上から川面を見ると5月に見た風景と大幅に変わった川の姿が見えた。水位が2〜3mは下がり、幅の狭い本流とさらに狭い支流、二筋の流れが残り、河床が露出した湿地にはびっしりと草が生えていた。葛西用水は農業用水であり、稲刈りの終了したこの時期は用事がない。水を溜める必要もないので水門は開放している。そしてこのシーズンによる水位差がキタミソウの存続要因注1)となっている。


(P)水位が下がった葛西用水 iPhone6S


■コシガヤホシクサ

 コシガヤホシクサの植栽エリアは葛西用水が満水時にも冠水しない位置にあり、生育期は堤防斜面途中に造られた「ハナショウブ」の展示植栽エリアに導水する水が流されている。ハナショウブが終わり葛西用水も今年の役割を終了した10月、カラカラになった地面にへばりついたコシガヤホシクサが見られた。数は少なかったが一応花芽も上げており、春に見た(今や5月末を春というかどうか微妙だが)小さな苗は世代交代まで無事完遂することが出来たようだ。これだけ見に来たのであればこれで終了、駅から近いこともあってお手軽、というか私にとっては全くもって物足りない。

 コシガヤホシクサが越谷の元荒川付近と下妻市の砂沼でのみ見られた注2)のはこの水位差が共通しているからだ。この意味ではこの付近、至近距離でキタミソウも見られたのは偶然ではない。砂沼にはキタミソウの記録はないが、環境が整っていたとしてもキタミソウは「飛来するかしないか」のギャンブル的要素、着弾位置次第という面もあるので不思議ではないだろう。キタミソウの自生(過去も含めて)には何ら規則性が見出せないが、渡り鳥による種子運搬説が真とすれば渡り鳥の飛行経路と休憩場所次第、ということになる。

 現在ここに植栽されているコシガヤホシクサは砂沼系統の株であるが、元々全国に2ヶ所しかないものなので系統もへったくれもないのかも知れない。復活自体が奇跡的な出来事注3)であり、地名を冠したこの地でもぜひ「自然環境下で」復活して欲しいものだ。
 しかしここでも感じられたのが一般的な無関心。本種は植物マニアであればその復活の経緯や奇跡の積み重ねを目前の植物体に投影し感激するはずだが、一般の目線からすれば「小汚い雑草」であるだろう。ホシクサ全般、一般の関心を呼びにくい草姿や大きさであることは間違いない。そうした判断があるのか無いのか分からないが、誰でも入れる用水の土手に無防備に展示エリアを設けていても発芽から結実まで無事に育つのだ。私に言わせえばこのこと自体凄い実験であり、結果から見れば越谷市民を中心とした見学者は、意識が高いレベルにあるのか、意識が皆無なのか、どちらかであると言えるだろう。

【コシガヤホシクサの開花】
開花したコシガヤホシクサ
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同左
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距離感の違い

■確認できず

 コシガヤホシクサの開花が見られ、約束の時間までまだ間があったので、前回看板と水面(とイチョウウキゴケか)のみ見られたキタミソウの自生地らしき場所に向かった。場所と言っても駅から100m程度の距離である。この看板の解説によればキタミソウは葛西用水と古利根川の溜井部分(要はワンド)に自生する、と書いてある。

 葛西用水での確実なキタミソウの自生地が草加市(この地点から言うと4駅ほど南)にあることは分かっているが、いかんせん今回は「仕事のついで」である。電車を乗り換えてまでキタミソウを見に行ってしまうと「遊びのついで」に仕事をすることになってしまう。正直そうしても誰にも文句を言われる立場ではないが、そこは給料を貰っている立場としての最低限のこだわりだ。仕事の途中に多少の遊びが入ることまでは否定しない。むしろ遊びを主にしたければ有休でも取った方が気分的にはすっきりする。
 というか地元で何度も見ている植物をそこまでして見に行く必要があるのか?という根本的な問題もある。たぶんそんな「必要」はないだろう、カメラも持っていないし。

