日本の水生植物 探査記録

Vol.186 越谷のコシガヤホシクサ 春



Location 埼玉県越谷市
Date 2019.05.31(FRY)
Photograph iPhone6S

Weather Cloudy

Temperature 23℃

(C)2019 半夏堂


■葛西用水の自然


(P)葛西用水の「ハナショウブ」
iPhone6S

カメラなし
■越谷市

 この何の変哲もない地方都市、それこそ関東地方以外の方にとってはどこにあるのかも分からんような町は水生植物2つで有名だ。一つはキタミソウ。町のほぼ中心部を流れる葛西用水で発見され、現在まで存続しているようだ。たまたま仕事で越谷に行く用事があり、短時間ではあったが自生地だけでも見ておこう注1)と市役所近辺の自生地を見学してきた。

 以前は仕事のバッグにも気の利いたコンデジを1台忍ばせていたが、最近は精密機器の運搬に向かないグレゴリー注2)のビジネスバッグに代えたこともあって持ち歩いていない。しかし考えてみればスマホがあった。型は古いが何とかなるだろう。昔々同じようなシチュエーションでAndroidのスマホで酷え写真が撮れてびっくりしたがさすがに今時それはないかな、と。
 しかし今こうして見てみると写ることは写るが、フラットで奥行きの感じられない写真しか撮れていない上に、白飛びやノイズ、ジャギー注3)など一昔前の安いコンデジのような雰囲気だ。しかしこれはスマホ云々の問題ではなく、設計上注4)、光学系の限界なのだろう。

 キタミソウはこの時期当然のように見られなかったが、それよりも「葛西用水」という語感の持つイメージが胴長短足の私でも一跨ぎできる近所のしょぼい「用水」のようなものであったが、現物は大きな河川のような流れであったことに驚いた。越谷市役所の真裏あたりでは、この区間並行して流れる元荒川より川幅がある。着いて早々に葛西用水を見た時にはこれが目指す流れとは思わず、幅1〜2mの小河川を探したほど。実際、近所のキタミソウはそのような環境にある。
 葛西用水では折からハナショウブ(という植物はないが)が開花を始め、平日の昼間にも関わらずそこそこの数の見物客が歩いていた。個人的には決定権があればこの手のモノは植栽しないが、それはマニアのたわごとである。一般的にはこれで「自然豊か」で十分である。それでもこういう環境が市の中心部にあるのは非常に羨ましいし、居住空間のコンフォートってのはつまりこういう事だなと感じた。相変わらずほぼ何もない町の住人からすればまぶしい光景だ。


(P)市役所裏の葛西用水。岸辺にはハナショウブが植栽されている iPhone6S


 越谷市は関東近辺居住者の我々でもよく知らない地味な町であったが、近年人口の伸びがめざましく(平成元年27万7千→平成29年33万9千)、過疎傾向の我が取手市にしてみればこれも羨ましい限り。人口減は税収減に直結し、行政サービスの様々な点で劣化が発生する。つまり居心地の良くない町になってしまう。原因は2011年の原発事故で空間線量が高くなり転出者が相次いだ、という事情もあるが越谷と決定的に異なるのは特長、言い方を変えれば売物、チャーミングポイントがない、ってことだ。
 一方、越谷の人口増の理由は越谷レイクタウンという大規模ショッピングモール+マンション群が出来たことが大きい。客観的には池の周りに居住空間と買い物場所を作っただけで何のことはないが「レイク」を前面に打ち出した団地が今までに無く、斬新さがあったためだろうか。またレイクタウンは武蔵野線の沿線だが、南越谷で東武線(日比谷線)に乗り換えれば都心方面へのアクセスも良い。

 私の興味はその「レイク」にあったが、この池は元荒川と中川の洪水防止のための調節池であって、以前見に行った際には何ら興味を惹くようなものは見られなかった。近所にも新興の団地には水害防止のための調節池(これほどの規模のものはないが)はあるが、こんな必要悪(必要なければその面積が宅地や集会所などに使用できる)を逆手に取って売物にしようという発想は凄い。普通に考えれば、これだけの調節池が必要であるということは水害の危険性がいということで、通常なら居住地には選ばないだろう。まさに禍転じて福となす、ってところだろうが本当に水害が起きないという保証はない。自分も家を買った際にはこういう発想はなかったので他人事ではないけど。

