日本の水生植物 水生植物図譜
トクサ科 Equisetaceae
絶滅危惧種表示:環境省レッドリスト2015準拠
外来生物表示:外来生物法第八次指定
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トクサ属
トクサ属 Equisetum
標準和名 イヌスギナ 学名 Equisetum palustre L. 生活型 多年草 自生環境 湿地
環境省レッドリスト2015:記載なし

 陸生のスギナとほぼ同じ草姿の湿地性植物。湿地や水田水中からも立ち上がる。繁茂ぶりもスギナに同じで駆除困難な水田雑草とされている。
 スギナと異なるのは栄養茎と胞子茎(ツクシ)の区別が無く、ツクシそのものを作らない。画像のようにスギナの頭にツクシが出来る。水中でツクシが出来ればなかなか面白いと思ってしまうのは水辺園芸愛好家の癖。さらに水中でツクシが育成できれば、と思ってしまうのはレイアウト水槽マニアの病気。しかし残念ながら水中で生育することはない。

 雑草としての害はともかく、もう一点スギナと異なるのはアルカロイド系の有毒成分を含むため、家畜の誤食による中毒の被害がある点。ご存知のようにスギナの胞子茎、土筆(ツクシ)は風物詩として愛され、地方によっては食用ともされるが、本種は姿形が似ているだけで毒がある点に注意が必要。

(P)2008年6月 茨城県

2014年5月 茨城県

同左
標準和名 イヌドクサ 学名 Equisetum ramosissimum Desf. 生活型 多年草 自生環境 湿地
環境省レッドリスト2015:記載なし

 トクサと同様の自生環境にあるが、トクサがあまり分岐しないのに対し分枝する場合が多く、また茎がより細い(概ね3-5mm径)ので判別が容易である。葉鞘は緑色で、黒くなるヒメドクサとも判別できる。胞子嚢穂(下画像)は茎の先端に付き、スギナのような輪生枝も茎の下部で見られる。別名は自生地形を冠したカワラドクサ。

 トクサが産業用に用いられてきた(トクサの解説参照)のに対し、イヌドクサは似た草姿でありながら使えないことで「イヌ」が付与されている。近辺の湿地や水田周辺でもよく見られるが、園芸用としてはトクサと区別せずに用いられて来た歴史があり、元々の自生なのか園芸逸出なのかは分からない。筑波実験植物園の解説によればもともとは暖地系の植物のようだ。

(P)2015年6月 茨城県

2015年6月 茨城県

同左
標準和名 オオトクサ 学名 Equisetum prealtum 生活型 多年草 自生環境 湿地
外来生物:外来生物法指定なし

 北米原産の大型のトクサ。草丈は1mを超える。園芸用、花材・生花用として流通しているが、もともと温帯の植物であり日本でも通年育成可能である。本来、湿地の植物で水位の上昇にも耐えられるが、逆に乾燥にも耐性があって庭植えや畑などで育てられることもある強い植物である。

 まだ自然下での逸出帰化は確認していないが、現在の公園植栽や流通の状況を鑑みると可能性は十分にあるように思われる。またミズドクサやトクサと遺伝的に極めて近い種類であり、遺伝的攪乱も懸念されるところだ。

(P)2015年6月 茨城県(公園植栽)

2015年6月 茨城県(公園植栽)
標準和名 チシマヒメドクサ 学名 Equisetum variegatum Schleich. ex Weber et Mohr 生活型 多年草 自生環境 湿地
環境省レッドリスト2015:絶滅危惧TA類(CR)

 湿地に自生する小型のトクサ。草丈10〜30cm程度。本種は「チシマ」(千島)の名を冠しており北方種のイメージが強いが、関東近辺にもわりと広範に自生する。ミズドクサなど近似種との同定は非常に困難である。鞘歯片など微小な部位での同定(本種は6〜8)が必要。画像の株に関しては専門機関に同定を委ねた。
 園芸流通している「ヒメトクサ」は多くの場合本種であるが、外国産のものも混じり、その場合茎の太さ(国産は1mm程度、外国産は3mm程度)で区別が可能。

 トクサは水分蒸散を抑える構造があり、湿地植物とは言えまったくの乾地でも潅水を行えば長期間育成が可能。トクサや本種(ヒメトクサ含め)が花壇の縁などに植栽されるのはそのような構造に拠るものである。

(P)2008年9月 茨城県
標準和名 トクサ 学名 Equisetum hyemale Linn. 生活型 多年草 自生環境 湿地
環境省レッドリスト2015:記載なし

 スギナの近縁であるが草体は非常に固く、印象は全く異なる。手触りは硬質、表面はザラついている。本来湿地の植物であるが耐乾燥性、耐陰性が強力で和風庭園にも良く用いられる。画像は水田脇畦道に群落を形成していたものであるが、このような場所が本来の自生環境であると思われる。

 トクサはすなわち砥草であり、珪酸を多量に含み木材や金属の研磨剤として使われてきた有用植物である。ミズドクサという近縁種もあるが、こちらは湿地依存度が高く、自生環境を見ても水中から生えている。

(P)2005年5月 茨城県

2014年7月 茨城県 古利根沼畔

同左
標準和名 ミズドクサ 学名 Equisetum fluviatileL. 生活型 多年草 自生環境 湿地
環境省レッドリスト2015:記載なし

 本種はその名の通りトクサよりもさらに湿地性が高く、トクサが通常湿地陸上に自生するのに対し水中や抽水状態で自生する。ヒメドクサ(Equisetum scirpoides Michx.)にも似るが、本種は茎の内部が中空なのに対しヒメドクサは茎に体腔がない。
 都道府県レベルではRDBにリストアップされることもあるが、霞ヶ浦近辺の水辺ではやや普通に見られる。画像のように場所によっては盛大に繁茂しており、スギナやトクサ同様繁殖力は強い。常緑多年草。

 イヌスギナと同じ環境に自生し、しばしば混生するがミズドクサやトクサは側枝が無いか、微小なことで区別できる。さらに恒常的に水位がある場所に自生していればほぼミズドクサである。

(P)2006年9月 茨城県

2018年6月 栃木県


2018年6月 栃木県
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