 地元の自生地でもワンド部分には密集するが、陸上方向+100cm、水中方向−10cmほどの狭いエリアが自生範囲だ。キタミソウは基本的に水草なので水分の影響下にないと枯死してしまう、一方気中で開花結実しないと子孫を残せない、という要求に適合したエリアだ。
 ところがこの自生地、その水際は立入制限(柵)のはるか遠方にあり、とても型落ちのiPhone程度で太刀打ちできる場所にはなかった。コシガヤホシクサの異様に近い距離感に比べて対照的なディスタンスだ。通常装備であれば踏み込みもできるが、なにせ仕事の途中、ビジネスマンスタイルである。地元でも見られる植物であるし、ここは大人しくパスすることにした。


(P)自生場所の解説看板 iPhone6S


【遠い水際】
これで限界
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同左
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■ツンドラの夏

 そもそもこの時期、キタミソウが見られるかどうか微妙な気がする。見られたとしても発芽直後のミミカキグサ程度の草体かも知れないし、逆に発芽したばかりに絶えてしまうというリスクもあると思う。と言うのはこの解説板にもある「ツンドラ注4)の夏と同じような気候になる10〜12月」という部分。今はたしかに10月、しかしこの日の最高気温は32℃である。翌日はさらに上がって33℃の予報が出ている。どう考えても「ツンドラの夏」ではない。高温多湿の日本の夏、キンチョーの夏である。ニュースでもやっていたが、この時期は例年最高気温は23〜24℃程度で、やはり地球はどこか狂っている。
 この時期(当地訪問時期)にラグビーのワールドカップが行なわれていたが、10月であるにも関わらずボールが汗と湿気ですべるほど。日本とサモアの試合では「サモアは後半ばてる」という解説もあった。しかしサモアは熱帯であって、暑さには日本よりも強いはずだがそういう地域の人にも日本の気候は過酷である、ということだろうか。余計な話だが寒冷地の強豪国にして大会直前の世界ランク一位、アイルランドが日本に負けた試合も後半は明らかに運動量が落ちて零封されている。地球の狂いが日本では強く出ているのだろうか。

 そもそもキタミソウに夏場の水深が必要なのは暑さから身を守るためであって、カレンダーが10月に進んだから露出しても平気、という類の話ではない。水が引いて発芽してみたら実質夏だった、という状況では身を守る術がない。我々サラリーマンだって「10月になったから上着とネクタイね」という話だったらこの日は耐えられない。お上が主導した政策で庶民が恩恵を受けている数少ない事例の一つがクールビズだ。そしてこんな小さな世界にも気候変動の影響が深刻に現れている、という思いが浮かんできた。

初めて見た群落

■優占種

 市役所付近の葛西用水、減水によって露出した「元河底」部分にはびっしり植物が生えている。(1枚目、2枚目の画像でも分かる)遠距離から眺めた際に、広葉であることは見て取れたので、経験値を総動員してオオオナモミ(キク科オナモミ属、機雷のようなヒッツキ虫果実がなるやつ)かオランダガラシ(クレソン)か、と見ていたが、市役所裏で河川敷に降りられる階段があり、接近してみるとシロザであった。
 この環境で優占種がシロザ、というのは意表を突かれた、というか初めての経験だ。シロザはAPG分類では注5)ヒユ科アカザ属に属するが、古い時代の帰化植物とされている。こうした裸地には真っ先に帰化植物が定着するという原則があるが、その意味では当然の状況なのだろうか。従って「経験値的に」考えたオオオナモミもオランダガラシも帰化種であって本筋は外していない。

 しかしシロザは帰化種といってもかなりの古顔で、多くの方は在来種だと思っているだろう。しかし何かのスイッチが入れば帰化種の特徴が目覚めてこの有様になるのか。今まで畦にポツポツ単独で生えているシロザやアカザしか見た事がなかったのでこの光景は新鮮であった。また、高血圧に悩まされる最近、何かで調べた血圧を下げる薬草にはシロザが含まれており、常用しているアムロジピン注6)の代わりに大量採集して、と思ったが、考えるまでもなく仕事中だった。
 シロザが生えている地形、露出した河底は現時点の水面よりやや標高が高く、目を凝らして見てもウキクサがへばりついている程度でキタミソウは見つからなかった。地元の自生地でもキタミソウは他の植物群落の合間に生えることはないので当然か。