【キタミソウ自生地の状況】
iPhone6S キタミソウは葛西用水ではワンド部分に自生する iPhone6S 時期的に草体は見られず、イチョウウキゴケが浮いていた

■キタミソウのワンド

 キタミソウのエリアは葛西用水がワンド状になった場所で、流れは滞留しているようだった。設置された遊歩道には立看板があり、この植物の由来やら解説やらが書いてあったが、時期に加え、水がマッディーで川底も見通せず、生育期の状況を想像するだけであった。それはあらかじめ予想したことなので「見られない」という失望はなかったが、予想していなかったのはこの水量。上記のように「用水」は用水路の「用水」程度を考えており、これだけの水量がある環境にキタミソウが自生しているとは思わなかった。キタミソウの生活史を考えれば、葛西用水は水門などの運用によって大きく水位が下がるのだろう。キタミソウだけを見に再訪する気はないが、どれだけ水量が下がるのか見てみたい気もする。

 しかしこの自生地は地元に比べると圧倒的な利便性がある。自生地から半径100m以内にトイレもコンビニも休憩所もある。こういう探査地ばかりであればさぞかし楽だろうが、人間がダメになるかも。誰でも気軽に見に行ける場所だけ行って「探査」と称する羊頭狗肉的な後ろめたさもあるし。
 5月末日の自生地にはアシカキやアゼナルコが繁茂し、水面にはイチョウウキゴケが浮かんでいた。イチョウウキゴケは久しぶりに見るような気がするが、用水本来、つまり水田との連続性が感じられて好ましかった。このワンドには少数の釣人がいたので邪魔にならないように見学させて頂いたが、街中で釣りが出来る贅沢は素敵だ。最近は安全性だか何だか理由は分からんが、水があるとすぐに「釣禁止」と来る。こういう大らかさがない水辺はしょせん作り物。「釣禁止」「花火禁止」「禁煙」「ゴミ投機禁止」、それぞれ理由はあるだろうし反対はしないが、必要以上に触れ合いたい私のような人間にとっては「近づくな」「見るな」と言われているように感じられてしまうのだ。


■意地のコシガヤホシクサ

 植物のもう一つは町の名前を冠したコシガヤホシクサだ。名前は冠しているがすでに遥か昔に絶滅しており、ここでこうして見られるとは思わなかった。まだ発芽して日が浅い株だが、順調に生育しているように見えた。
 コシガヤホシクサに付いてのこれまでのいきさつ、つまり絶滅と復活の経緯を考えれば、越谷市にとって残念なことに植栽されている株は地元にかつて自生していた越谷系統ではなく、砂沼注5)系統であると考えられる。この話は長くなってしまうので割愛するが、結論を書けば筑波実験植物園で見られる株と同じ、ということだ。それでも「コシガヤ」を冠したホシクサをこうして植栽しているところは越谷市の意地だなぁと思った。

 砂沼系統、と言っても偉そうに語れないのは越谷市と同様に一度絶滅しているからである。現物は上記の筑波実験植物園やここで見られるが、レッドデータ上の扱いは野生絶滅(EW)である。越谷と砂沼の違いは、研究者(東京農業大学 宮本太教授)が種子を保管していたという事に過ぎない。どちらも人間の何らかの活動の影響によって絶えてしまった事実に変わりはない。


(P)葛西用水に隣接するコシガヤホシクサ見本園 iPhone6S


 この「コシガヤホシクサ見本園」は2m四方程度の水たまりのような場所で「ハナショウブ園」と水域が連続している。水源は葛西用水と思われるが、見かけ上の水質は透明度もあって特に問題はないようだった。ホシクサというと気中に無数の花茎をあげて開花しているイメージがあるが、このコシガヤホシクサは成長期間を水中で過ごすために、意外と水質が重要なのだ。砂沼も農業用ため池であって水質は大したことはないが、とりあえず成長期間に水があるという要素、植物が育つのに最低限必要な導電率注6)やpHであることは不可欠だ。
 成長期間は水の中、そしてこのホシクサは意外なことに虫媒花注7)であり、気中で開花しなければならないなど、キタミソウの生活史に似ている。微妙な環境を存続基盤にしている希少な植物達が同所的にここで見られる。しかも当初は駅から徒歩10分程度の町の中心部であり、この一点においても、越谷市は首都圏では稀有な町であると言えるだろう。


