日本の水生植物 水生植物図譜
サトイモ科 Araceae
(APGV:サトイモ科 Araceae
絶滅危惧種表示:環境省レッドリスト2015準拠
外来生物表示:外来生物法第八次指定
植物分類:APGV分類 併記
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オランダカイウ属 ザゼンソウ属 ショウブ属 テンナンショウ属 ヒメカイウ属 ボタンウキクサ属 ミズバショウ属
オランダカイウ属 Zantedeschia (APGV:サトイモ亜科 Aroideae オランダカイウ属 Zantedeschia
標準和名 オランダカイウ 学名 Zantedeschia aethiopica Spreng. 生活型 多年草 自生環境 湿地
外来生物:外来生物法指定なし

 オランダを冠するが南アフリカ原産の帰化植物、と言うより園芸、生花で用いられる事の多い湿地性の植物である。主要な品種とされる「エチオピカ種」は本来湿地性であるが庭植えにも耐える点はミソハギ、ワスレナグサ等の湿地系園芸植物と同様。
 草姿、花(仏炎苞)ともクリプトコリネを巨大化させたような姿で、同じサトイモ科の植物である。画像は原種と思われる白花のものであるが、園芸用に改良が進みピンク、黄など様々な花色の他に葉に美しい白の斑が入るものもある。陸生の種から改良されたものもあり、一見しただけでは原種の特定は不可能。
 抽水でも育つが庭でも鉢でも育つので特に環境に配慮する必要もない。分球により旺盛な繁殖力を示す。本来常緑であるが日本では冬に地上部が枯れ、春に新芽が出る。

(P)2008年5月 茨城県(自宅育成)

2015年7月 茨城県(自宅育成)

同左


2016年5月 茨城県(自宅育成)
ザゼンソウ属 Symplocarpus (APGV:サトイモ亜科 Aroideae ザゼンソウ属 Symplocarpus
標準和名 ザゼンソウ 学名 Symplocarpus foetidus (L.) Salisb. ex W.P.C. Barton 生活型 多年草 自生環境 湿地
環境省レッドリスト2015:記載なし

 山岳地帯の湿地に自生するサトイモ科植物。仏炎苞を座禅姿に見立てた和名である。同系統の別名として、達磨大師が座禅する姿に見立てたダルマソウという名もある。開花時期は1月下旬〜3月中旬と早く、自生地には積雪がある時期である。開花スペースを確保するために植物体が発熱し、周囲の雪を溶かすという面白い生態を持っている。

 発熱時(開花時)には独特の悪臭がするが、この匂いによって昆虫を集め受粉するシステムを持っている。昆虫類が少ないこの時期に受粉するためには合理的なシステムだ。開花後根生葉が大型化し40cm長ほどになる。

(P)2017年3月 茨城県

2010年7月 東京都 花後に大型化した草体

2017年3月 茨城県 仏炎苞

2017年3月 茨城県
ショウブ属 Acorus (APGV:ショウブ科 Acoraceae
標準和名 ショウブ 学名 Acorus calamusvar.angustatus 生活型 多年草 自生環境 湿地
環境省レッドリスト2015:記載なし

 少なくても3割の方は画像の花を見て違和感を覚えられたことと思う。非常に多くの方がアヤメ属と混同されている植物であり、理由はハナショウブという全く別科の植物が存在することによる。ややこしい事に本種はクロンキスト体系ではショウブ科とされている。ハナショウブはアヤメ科である。何科であろうと、古来から菖蒲湯に用いられてきたのは本種であり、スーパーで販売しているキャッチコピー「端午の節句用ハナショウブ」は明らかな誤りである。
 草姿から湿地に陸生すると思われがちであるが、一般には河川や湖沼の岸近くに抽水する。まったく水の流れのない湿地では見たことがない。

 ショウブ属は新エングラー体系ではサトイモ科、クロンキスト体系ではショウブ科に分類されていたが、遺伝子の解析によりサトイモ科からはかなり距離がある分類群であることが確認され、APGではショウブ科(Acoraceae)として独立した。

(P)2005年5月 茨城県

2015年6月 東京都

同左

2015年6月 東京都
標準和名 セキショウ 学名 Acorus gramineus Sol. ex Aiton 生活型 多年草 自生環境 湿地
環境省レッドリスト2015:記載なし

 同じサトイモ科ショウブ属のショウブに似るが、草体はやや小柄で花穂が細長い。ショウブのような際立った芳香はない。水辺に自生する常緑の多年草。沈水植物のセキショウモ(トチカガミ科)はテープ状の葉身が本種に似ることによる。事実水中からも生える本種と誤認しやすい。本来湿地性の植物であるが、対乾性、対陰性が強く園芸用としても用いられる点はミソハギやイヌゴマに性質が近い。

 上記セキショウモはトチカガミ科、水田で見られるコウガイゼキショウはイグサ科、小さなピンクの花を付ける雑草ニワゼキショウはアヤメ科の、まったく異なる植物。地下茎は漢方で石菖根と呼び乾燥させて薬にする。物忘れに効くという「頭の良くなる薬」である。