(P)露出部分はシロザがグラウンドカバー iPhone6S


葛西用水路

■曳舟川

 以前葛飾区で仕事をしていた際に、亀有からお花茶屋にかけて「曳舟川親水公園」という道路の中央分離帯に細長く造られた公園を見ていたが、川幅にしても流量にしても(時期によっては水無し川)この葛西用水と結びつかなかった。葛西用水路は都内に入ると曳舟川と名を変える(以前は一部「亀有上水」と呼ばれていたようだ)長大な用水路なのだ。
 残念なことに都内では暗渠化され、水面を見ることはない。曳舟川親水公園のほぼ小川のような流れは人工的なものである。その地下にこの越谷を通過する膨大な水量が流れているのだ。

 現在、東武スカイツリーライン注7)に曳舟という駅があるが、由来はもちろん曳舟川で、川岸を綱を付けた舟を曳いて移動させていたことによるネーミングだ。何でもかんでも分かりやすく改名してしまう傾向は味もそっけもなくてつまらない。私なんざいまだに「とうきょうスカイツリー駅?・・あぁ吾妻橋のことか」という1人時間差状態だ。


(P)葛西用水下流方向 iPhone6S


■二次的自然の底力

 葛西用水は人工河川とは言え、すでに350年以上の歴史を持っている。比較の対象にはならないが、自宅の狭いタフブネビオトープでさえ数年間の放置によって植栽した覚えのない植物は生えてくるしトンボやカエルが繁殖の場所として利用している。僅かな時間で生態系と呼んでもよい環境が出来上がっている。その何百倍の歴史を考えれば、いや実態もそうだがもはや自然環境と呼んでも良いだろう。

 水田やため池を中心とした里山環境は二次的自然(注8)と呼ばれるが、キタミソウの定着や季節毎の植生の変遷(当コンテンツ、Vol.186 越谷のコシガヤホシクサ 春を参照)を考慮すれば葛西用水も立派な二次的自然である。水質がやや良くないのはご愛嬌としても、もともとが利根川から取水注9)しているのでそれは仕方がない所。むしろ都市部を流れる用水としては健闘している方だろう。越谷市のデータは見当たらないが、草加市の公開しているデータを見るとBODは季節変動はありつつも1.9〜5.8の範囲だ。また水質が悪化するのは2月、これは用水としての役割がない時期であり、通水もほぼなく水の滞留時間が長いためである。

■懸念材料

 私ごとき、植物しか見ない偏向した見方の人間でもこれだけの景観の水環境が市街地の中心部にある重要性は分かる。水が多ければ迂回しなければならないし橋は道路が混むし(利根川の橋なんざどこもかしこも酷いもんだ)不便なことも多々あるが、住環境として考えた場合、利便性を超越した「プラスアルファ」が重要であると思う。
 私は若い頃に最寄駅が山手線の田端と駒込、両方住んだことがあるが、今どちらかに住むのなら間違いなく駒込を選ぶだろう。田端の、京浜東北線も利用できるという利便性より六義園と古河庭園がある駒込である。癒しとか趣味とか単純なモノではなく日々何気に目に入る景観の重要性。自慢じゃないが駒込に10年近く住みながら六義園には一度も入ったことがない。
 残念ながら現在(将来も、か)居住している町にはそういう発想はないようだが、現状は景観を「造る」気がない、自然環境を創出する気がない市の住民としての立場を超えて、葛西用水に付いて少し心配になったことがあるので、最後にメモとして書かせて頂きたいと思う。もちろんよそ者の余計なお世話である。

 まず、これだけの水環境がありながら水生植物の種類と量は圧倒的に少ない。これまでの経緯、要するに過去の水生植物の植生や埋土種子からの発芽記録の少なさ(というか葛西用水では記録が見つからない)を考えれば以前存在したことも考えにくい。つまり復活を期待することはできない。近未来的にも現状のままである。春の記事で書いたアサザはおそらく植栽であると思うが、外来種を含めて無暗に植栽することが正しいとは思わない。見事に維持管理された葛西用水で違和感があるとすれば、景観と植物の種類・量がミスマッチであることだ。これは過去訪問した栃木市の巴波川や三島市の源兵衛川などと大きく異なる部分だ。
 第二に、用水としての運用上は仕方がないと思うが、季節によって水量の変動があまりにも大きい。このことは上記のようにキタミソウの存続とリンクしているのであるが、一方では攪乱の規模が大きすぎて定着できる一般種の水生植物が限られること。その結果渇水時期に出現する湿地は裸地となってしまう。裸地は上記のように外来種の大繁茂を招きやすい環境である。現状はこの環境の渇水期には不思議なことにシロザが優先種となっているが、見るからにすぐに何者かに取って代られそうな雰囲気がある。シロザ自体古い外来種であるし、今時どこに行っても外来種を見ない事はないので杞憂であれば良いのだが、凶悪な外来種があっという間に環境を占有してしまい防除不可能な事態注10)になってしまう事態も考えられなくはないな、と感じた。