【発芽したコシガヤホシクサ】
iPhone6S iPhone6S
帰化植物
■川岸に並ぶカヤツリグサ

 最近はどこに行っても外来植物を見ない事はないが、葛西用水も例外ではなく様々な外来植物が見られた。なかでも目立ったのは画像のメリケンガヤツリ(Cyperus eragrostis Lam.)。葛西用水の岸部、数100mに渡って画像のような光景が見られた。川岸に同一種が数100m並ぶ光景はある意味壮観で並木道のような印象だが、これでは他の植物が割り込む隙もない。まさに生態系被害防止外来種注8)の面目躍如である。

 このメリケンガヤツリも最近色々な場所で見るが、ここまで株数が多い状態ははじめて見た。何かの条件、それがどういうものかは不明だがピタリと嵌ると外来種はここまで爆発するという好例だろう。ちょっと前に静岡県三島市の清流で遠慮がちに生えているこの植物を見て、以前に見た落合川(東京都東久留米市)の状況と同じであったことから清流が好きな外来植物かと思っていたがとんでもない、やはり強力な外来種であった。
 ざっと見て数千株、それぞれに数十の花穂が付き、その花穂に数百の種子、秋には天文学的な数の種子が散布されるはず。水中に進出しないのがキタミソウやコシガヤホシクサにとっては幸いか。


(P)葛西用水の岸辺に並ぶメリケンガヤツリ iPhone6S


■特定外来生物登場

 メリケンガヤツリ以外に目立った外来植物はオオフサモ、いわゆる「パロットフェザー」である。これは言うまでもなく特定外来生物であり、手出し無用の危険物だ。厳密に言うとうっかり持ち帰っただけで凶悪犯罪並みの刑事罰注9)が下される可能性がある。
 時期的にはまだ芽吹き直後、脅威は感じられないが葛西用水本流の水中にも昨年の群落と思われる根茎が沈んでおり、そこからも無数の芽吹きが見られた。時期が進めばそこも大きな群落になるだろう。幸いなことにキタミソウの自生地であるワンド付近には見られなかったが上流にはそこかしこに存在しており、水流に乗って入り込む危険はある。
 オオフサモが入り込んだ場合にキタミソウの存続にどのような影響が出るのか、これまでにそんな事例を聞いたことがないので何とも言えないが、無事では済まないような気がする。だからこその「危険物」だという見方もあるはず。

 しかし私の経験上の話で申し訳ないが、危険性という観点で言えば特定外来生物だろうが生態系被害防止外来種だろうが足元にも及ばない植物があった。


(P)特定外来生物オオフサモ iPhone6S


移入植物
■アサザ咲く水辺

 葛西用水には一部にアサザがあった。これは個人的な考え方であるし間違っているかも知れないが、アサザやヒシといった浮葉植物は、ある時点から水質悪化の危険因子になるような気がするのだ。
 霞ヶ浦に植栽されるアサザに付いてはLimnology 水から環境を考えるというWebサイトで検証しているが、反論記事(「アサザ基金 反論」で検索すると複数ヒットするはず)も読むと、どうも東大の内部抗争のような気もしてどちらの立場も積極的に支持するつもりにはなれない。

 素人ながら「水質悪化の危険因子になるような気がする」のは自然科学、フィールドワークの基本である「現場」を見ているからである。近隣の龍ヶ崎市には小貝川の流路変更注10)によって出来た河跡湖がいくつかあるが、そのなかにアサザが繁茂している場所があり、年々群落が大きくなってついにはほぼ湖面全域を覆うまでになっている。以前はまだ透明度もあり現在の小貝川本流よりも水質の良さを感じられたが、アサザの群落規模の拡大とともに、年々水質が悪くなったような気がするのだ。


(P)葛西用水のアサザ群落 iPhone6S


 「気がする」と書いているのは自分で水質検査をしたわけでもなく、数値的なエビデンスもないからだが、上記河跡湖での目視での状況や水の匂いに加え、水質が悪化した水域で多く見られる傾向がある、とされるオオマリコケムシ注11)が目に付くようになったこともある。因果関係はよく理解できていないが、水面にフタをされ光が水中に届かないと水質は確実に悪化する。
 流れのある河川と個人の庭の睡蓮鉢ではまったく状況は異なるとは思うが、自宅で育てていたアサザとヒルムシロの鉢は他の植物がまったく育たなくなり、メダカも繁殖せずに絶えてしまった。メダカは水質よりも日光が浴びられずビタミン合成が出来なくなったため、と思うが、どちらにしても水質も目視上は悪化していた。

