日本の水生植物 水生植物図譜
カヤツリグサ科(2) Cyperaceae
(APGV:カヤツリグサ科 Cyperaceae クロアブラガヤ属 Scirpusはホタルイ属へ再編入)
絶滅危惧種表示:環境省レッドリスト2017準拠
外来生物表示:外来生物法第八次指定
植物分類:APGW分類 併記
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クロアブラガヤ属 シンジュガヤ属 スゲ属
クロアブラガヤ属 Scirpus (APGW:クロアブラガヤ属 Scirpusはホタルイ属へ再編入)
標準和名 アブラガヤ 学名 Scirpus wichurae Boecklr. form concolor Ohwi 生活型 多年草 自生環境 湿地
環境省レッドリスト2017:記載なし

 湿地や休耕田に生える大型のカヤツリグサ科植物。和名の由来は花穂が油色(褐色)となり、匂いもやや油くさいことによる。大型植物でありながら根茎は短く、地上部が叢生するために倒れこんだ株もよく見かける。
 草丈は1m〜1.5mほどになり、先端に多数の穂を付ける。穂の基部は鞘葉によって包まれる。(下画像右参照)また明瞭な葉があり、長さは30〜40cmに及ぶ。草体も穂も湿地で目立つ植物である。

 本種は変異が多く穂の形状等によって変種、亜種として扱われるものもある。また種間交雑種としてコマツサカススキとの間にコマツカサアブラガヤを生じる。北関東では意外に自生が薄く見られる湿地は限られる。

(P)2015年8月 東京都
2015年8月 東京都 同左

2015年8月 東京都
標準和名 クロアブラガヤ 学名 Scirpus sylvaticus L. var. maximowiczii Regel 生活型 多年草 自生環境 湿地
環境省レッドリスト2017:記載なし

 別名ヤマアブラガヤ、アオアブラガヤ。北海道、本州中部地方以北に自生する大型のカヤツリグサ科草本。関東地方では平野部には見られず、山地の渓流脇などに自生する。アブラガヤに似るが熟した種子が黒く、穂が全体に黒ずんで見える。
 花茎は断面が三角柱状、数個の節があり、節毎に苞が付く。花序は散房花序、花序の先から花柄が数本出て、多数枝分かれをする。小穂は楕円形〜卵形、長さは4-8mmであり時には1mを越える草体に比して小型である。果実は倒卵形。

 自生地の特徴から北方型の植物と思われるが、平野部には見られないながら画像は標高600mほどの山地であり、気候的には平野部と大差はない。長野県や東北地方では山岳部の湿原の構成種となっており、何らかの特殊な自生条件があると考えられる。

(P)2011年7月 群馬県
2011年7月 群馬県 同左
標準和名 コマツカサススキ 学名 Scirpus fuirenoides Maxim. 生活型 多年草 自生環境 湿地
環境省レッドリスト2017:記載なし

 マツカサススキに似るが、小穂が少なくまばらな印象である。草体は1m近くなるので草体が「コ」マツカサススキというわけではない。マツカサススキよりやや稀である。
 文献によれば低地の湿地、やや富栄養の鉱物質土壌が本種の自生条件とあるが、そうした条件の湿地どころか湿地そのものが減少しているのが目にする機会が減っている原因だろう。この画像も湿地が復元された公園でのものである。里山や休耕田では見かけたことがない。

 マツカサススキ同様、根生葉は硬質で幅は5mm前後、茎断面は三角形である。小穂の形状は共通し、独特の「松カサ」状。(背後の葉は別な植物のもの。すでに草体は枯れている)

(P)2009年9月 東京都
2013年8月 茨城県 同左
標準和名 ツクシアブラガヤ 学名 Scirpus rosthornii Diels var. kiushuensis 生活型 多年草 自生環境 湿地
環境省レッドリスト2017:絶滅危惧TB類(EN)

 九州南部に自生するアブラガヤの仲間。ソースによって分布状態はまちまちだが、(1)鹿児島県・宮崎県に分布(2)宮崎県のみ(3)長崎・大分・宮崎・鹿児島各県に分布、などの説がある。ただし大分県のRDBでは自生が確認できず情報不足となっていることから、現時点では数か所程度の自生地しか残存しないことが推測される。

 関東地方では筑波実験植物に植栽されており維持が図られている。見た限りではアブラガヤやクロアブラガヤよりも草体が小型、花序はアブラガヤに近い印象がある。自生は丘陵地帯の渓流辺とあり、生態はクロアブラガヤに似ているのかも知れない。一度自生地を見ておきたい植物だと考えている。
 現地の状況を知らないので何とも言いかねるが、レッドリストのランクを見ればかなりの希少種であり、元々の分布が薄いのか、自生環境の喪失か、あるいはその双方かが想起される。