 幸か不幸か、2020年の野外シーズン開始と重なるように新型コロナウイルス騒動が始まり、StayHome、在宅ワークが日常化した。外出自体しにくくなったのと仕事とプライベートの区分けがグレーゾーンになり(これは多分に精神的なものだが)去年の出来事をゆっくり纏める時間も取れた。というわけでこの記事が2019年の活動記録の最後になる。2020年は現時点で何の見通しも立っておらず、当面この「探査記録」は更新、というか探査自体が難しくなっておりお休み状態になるかも知れない。


脚注

(*1) これまで様々な記事で触れてきたので簡単に。水位変動の必要性はひとえにキタミソウが暑さから身を守るためである。ここ越谷の葛西用水、地元小貝川の農業灌漑用の分水路を見ると満水時期と渇水時期、3〜4mの水位差がある。一般的に水深が1m深くなると水温は1℃下がるとされており、キタミソウは表層よりも3〜4℃低い水温が越夏のために必要であることが分かる。また両自生地とも水質は「綺麗」という程ではなく、満水時の透明度は低いため、キタミソウは越夏時期は光合成など生活の機能を停止している可能性が高い。従って除草剤や化学物質の影響がなければある程度の水質悪化は存続のマイナス要因にはならないはずであり、現実もその通りとなっている。

(*2) 生態を考えると日本国内、他の場所にもありそうなものだが、越谷での発見が1938年、記載は翌年であり、それ以前に絶滅した場所の記録は残っていないので自生地が2ヶ所、というのはあくまで記録上の話である。また存続のための水位差の条件など詳細はよく分かっていないが、わりと多くの地点で見られるキタミソウの方が条件が緩いのかも知れない。葛西用水と砂沼はそう思わせるほど季節による大きな水位差がある。

(*3) 「異端の植物「水草」を科学する」(ベレ出版 田中法生著)に復活のいきさつが詳しく述べられている。コシガヤホシクサが虫媒花であることを発見した偶然の出来事など、奇跡の積み重ねで復活した経緯がよく分かる。残念なのは筑波実験植物園の来場者のうち圧倒的多数がエントランス近くの展示エリアをスルーしてしまうこと。薔薇や蘭などより桁違いに貴重なのだが、ホシクサの頭花程度では綺麗な花には勝てない、ということか。どこに行っても入場者の少ない植物園、運営のためには一般受けする企画展が必要であることは理解しつつ。

(*4) ツンドラは地下に永久凍土が広がり降水量の少ない寒帯の地形で、高緯度地方特有の短い夏には表層が溶けて地衣類や草本の生育が一部で可能になる。キタミソウはこのツンドラ(北極、南極、高山各ツンドラのうち北極)の植物であると考えられているが、実際にツンドラに自生しているのかどうか自分で見たわけではないので分からない。少なくても21世紀に入ってからは、ツンドラの短い夏が日本の2〜3月、10〜11月と同じような気候になる、という設定は崩れている。2019年は特に10月に入ってからも猛暑日が何日か続いているのだ。地球温暖化の影響は同時にこのツンドラにも及んでおり、「本家」にあるはずのキタミソウの存続も懸念される。

(*5) 本サイトの水生植物図譜ではクロンキスト体系を採用しているためにアカザ科アカザ属に分類している。APGではヒユ科に変更されているが、外見的にはヒユ科と言われてもピンと来ない。しかしこの有様(環境を占有するほどの大繁茂)を見ると元祖ヒユ科(旧分類でもAPGでも)のツルノゲイトウ属、ナガエツルノゲイトウを思い出す。いつこの凶悪な外来種がここに到達するのか分からないが、この地点から僅か20kmほど東の手賀沼では猛威を奮っている。越谷から手賀沼方向は下流にあたるし直接連続した水域はないが、どこでどうやって到達するのか分からないのがこいつ。