 このままアサザが群落規模を拡大し続けるとどうなるのだろうか。もちろん水面を覆い尽くす(一定の距離にしても)には10年単位の時間はかかると思うが、水流を妨げる、枯死体の堆積によって河底に過剰な有機物が供給される、それによって一部が嫌気化するなど一連の水質悪化プロセスが起きることが予想される。その時に自生するキタミソウやコシガヤホシクサはどうなるか。他所事ながら少し懸念された。
 しかしこのアサザの由来はどこなのだろうか。上流にも下流にもアサザ群落は存在せず、藤棚の木道があるエリアに中程度の群落が2つ、小群落がいくつかあったが確証はないまでも植栽された可能性が強いように思う。藤を植え、ハナショウブを植え、コシガヤホシクサを植え、ついでにアサザを植栽するぐらいはするだろう。国内移入であっても将来的な環境への影響を考慮しないと禍根を残すことになるはず。短期的、短絡的なな自然再生は長期的な自然破壊に繋がることは間違いないだろう。

脚注

(*1) 地元の自生地も葛西用水も、いわゆる「用水」であるので4月下旬までには水田に湛水するための水が入ってキタミソウのシーズンが終了する。そんな事は百も承知であったが、せっかく来たついでに見ておこう、という話である。実はこの時が初の越谷であったが、あまりの大都会に驚いてしまった。この駅前の賑わいから考えれば水生植物のある地域までにはバスに乗り、バス停から最低1kmは歩き、やっとお目にかかれるというパターンばかりだった。ところが越谷は駅から徒歩10分という一等地にこの環境がある。これは凄い、とそればかり感動した。

(*2) Gregory、アメリカのバッグブランド。同じような立ち位置のTHE NORTH FACEやPatagoniaと異なりバッグしか造っていない。色々なモデルを所有しているが、仕事用にはA4ファイルサイズのショルダーバッグを使っている。これはHDナイロンという強度の高い素材で作られているが、強度のわりに柔らかい。つまり外部からの衝撃を素材で包み込むように中に向かって逃がす、つまり荷物の安否は知ったことではない、という潔い仕様である。このメーカーのバッグはこういう仕様が多く、中の荷物によって形は安定するようなものが多い。

(*3) 昔のデジカメ(今でも時と場合により)で多く見られた撮像上の不具合。他にも黒つぶれ、ゴースト、フレアなどがある。今回スマホで全てを撮影するという、自分の価値観を全否定するような真似をしたが、逆光耐性がないことは予想の範囲だったのでまだしも、本稿3番目の葛西用水ワンドを写した写真には強烈なジャギーが出ている。アシがまるで別の植物のようだ。写真なんてスマホで十分、はごく限られた用途でのみ言えることだと思う。今回の結果(写真)は残念だったような安心したような。

(*4) iPhone6Sの発売当初のレビューでは「初の1200万画素」「この画質はスゴすぎ。iPhone6Sのカメラは段違いだった」など肯定的な表現が並んでいたが、それまでが酷過ぎたために相対的な評価だったのだ、と思う。アップル自身が主張してきたように、センサーサイズが同じなら画素数が少ない方が1画素あたりの光量が増え、低ノイズ化できる、従ってiPhoneのカメラは800万画素、という前提を自ら崩した瞬間でもあった。この主張はある意味正しく、フルサイズで画素数抑え目のEOS6Dは高感度でもノイズが目立たない。同じ1200万画素ならセンサーの大きなコンデジを使った方が「綺麗な写真」が撮れることは間違いない。

(*5) 砂沼(さぬま)、茨城県下妻市の農業用ため池。周囲6km、面積55ha、満水時水深約3mと農業用ため池としては大きな部類に入る。農業用(灌漑用)なので春から夏までは水深が1m以上あり、開花結実期には気中に花穂を出せるという、コシガヤホシクサにとっては理想的な環境であったが、1994年に水の運用が変化したため 絶滅してしまった。砂沼も「都市部」ではないが周囲が公園、傍らには大規模なプール施設の砂沼サンビーチがあり、とても希少な植物が自生する雰囲気ではない。