(P)2006年11月 茨城県

2015年6月 茨城県

同左
テンナンショウ属 Arisaema (APGV:サトイモ亜科 Aroideae テンナンショウ属 Arisaema
標準和名 マイヅルテンナンショウ 学名 Arisaema heterophyllum Blume. 生活型 多年草 自生環境 湿地
環境省レッドリスト2015:絶滅危惧II類(VU)

 山地性、陸地性の多いテンナンショウ属には珍しく湿地性である。広げた葉を翼に、花序を首に見立てた「舞鶴」という美しい和名を持っているが、言葉通り気品にあふれた草姿だ。利根川水系では小貝川流域や渡良瀬遊水地に自生する。
 通常テンナンショウ属は雌雄異株であるが、本種は雄性個体と両性個体しかない。自生地では河畔林やアシ帯にあるが、下草やアシの伸びる前、5月頃に草丈60cm以上に伸び開花する。葉は1枚で鳥足状の小葉を17から21枚付ける。小葉の形状は狭倒卵形〜線形で全縁。仏炎苞は緑色で舷部の先端が尾状に伸びる。付属体は長さ20〜30cmと長く、上を向いて伸びる。

 本種の自生環境は低地の河畔林や山地の池周辺などとされているが、こうした環境は開発や護岸工事などのため悪化や喪失が進み、また園芸植物として盗掘などもあり数が減少している。本州には残された自生地が数か所、という説もあり危急度の高い植物となっている。

(P)2011年5月 茨城県 More featureマイヅルテンナンショウ

2011年5月 茨城県

同左

2016年5月 栃木県(渡良瀬遊水地)

2011年5月 茨城県 動画:河畔林に自生するマイヅルテンナンショウ
ヒメカイウ属 Calla (APGV:サトイモ亜科 Aroideae ヒメカイウ属 Calla
標準和名 ヒメカイウ 学名 Calla palustris L. 生活型 多年草 自生環境 湿地
環境省レッドリスト2015:準絶滅危惧(NT)

 オランダカイウを小型にしたような、コナギにも似ている植物。両種と異なるのは自生地が高地の湿原であることで、奥日光や軽井沢でミズバショウと混生している姿を見ることができる。北方系残存植物と言われているが気候はキャップ条件ではなく平地でも育成が可能。画像は東京都東大和市の植物園で育成している株である。元々の自生種であるが、カイウ(海芋)は園芸品種のオランダカイウを指す。

 画像は残念ながら開花後である(6月中旬ぐらいから咲き始め、7月上旬ぐらいまで)が、花はサトイモ科独特の仏炎苞であり観賞価値に優れる。色は白。オランダカイウ属、テンナンショウ属同様に秋にはびっしりと実を付ける。球根は美味そうだがサトイモ科植物はほとんど蓚酸を含む有毒植物であり、手を出さない方が無難だろう。ちなみにサトイモの皮むきの際の痒み、アク抜きの必要性もこの蓚酸によるもの。

(P)2010年7月 東京都(東京都立薬用植物園)
ボタンウキクサ属 Pistia (APGV:サトイモ亜科 Aroideae ボタンウキクサ属 Pistia
標準和名 ボタンウキクサ 学名 Pistia stratiotes L. 生活型 多年草 自生環境 湖沼
外来生物:特定外来生物

 別名ウォーターレタスとも呼ばれる南アフリカ原産の大型の浮遊植物。日本の冬を越えることはないと思われていたが、草体の一部が残り翌年復活し無性生殖により次々と株が分かれ水面を覆いつくしてしまう姿が霞ヶ浦近辺でも見られる。ホテイアオイと似た温帯での生活史である。
 本種は各地での帰化、被害実態により特定外来生物に指定されており採集、運搬、飼養は禁じられているので注意願いたい。

 逸出源はある意味明らか過ぎるほど明らかで、外来生物法施行以前はホームセンターでも販売されていた「水辺の植物」である。購入者があまりの増殖ぶりに手を焼いて放棄した姿が目に浮かぶ。すべて除去したと思っても欠片が残れば短時間で元の姿に戻る悪夢のような植物である。

(P)2008年9月 茨城県 霞ヶ浦沿岸部
ミズバショウ属 Lysichiton (APGV:ミズバショウ亜科 Orontioideae ミズバショウ属 Lysichiton
標準和名 ミズバショウ 学名 Lysichiton camtschatcense (L.) Schott 生活型 多年草 自生環境 湿地
環境省レッドリスト2015:記載なし

 高原の湿地植物としてあまりにも有名な植物。奥日光や尾瀬をはじめ有名な高地の湿原では例外なく自生し、時期を選べば花(仏炎苞)を見ることが出来る。和名は葉がバショウ(バショウ科)に似ることによる。

 地下に太い根茎を持ち、葉は束生する。葉は60cm長(成熟時)、花序は根生し10〜30cm長の花柄を持ち、葉の展開に先立って初夏に開花する。花とされる白い仏炎苞は花ではなく「苞」で、花は仏炎苞内部中心の肉穂花序である。

(P)2009年7月 東京都(東京都立薬用植物園)

2017年3月 茨城県

同左

2017年3月 茨城県
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