日本の水生植物 | 水生植物図譜 |
ミクリ科 Sparganium (APGV:ガマ科 Typhaceae ミクリ属 Sparganium) |
■絶滅危惧種表示:環境省レッドリスト2015準拠 ■外来生物表示:外来生物法第八次指定 ■植物分類:APGV分類 併記 |
genus search ミクリ属 |
ミクリ属 Sparganium |
標準和名 | カドハリミクリ | 学名 | Sparganium erectum L.subsp. stoloniferum (Hamilt. ex Graebn.) Hara var. coreanum Hara | 生活型 | 多年草 | 自生環境 | 湿地 |
環境省レッドリスト2015:記載なし 植物体の特徴はミクリと同様であるが、果実が大きい(下右画像参照)。また種子に角(かど)があり、これが和名の由来となっている。地上部が酷似するオオミクリ(Sparganium erectum L. var. macrocarpum (Makino) H.Hara.)は地下茎が肥大し芋状になることで区別される。この株は地下茎がミクリ同様の形状であり、また種子に角が多いことでカドハリミクリと判断した。 他種ミクリ属の植物の突出した特徴に比べればカドハリミクリ、オオミクリとも微小な差異であって、判別しにくい。特にオオミクリとカドハリミクリの差異は種子の形状、地下茎の有無のみであり、情報ソースによってはカドハリミクリ(オオミクリ)とする場合も見られる。 (P)2015年6月 東京都 |
2015年8月 種子、左が本種、右はミクリ | 2015年6月 果実、左がミクリ、右が本種 |
2015年8月 東京都 |
標準和名 | ナガエミクリ | 学名 | Sparganium japonicum Rothert | 生活型 | 多年草 | 自生環境 | 湿地 |
環境省レッドリスト2015:準絶滅危惧(NT) 主に湿地や河川、湖沼に自生するミクリの一種。この撮影地点は有名なナガエミクリの自生地。ミクリは沈水葉でも自生し、この撮影地でも抽水状態、沈水状態両方が見られた。沈水化するとテープ状の葉を持つ他種水生植物と似て、カンガレイの沈水葉や沈水植物のセキショウモとしばしば誤認されている。 ナガエミクリは(1)花序が分枝しない(この点はヤマトミクリ、タマミクリに同じ。ミクリは分岐する)、(2)細長い紡錘型の果実を付ける(この点はヤマトミクリに同じ)という特徴を持つが、特徴が共通するヤマトミクリとの相違点は、下から3個までの雌性頭花が主軸と合着せず、柄を持つという点。ヤマトミクリは雌性頭花の柄の全部または一部が主軸と合着し直線状に見える点が異なる。(実物、ネット上の画像では「直線」よりもジグザク状のものが多い) (P)2005年7月 東京都 |
2010年7月 東京都 沈水葉 | 同左 自生する国立市矢川の情景 |
2015年6月 東京都 沈水状態から立ち上がり開花する | 同左 群生し単一種群落を形成 |
2015年6月 東京都 花茎 | 同左 沈水葉 |
2015年6月 東京都 ナガエミクリ独特の果実(雌花)の付き方 |
標準和名 | ヒメミクリ | 学名 | Sparganium subglobosum Morong. | 生活型 | 多年草 | 自生環境 | 湿地 |
環境省レッドリスト2015:準絶滅危惧(NT) ヤマトミクリに似るが、雌性頭花に花柄は無く腋生である。花序は分枝する場合としない場合がある。草丈は30〜60cmで抽水または湿性し、水深のある環境では沈水する。葉は裏面に稜があり、強度があって立ち上がる。 茨城県南部利根川流域では自生を見つけられず、画像は栃木県の自生地で撮影した。ヒメミクリが生えていた小河川は水温が低く透明度が高い湧水起源のものと思われた。同所には冷水性のバイカモも見られ、植生豊かな環境であった。 行動範囲の北関東では準絶滅危惧の同ランクの他植物よりもはるかに見つけにくく、残存が少ない印象を受ける。 (P)2011年8月 栃木県 |
2011年8月 果実、3〜4個付く | 2011年8月 沈水型となった草体 |
2011年8月 栃木県 |
標準和名 | ミクリ | 学名 | Sparganium erectum Linn. | 生活型 | 多年草 | 自生環境 | 湿地 |
環境省レッドリスト2015:準絶滅危惧(NT) 同属他種に比べればやや広範囲に自生する抽水植物。一般的な自生形態は抽水・湿地植物であるが、冠水など自生状況により沈水型となる。和名の由来は「栗のような実」で、画像のような機雷型の実を多数つける。実はこの「実」がミクリ属の同定ポイントとなっており、結実期以外は同定しにくい。また草体はスゲ属植物にも似るが、抽水葉背面中央の稜が発達し、断面が三稜形となることで判別できる。 雄性花と雌性花が枝分かれした花序に数個ずつ形成される。この花序の分岐が本種の特徴。ミクリ属では大型になる種で、草丈が1.5mを超えることもしばしばある。花期は6月〜8月。 (P)2002年7月 茨城県 More featureミクリ |
2011年6月 茨城県 花 | 同左 果実 |
2015年6月 千葉県 | 同左 |
2015年6月 茨城県 |
標準和名 | ヤマトミクリ | 学名 | Sparganium fallax Graebn. | 生活型 | 多年草 | 自生環境 | 湿地 |
環境省レッドリスト2015:準絶滅危惧(NT) ナガエミクリやヒメミクリに近似するが、花序が分岐せずに直線状(しばしばジグザク状)に雄性花と雌性花が並ぶことで判別できる。ヒメミクリは分岐することもあるが、分岐しない場合に本種と酷似する。分岐しない場合、ヤマトミクリは雌性花は腋上性が見られるが、ヒメミクリは柄がなく着生することで判別可能。どちらにしても同定に際して細かな観察が必要となる。 東日本、関東地方では自生は非常に少なく、西日本型の植物と言われるが(ヤマトは「大和」の国由来)、千葉県に県唯一とされるスポット的な自生がある。(下画像はすべて千葉県の自生地で撮影)茨城県では残念ながら植物園以外では見たことがない。 (P)2008年9月 茨城県(筑波実験植物園) |
2015年6月 千葉県 果実は分岐せず柄もない | 同左 曲がりくねる花序も特徴の一つ |
2015年6月 千葉県 | 同左 |
2015年6月 千葉県 花序に柄(腋上性)と果実が合着している様子が分かる |