(*6) electrical conductivity 導電率、電気伝導率、電気伝導度とも表現される。物質中の電気伝導のしやすさを表す指標。水質の場合、水にもろもろ不純物が混じっていると電気が通りやすくなり、目に見えないモノも含めてこの指標により「濁り」が分かる、というもの。導電率が上がると光の透過率が落ち、水中にあって光合成を行なう水草には適した環境ではない、というざっくりした判断ができる、というわけ。アクアリウムの場合、そこそこ高価な導電率計を売っているが、経験上これで測定し「う〜ん」と唸っている間に換水した方が良い。尚、水道水は200μS(マイクロ・ジーメンス)前後、1週間換水しない水槽で300μSを超える。つまり、どうせ一週間に一回しか換水しない水槽には導電率計は無用の長物である、とも言える。

(*7) ホシクサの花は集合して頭花となるが、その頭花自体が直径数mmの地味なモノである。虫媒花は受粉のために虫を誘引する仕掛けとして、大きく目立つ花弁や萼片を持つ、強い香りを出す、昆虫が好きな蜜を出すなどの手法でアピールするのが一般的であるが、コシガヤホシクサはこうした特徴もなく小さな花であるため風媒花と考えられていた。ところが筑波実験植物で悪戦苦闘して維持する過程で偶然虫媒花であることが分かり、維持が軌道に乗った、とある。(「異端の植物 水草を科学する」田中法生 ベレ出版)この話は植物を知っている人ほど陥りやすい先入観による失敗、という寓話のような話で、物事決めつけてはいかんな、という教訓だ。

(*8) 旧「要注意外来生物」。何を注意すればよいのか分からず、罰則もないために存在意義が薄れた、と思ったのか名称変更が行われた。生態系被害防止外来種となっても実質は何も変わっておらず何の効果も出ていない。何か無駄なことかな、と思ったらとりあえず名前を変えてみる式の予算の無駄遣いである。よく考えてみると、生態系に対する被害を防止するために外来種を指定した、それって特定外来生物とどう違うの?って話になる。罰則の有無が相違点かも知れないが、生態系の被害は人間に対する罰則の有無と何ら関係がない。となれば特定外来生物は罰則付生態系被害防止外来種、要注意外来生物は罰則無生態系被害防止外来種か。何だか禅問答のようだ。

(*9) 個人の場合、最高で300万円以下の罰金、3年以下の懲役である。ただし一般の刑法と異なるのは実質的な取締りができないことで、警察官の目前でナガエツルノゲイトウを刈り取っていてもスルーされる可能性が高い。これは警察官のレベルが低い、という話ではなく世間一般外来植物に対する認識が低い、という話である。動物では検挙された例もあるようだが、おそらくは氷山の一角、運が悪かったのだろう。こういう法制と罰則のアンバランスは端的に言えば悪法である。別の記事で散々に叩いたのでこの辺で勘弁しておいてやろう。

(*10) 徳川家康の利根川東遷事業以来400年、様々な河川改修が行なわれているが小貝川湾曲部を龍ヶ崎市高須付近でショートカットした工事は1922年に行われている。その結果残ったのが龍ヶ崎市高須から取手市大留にかけて現存する河跡湖である。アサザの繁茂が見られるのは中央部近く、南にはヒシで湖面が埋め尽くされる一角がある。河跡湖は何も利用されていないが、埋め立てる費用がもったいないのか、成立以来100年近く放置されている。場所は小貝川の洪水防衛3つ目の堰、豊田堰のすぐ上流である。

(*11) 一匹は体長1.5mm程度だが寒天状の物質を分泌し、それが集合体(群体)となることで大きな塊となる。子供の頃も釣りなどで水辺を駆け回っていたが、その頃はこんなものは無かったが?と思ったがそれもそのはず、こいつも北米原産の帰化生物であり、日本では1972年に山梨県の河口湖ではじめて確認されたものである。見かけはかなりグロいが特に悪さをするものではないようだ。概ねバスケットボールの倍程度の群体が見られるが、直径2.8mのものも見られたという。本文にある通り、水質が悪化した水域で見られる傾向がある。しかしあくまで「傾向」であって水質の指標生物ではない。


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