(*6) アムロジピンベシル酸塩を主成分とした(安易なネーミングだ)高血圧の薬。高血圧ビギナーの私は5mgから始めているが、10mgの錠剤もある。成分が単純なためかジェネリックとなっており、処方箋は必要であるが安価に手に入る。私が愛用しているのは30日分でも600円以下。原理はカルシウム拮抗で、カルシウムが血管壁に入ることによる血管の収縮を防止し、血圧上昇を抑える、というもの。何だか水槽のpHを下げる話のような仕組みだ。ちなみに血圧降下剤には他にも方式の違いによってACE阻害薬、ARB、利尿薬、α遮断薬、β遮断薬など様々なタイプがある。医者は取って付けたように「肥満防止」「喫煙禁止」「塩分過剰摂取禁止」というが、デブや喫煙はすぐにやめられないし、食い物の塩分なんぞ一々気にしていられない。(だから高血圧になることは分かっている)

(*7) 要は「伊勢崎線」。色々調べてみると「東武スカイツリーライン」は愛称のようだ。首都圏では埼玉っぽくてイマイチあかぬけない東武は野田線を「東武アーバンパークライン」と呼んだり、東上線を「森林都市線」と呼んだり(これは外部のディベロッパーの営業戦略のようだ)イメージアップに躍起のようだ。しかしスカイツリーにしても一駅だけのこと、群馬から栃木、埼玉を通って東京にいたる長大な路線の愛称としては如何なものか、と思う。アーバンパークラインにしたって清水公園と大宮公園のこと?という程度。森林都市線にいたっては森林公園だけじゃねぇか、と。我らが常磐線なら霞ヶ浦線でも筑波線(これは昔あったな)でもスパリゾート線でも何でも付けられるぞ、と思ったが、JRはこういうシャレはやらないようだ。

(*8) 環境用語で、EICネットによれば「人間活動によって創出されたり、人が手を加えることで管理・維持されてきた自然環境のこと。里地里山を構成する水田やため池、雑木林、また、採草地や放牧地などの草原などがこれにあたる。」とある。しかしよく考えてみると、「人が手を加え」ない自然環境というものは考えにくい。富士の原生林(青木が原)だって自動車道や観察路はあるし、氷穴には手摺や階段もある。水湿地環境においてはまったくの手付かず、の環境は遷移が早くなりがちであるし、定義通りであれば霞ヶ浦や利根川流域はすべて二次的自然である。個人的にはかなり狭義となるが、人間が生活の為に手を加えた里地里山、に限定しても良いように思う。

(*9) 葛西用水は利根川の利根大堰(左岸:群馬県邑楽郡千代田町、右岸:埼玉県行田市)から取水される。取水時点で濾過しているわけではないので、基本的に水質は利根川のものを継承する。例えばこの取水地点よりかなり下流で取水している北千葉導水路(千葉県印西市・我孫子市)によって手賀沼のCOD値が改善していることから(元々の手賀沼の水質が凄まじかった、という原因はあるが)少なくても用水として使用できる水質であることは間違いないだろう。国土交通省の主要河川のBOD年平均ランキングにおいて、葛西用水取水地点の埼玉・群馬エリアにおける利根川の水質ランクは関東地方では9位(全国143位)である。

(*10) ナガエツルノゲイトウやミズヒマワリは分化全能性という強力な復活能力を備えており、一度定着してしまうと完全に排除することがかなり困難となる。綿密に手作業で排除し、植物体のカケラも残さないという防除によって可能となるが、特定外来生物法の縛り、防除主体が官公庁自治体もしくは委託事業者に限られる現状では実質不可能である。入札方式では事業者がコストを抑えるために作業員にアルバイトの比率が多く、対象植物の特性や注意点が徹底されているとは言い難い。正社員でも似たり寄ったりだろう。このことは想像ではなく、事業として行われた防除において、その後間もなく特定外来生物が復活した事例を数多く見ている。随契でもそこまで理解した事業者に委託するというルールがなければ根本的に話は同じ。


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