日本の水生植物 水生植物図譜
ユリ科 Liliaceae
(APGV:ユリ科 Liliaceae(*))
(*)アマドコロ属はキジカクシ科アマドコロ属、ギボウシ属はキジカクシ科リュウゼツラン亜科ギボウシ属、
ネギ属はヒガンバナ科ネギ亜科、ワスレグサ属はススキノキ科キスゲ亜科として分離
絶滅危惧種表示:環境省レッドリスト2017準拠
外来生物表示:外来生物法第八次指定
植物分類:APGW分類 併記
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アマドコロ属 ギボウシ属 ネギ属 ワスレグサ属 ユリ属
アマドコロ属 Polygonatum APGW:キジカクシ科アマドコロ属
標準和名 アマドコロ 学名 Polygonatum odoratum var.pluriflorum 生活型 多年草 自生環境 湿地
環境省レッドリスト2017:記載なし

 山野や湿地、湿地周辺に生える多年草。近似種のナルコユリ(同科同属)との相違は、花の花柄に付く部位が丸いのが前者、やや細くなるのが後者で、花自体もアマドコロの方が大きく多い。(ナルコユリは分枝先に2つが多い)また、アマドコロは茎が茎が角ばっており、稜がなく円柱状なのがナルコユリという相違もある。

 アマドコロは山野の植物というイメージが強いが、この項に掲載した写真は田島ヶ原と渡良瀬遊水地のもので、湿地でも場所により大きな群落が見られる。

(P)2016年4月 埼玉県
2016年4月 埼玉県 同左

2016年4月 埼玉県

2017年5月 栃木県 渡良瀬遊水地
ギボウシ属 Hosta APGW:キジカクシ科リュウゼツラン亜科ギボウシ属
標準和名 コバギボウシ 学名 Hosta albo-marginata (Hooker) Ohwi 生活型 多年草 自生環境 湿地
環境省レッドリスト2017:記載なし

 湿地性のギボウシ。同属他種に比べ、やや葉が小型であることによる和名。和名漢字は小葉擬宝珠でまたの名をミズギボウシやサジギボウシとされることも多いが、ミズギボウシ(Hosta longissima Honda)は別種の標準和名であり、紛らわしい。
 小型の草体だが花は他のギボウシ類に負けない美しいものを持ち、このために山野草愛好家による採集圧があり、自然下では減少している。斑入りなどの変異体に驚くほどの高値が付くのもこの世界。

 本種は乾燥にもある程度強く、生育は日陰であれば完全な湿地である必要はない。このため公園花壇などにも植栽されている。

(P)2009年8月 東京都 公園植栽
2013年8月 茨城県 同左
2013年8月 茨城県 群生 同左 サギソウ、イトイヌノヒゲ、シズイなどと混生
2015年6月 茨城県 ロゼット 同左
2015年9月 東京都 果実 同左
標準和名 ミズギボウシ 学名 Hosta longissima Honda 生活型 多年草 自生環境 湿地
環境省レッドリスト2017:記載なし

 コバギボウシとともに湿地性のギボウシであり、ギボウシ特有の美しい花を咲かせる。「ミズ」を名乗るが湿った地面程度の「湿地」で自生し抽水、沈水することはない。資料によって自生は愛知県以西とされるが、関東近辺でも自生があるので疑問である。誤認の可能性もあるが、植栽か逸出による国内帰化の可能性も考えられる。

 コバギボウシに比べると葉が細長く、葉柄との境界が明瞭ではない。八重咲きや斑入葉などの品種もある。自生株はコバギボウシ同様、園芸愛好家による採集圧があり、減少している。

(P)2008年9月 茨城県
2015年6月 茨城県 ロゼット 同左
ネギ属 Allium APGW:ヒガンバナ科ネギ亜科
標準和名 ヤマラッキョウ 学名 Allium thunbergii G.Don. 生活型 多年草 自生環境 湿地
環境省レッドリスト2017:記載なし

 名前に反し山地性の植物ではなく、湿地植物である。福島県以南、湿地や湿潤な草原、場所によっては水田の畔にも出現する。和名は鱗茎がラッキョウ(Allium chinense)に似ることによる。本種も食用になるようだ。便宜的にユリ科に分類したが、旧体系の植物分類においてもネギ科として独立すべきという意見もあり、APG植物分類体系では独立の科とされている。ややこしいがAPGでもヒガンバナ科に含めるという説もある。(注の通りAPGVでヒガンバナ科ネギ亜科に落ち着いた)
 草丈は30〜60cmほどになり、基部から数枚の円柱状の葉を付ける。葉幅は狭く5mm以内、長さは20〜50cm。花茎の先端に散状花序を付け、紫色の花を多数開花させる。雄蕊が花被片より長く花の外に突き出る。(下画像参照)

 開花は遅く、関東地方では11月頃になる。育成環境はガガブタ、ヒシモドキを育成するプランターに抽水させているが、ガガブタが開花の盛期を迎える頃に蕾を付け、ガガブタは殖芽、ヒシモドキは果実になった頃ようやく開花する。暦内、野外湿地のシーズンのフィナーレを飾る花でもある。

(P)2012年9月 茨城県(自宅育成)
2012年11月 茨城県(自宅育成) 開花 同左
2014年4月 茨城県(自宅育成)