(P)2010年7月 茨城県(筑波実験植物園)
2014年5月 茨城県(筑波実験植物園) 同左
標準和名 マツカサススキ 学名 Scirpus mitsukurianus Makino 生活型 多年草 自生環境 湿地
環境省レッドリスト2017:記載なし

 湿地や休耕田などに自生する大型の多年生カヤツリグサ科抽水植物。他の多くのカヤツリグサ科植物と異なり非常に大型の草体で1m前後に成長する。花序を多数付け、似たような草体のコマツカサススキ、ヒメマツカサススキとの同定ポイントともなっている。

 以前はホタルイ属に分類(*)されていたが、現在はクロアブラガヤ属とされている。事実ホタルイの面影はなく遠目には開花していなければガマのようにも、開花していてもミクリのようにも見える。和名の通り花はマツカサのように大きく、草体はススキにそっくりである。どこにでもありそうだが地元では取り残された谷津田の行き止まりのような湿地や休耕年度が浅い休耕田のみで見られる。

(*)現時点では以前のホタルイ属(Scirpus)はこのクロアブラガヤ属、科名植物だったホタルイはフトイ属(Schoenoplectus)に転属している。

(P)2007年9月 茨城県
2011年9月 茨城県 2009年9月 千葉県

2015年8月 千葉県

2015年8月 東京都
シンジュガヤ属 Scleria
標準和名 カガシラ 学名 Scleria caricina (R. Br.) Benth. 生活型 一年草 自生環境 湿地
環境省レッドリスト2017:絶滅危惧U類(VU)

 別名ヒメシンジュガヤ、湿地にごく稀に生える小型かつ軟弱な草質の一年草。 茎は三角柱状、葉は互生し、草丈は4〜5cmから大きくても20cm程度、湿地でも目立たない植物である。葉形が独特で、やや葉幅が広い葉身から急に葉先が鋭角となる。花序は茎に腋生し、短い柄がある。雄小穂と雌小穂は密集して付く。
 絶滅危惧種ランクが上記となっているのは、本種が好む環境が植被の薄い裸地などであり、こうした環境が少ないことが大きな要因と考えられる。自然下ではこうした裸地が形成されにくく、形成されたとしてもアシなど大型草本に植被されてしまうからである。貧栄養かつ攪乱が発生する湿地が永続する、という場合は少ない。

 和名は蚊頭、小型の草体に付く小型の花序を蚊の頭に例えたものか。上記の通り草体の形状はシンジュガヤ属他種と乖離しており、文献によってはカガシラ属(Diplacrum)として独立して扱う場合もある。

(P)2012年8月 茨城県(自宅育成)
2012年10月 茨城県(自宅育成) 同左
標準和名 コシンジュガヤ 学名 Scleria parvula Steud. 生活型 一年草 自生環境 湿地
環境省レッドリスト2017:記載なし

 小真珠茅という美しい和名を持つカヤツリグサ科シンジュガヤ属の湿地植物。日当たりの良い貧栄養の湿地に自生する。日当たりはアシやガマの進出により、貧栄養は水質(地下水を含む)の富栄養化により失われており、自生環境の喪失による隠れた絶滅危惧種と言ってもよいだろう。
 この植物が見つかれば同じ生育条件を好むミミカキグサ、ホザキノミミカキグサ、モウセンゴケなどの食虫植物やサギソウ、トキソウ、ミズトンボなどの湿地性ランも見つかる可能性が高い、指標ともなる。

 植物体の特徴は葉鞘に明確な翼がある、痩果の格子模様と毛、カヤツリグサ科にしては貧弱な草体など多くの同定ポイントがある。特に草体の貧弱さは多くの場合他の植物に寄りかかって育つのを見るほどで、草体の丈夫な種が多いカヤツリグサ科にしては珍しい。

(P)2009年8月 千葉県(成東・東金食虫植物群落)
標準和名 マネキシンジュガヤ 学名 Scleria rugosa R. Br. var.glabrescens  (Koidz.)Ohwi & T. Koyama 生活型 一年草 自生環境 湿地
環境省レッドリスト2017:記載なし

 本種をケシンジュガヤ(Scleria rugosa R.Br.)の変種とする説があるが、ケシンジュガヤとの相違は葉縁に毛がある(ケシンジュガヤ)、ない(マネキシンジュガヤ)程度の微小なものである。両種とも千葉県以西の湿地かつ砂礫質土壌地に自生する。草丈は10cm前後、叢生する。葉は柔らかく幅は2〜3mm、鋭頭。九州を南限とする説があるが、沖縄県でも記録があるようだ。
 8月頃に花序を形成するが、小穂の柄が湾曲し横から下向きになるため「招いて」いるようにも見える。(和名由来となっているかどうかは不明)果実は熟すと白色となる。表面には独特な格子模様が見える。

