日本の水生植物 水生植物図譜
ミズアオイ科 Pontederiaceae
(APGV:ミズアオイ科 Pontederiaceae
絶滅危惧種表示:環境省レッドリスト2015準拠
外来生物表示:外来生物法第八次指定
植物分類:APGV分類 併記
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ホテイアオイ属 ポンテデリア属 ミズアオイ属
ホテイアオイ属 Eichhornia
標準和名 フイリホテイアオイ 学名 Eichhornia crassipes Solms-Laub. 生活型 多年草 自生環境 湖沼
外来生物:外来生物法上生態系被害防止外来種

 ホテイアオイの改良品種と考えられる園芸植物。和名を便宜上「フイリホテイアオイ」としたが、植物種、学名ともホテイアオイそのものであると思われる。また外来生物法上の扱いも「フイリ、斑入り」の指定はないが、ホテイアオイと同様とした。

 ホテイアオイは生態系被害防止外来種の指定が成されて久しいが、相変わらず園芸店やホームセンターで盛んに販売されている。また逸出もよく見かける。大雨の後、東京都葛飾区の中川でゆっくり流下していく複数の株が見られるので、流域に逸出対策をしていない育成環境か、定着した連続水域があるのだろう。

(P)2018年7月 茨城県 More invaderホテイアオイ
標準和名 ホテイアオイ 学名 Eichhornia crassipes Solms-Laub. 生活型 多年草 自生環境 湖沼
外来生物:外来生物法上生態系被害防止外来種

 南米原産の帰化植物であり、帰化ルートは園芸逸出である。庭池や水鉢に浮かべておけばミズアオイ科らしい美しい花を咲かせることで多くの人々に用いられ、その繁殖ぶりに手を焼いて放棄されたものが各地に広がった。
 南米熱帯、亜熱帯原産ということで越冬できないと思われがちであるが、成長を止め矮小化することで立派に越冬し、翌年さらに大きな群落となる。
 各地で大きな問題となっている一方、手賀沼では水質浄化目的で使用されており水質悪化という毒を帰化植物という毒で抑えるという図式となっている。その繁殖ぶりを思えば野外でこのような使い方をするには危険が大きな植物であると思う。

 この植物の恐ろしさは繁茂ぶり以上に他種植物に作用するアレロパシーを出すことで、生物多様性の観点からも育成すべき植物ではないと思う。

(P)2003年6月 千葉県 More invaderホテイアオイ
2010年9月 茨城県 同左
2014年7月 千葉県 開花 同左 休耕田での群生、人為的なものか?
2014年7月 千葉県 群生 2014年7月 茨城県 湖沼のものはやや大型化するようだ
ポンテデリア属 Pontederia
標準和名 ナガバミズアオイ 学名 Pontederia cordata  生活型 多年草 自生環境 湿地
外来生物:外来生物法指定なし

 北米〜南米原産の外来種であるが、花が美しく群生するためか、近年マルナガバミズアオイ、ホソナガバミズアオイと共に盛んに水辺公園に植栽が進められている。葉形がマルナガバより細長く、ホソナガバより幅がある。これ以外は草体の特徴は3種とも同一である。

 草丈は150cmになる大型種で、やや寒さに弱く関東近辺が屋外越冬の北限になっているようだ。群生し水辺に茂みを形成、魚類の安全な産卵場に見立てられ、英名をPickerel(カワカマス) Weedという。ホテイアオイのように浮遊はせず、根で接地するが茎や葉はスポンジ状で空気が溜まり浮力を確保する構造になっている。

(P)2015年6月 東京都 公園植栽
2015年6月 東京都 公園植栽 同左

2015年6月 東京都 公園植栽
標準和名 ホソナガバミズアオイ 学名 Pontederia cordata var.lancifolia. 生活型 多年草 自生環境 湿地
外来生物:外来生物法指定なし

 ナガバミズアオイ、マルナガバミズアオイに極めて近縁の北米原産のミズアオイ。他種に比べて細長い葉を持つ。両種同様に公園植栽が成されている。日本への渡来時期は不明。
 抽水し、草丈は1m近くまで育つ大型種。葉は根出葉で長い葉柄を持ち林立させ、先端にヘラ状の葉を付ける。花は長い穂状花序の下から上に順に咲く。花期は早く6月頃から開花する。

 近似種同様に群生し、花が一斉に開花する様は美しいが、確実に在来種を圧迫するので逸出に対する注意が必要だ。特に水辺環境での生態的地位はコウホネやハンゲショウと同じように感じられる。

(P)2015年6月 東京都 公園植栽
2015年6月 東京都 公園植栽 同左
標準和名 マルナガバミズアオイ 学名 Pontederia cordata var. cordata 生活型 多年草 自生環境 湿地
外来生物:外来生物法指定なし

 北アメリカ原産の湿地植物。最近公園に植栽されたものを見るようになった。 ナガバミズアオイ(Pontederia cordata )の変種とされ、葉が丸い。花が美しく、ビオトープ関連の植物通販では「ポンテデリア・コルダータ」として両種区別されずに販売されている。

 花はミズオアイ科他種と同様青系で穂状花序に多数付ける。葉は長心形で光沢があり鈍頭、葉柄が長い。草丈は80〜90cm長でミズオアイより大きい。抽水〜湿生し群落を形成する。花期はわが国では6〜9月。

(P)2013年8月 茨城県 公園植栽
2013年8月 茨城県 公園植栽 名の通り葉が丸い 同左 株は大きく充実する
ミズアオイ属 Monochoria
標準和名 コナギ 学名 Monochoria vaginalis var. plantaginea 生活型 一年草 自生環境 水田
環境省レッドリスト2015:記載なし

 水田で普通に見られる強害草の一つ。定点観察してみると短期間に生長し、養分収奪力が大きな事が伺える。稲の間にも入り込む。逆に言えば決まった時期に施肥される水田のサイクルに特化しているのではないか。水田以外の湿地で見ることは稀である。
 発生初期はオモダカやウリカワ、クログワイなど他種の発生時期幼株との区別が困難。成長に従い独特の艶のあるヘラ型の葉を多数展開する。ミズアオイ科の草らしく、紫がかった青い花が美しい。屋外水鉢で育成すると晩夏に涼しげな花を見せてくれる。

 本種は食用にもなり、稲と雑草と白鳥と人間との「コナギのクッキング」に詳しい。

(P)2002年10月 茨城県 More weedコナギ
2009年9月 千葉県 耕作田 2011年8月 茨城県 休耕田
2014年7月 千葉県 耕作田 特徴的な心型の葉 2014年6月 茨城県 休耕田

2014年10月 茨城県
標準和名 ミズアオイ 学名 Monochoria korsakowii Regel et Maack 生活型 一年草 自生環境 湿地
環境省レッドリスト2015:準絶滅危惧(NT)

 水田の強害草として恐れられている花も葉も似たコナギとは裏腹に全国的に希少となってしまった、美しい青花を開花させる植物。生育状態にもよるが概してコナギより草体も花も大きい。またコナギと異なり花穂を伸ばして葉の上方で開花させるので観賞価値も高い。
 蔓延るコナギに対し本種が希少になってしまったのは、農薬に耐性が無いのか自生条件が狭い範囲なのか興味深い。またホテイアオイも湿地や湖沼で猛威を振るう場合が多々あり、同じミズアオイ科でも本種だけが脆弱な印象を受ける。

 霞ヶ浦近辺では放棄水田や自然湿地に僅かに見られるが耕作水田で見かけることはない。

(P)2010年9月 茨城県
2010年9月 茨城県 湿地 同左
2015年6月 茨城県 発生期はコナギより細い 同左
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