根茎(ラッキョウ)部分。味はラッキョウほどクセがなく、ユリ根に近い印象であった。(赤味噌で生食)個人的感想ながら同じネギ属の野草、ノビルの方が美味に感じられた。

2015年10月 千葉県
ワスレグサ属 Hemerocallis APGW:ススキノキ科キスゲ亜科
標準和名 ゼンテイカ 学名 Hemerocallis dumortieri Morr.var.esculenta (Koidz.) Kitamura 生活型 多年草 自生環境 湿地
環境省レッドリスト2017:記載なし

 最も有名な別名はニッコウキスゲ、他にもエゾゼンテイカ、エゾカンゾウなど多くの異名を持つユリ科の湿地性植物。ニッコウキスゲの名前通り奥日光戦場ヶ原、小田代原を代表する植物であり、7月頃盛期となり湿原を黄色で彩る。
 時折見られる誤りとして本種をユリ科ワスレナグサ属と記述したものがあるが、ワスレナグサ属はムラサキ科であり、正しくは紛らわしいがワスレグサ属、である。分類によってはこのグループをワスレグサ科として上位概念とするものもありさらに紛らわしい。個人的には見るからにユリであるのでユリ科にまったく異論はない。どちらかと言うとギボウシの方がユリからの距離を感じる。

 有名な自生地は奥日光の他にも長野県や群馬県など多数あるが、いずれも有名な観光地でありこの花の開花期は滝の水量が見応えがあったり、湖のマス類の釣りの時期であったりと混雑が激しい。そうした理由で長年自生地を見ていなかったが2009年にやっと見ることが出来た。同時期に開花するピンクのホザキシモツケや紫のノハナショウブと見事な湿地の色彩を構成していた。

(P)2009年7月 栃木県 奥日光戦場ヶ原
2015年6月 茨城県(公園植栽) 同左 草体

2015年6月 茨城県
標準和名 ノカンゾウ 学名 Hemerocallis fulva L.var.longituba (Miq.) Maxim. 生活型 多年草 自生環境 湿地
環境省レッドリスト2017:記載なし

 ユリ科には親水性の高いコバギボウシなどがあるが、本種はさほどでもなく「やや湿った草原」「湿地周辺」などを好み、湿地植物としては「広義」である。ただし同属のニッコウキスゲ(ゼンテイカ)が自生する戦場ヶ原を地形的特徴としてどうプロファイリングするか、という類の話なのでここに含めることにした。

 より陸地性の強い近似種のヤブカンゾウという種があるが、基本的にノカンゾウは花が一重、ヤブカンゾウは八重である。どちらも見応えがあって園芸植物としても人気がある。ノカンゾウは上記したような環境を好むために、限られた場所にしばしば群生する。霞ヶ浦では霞ヶ浦総合公園ビオトープの南西、ほとんど人が行かない一画に群生地がある。

(P)2007年6月 茨城県
2007年6月 茨城県 2010年7月 茨城県

2009年7月 茨城県
標準和名 ムサシノキスゲ 学名 Hemerocallis dumortieri C.Morren var. esculenta(Koidz.)Kitam.ex M.Matsuoka et M.Hotta 生活型 多年草 自生環境 湿地
環境省レッドリスト2017:記載なし

 植物体の特徴はゼンテイカ(ニッコウキスゲ)そのものであるが、東京都西部にも自生するゼンテイカの「低地型」である。種としての相違が不明なことに加え、学名も様々なシノニムがあり、種として独立して扱うべきかどうかの妥当性は不明。しかし6月〜7月に開花するゼンテイカに比し「低地型の」ムサシノキスゲは4月〜5月頃開花する。単に気温に連動して開花時期がずれている可能性もあるので決定的な種としての相違にはならないと思われる。

 草丈は50cm〜80cm、花は直径10cm前後、葉がカサスゲ(カヤツリグサ科)に似ており、異名のキスゲ(黄色いスゲ)は葉の形状に由来する。府中市(東京都)には浅間山公園という大規模な自生地がある。

(P)2015年5月 東京都
2015年5月 東京都 後方が本種の葉 同左
ユリ属 Lilium
標準和名 コオニユリ 学名 Lilium leichtlinii f. pseudotigrinum 生活型 多年草 自生環境 湿地
環境省レッドリスト2017:記載なし

 一般的には「山地の少し湿った場所に自生」する植物だが、少しではなくモロに湿った場所、すなわち湿地にも自生するユリ。画像はすべて千葉県山武市の成東・東金食虫植物群落の湿地部分に自生していたものである。
 花は茎先に総状花序を出し、オレンジ色の花を下向きに2〜10輪程度咲かせる。花被片は6枚で上部が反り返り、独特の形状となる。花弁には黒い斑点があるが、単なる模様ではなく立体的な突起状となっている。近縁で山地性のオニユリよりも葉が細く、ムカゴを生じずに新しい鱗茎が母鱗茎から離れることで増殖する。

 園芸植物としても用いられるが、ヤマユリ同様に家庭の環境では長年の維持は難しいようだ。冷涼な気候を好むとされるが、平地の湿地でも見かけるので、何か別の理由がありそうだ。

(P)2015年7月 千葉県
2015年7月 千葉県 2015年7月 葉茎の様子 千葉県

2015年7月 湿地で開花したコオニユリ 千葉県
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