 当地ではやや稀で、上記したような特殊な湿地で見られるため、海跡の成東・東金食虫植物群落などに自生している。同様の地形を持つ霞ヶ浦周辺では発見していない。

(P)2011年10月 標本(兵庫県産)
2011年10月 標本(兵庫県産) 同左
標準和名 ミカワシンジュガヤ 学名 Scleria mikawana Makino 生活型 一年草 自生環境 湿地
環境省レッドリスト2017:絶滅危惧U類(VU)

 関東地方南部以西に自生するカヤツリグサ科シンジュガヤ属の一年草。地元霞ヶ浦・利根川水系ではあまり自生情報を聞かない希少な種である。画像は頂いた種子(兵庫県産)から発芽した育成株のものである。
 小型の草体で茎が三稜し葉長は10〜20p程度の線形、茎や葉鞘には翼は見られない。葉脇から非常に細長い花茎の花序を付けるが、結実した姿が真珠を抱くようなイメージの美しい植物である。和名は愛知県三河地方で最初に発見されたことによる。

 近似の種にはケシンジュガヤなどがあり、湿地に自生すると言われるが分布が薄く発見、画像に収めるに至っていない。精査する機会があれば比較してご報告したいと思う。

(P)2010年8月 茨城県(自宅育成)
2010年8月 茨城県(自宅育成) 同左
スゲ属 Carex
標準和名 アオスゲ 学名 Carex leucochlora Bunge 生活型 多年草 自生環境 湿地
環境省レッドリスト2017:記載なし

 湿地や草原に自生するスゲ。日当たりの良い環境を好み、道端や荒地でもやや普通に見られる。日照が確保されれば湿地にも進出する。(画像は千葉県山武市の成東・東金食虫植物群落でのもの)湿地では野焼きやアシ刈など大型植物が排除される環境に進出するようだ。本種も多くのスゲ属の植物同様に春、4〜5月に開花する

 茎は細く3稜形で、叢生する。匍匐枝を出さない。従って群生することはあまりなく点在する印象が強い。葉は茎と同長で、幅は2〜3o。小穂は茎の先に数個、直立して付ける。アオスゲは変異が大きく、いくつもの種に細分化する立場もある。一応「標準形」とされるものは画像のように雌小穂の鱗片のノギが長く目立つものを指す。近似種にメアオスゲ、オオアオスゲ、イトアオスゲ、ノゲヌカスゲ、ヌカスゲなどがある。

(P)2016年4月 千葉県

2016年4月 千葉県
標準和名 アゼスゲ 学名 Carex thunbergii Steud. 生活型 多年草 自生環境 湿地
環境省レッドリスト2017:記載なし

 放棄水田やため池畔など人里近くに多いスゲ。地下茎での増殖が盛んであり、マット状に群落を形成することが多い。湖畔では水面に張り出してウキシバのような自生も行い、時に沈水して水草のような自生を見ることもある。
 草丈は50〜60cm、葉幅2〜4mmで見かけのわりに柔らかい。カサスゲにも似るが、カサスゲ同様に以前は縄の材料などに利用されたらしい。

 本種は自生地により変異幅が大きく、北海道の湿原にある変種は走出枝で増殖せずに大株を形成するため「オオアゼスゲ」と呼ばれる。湿地ではこんもり盛りあがるために特に「谷地坊主」と呼ばれる。気候が冷涼な奥日光でも同様のものが見られる。尚、資料により奥日光の谷地坊主はワタスゲ、とあるが現地を調べてみた限りではアゼスゲ(オオアゼスゲ)が多いようだ。

(P)2010年4月 茨城県
2015年4月 東京都 同左

2016年4月 千葉県
標準和名 アゼナルコ 学名 Carex dimorpholepis Steud. 生活型 多年草 自生環境 湿地
環境省レッドリスト2017:記載なし

 アゼナルコすなわち畦鳴子で、画像のように独特の形状の小穂が下垂する。似た草姿のゴウソ(Carex maximowiczii Miq.)とは小穂の形状で区別できる。茎は両者3稜形である。同定の困難なスゲ属にあってはオニスゲなどと共に分かりやすいスゲである。
 鳴子は田畑から鳥を追い払うための道具で、風によって鳴子同士が接触し音を出すものである。最近は昔ながらの鳴子を見ることは無く、代わりに録音テープの銃声が定期的に流れ、水田地帯で植物や生物を観察採集している際に驚かされることがある。
 抽水よりも湿り気のある陸上を好み、水田地帯では畦、河川では河原などで見かける。やや普遍的であるが、基盤整備された水田地帯ではなかなか見ることが出来ない。

 可憐なイメージがあるが意外と大株になり草丈も80cm前後にまで育つ。条件により下画像のように湿地で優先種となる場合がある。(イヌスギナと混生)多くのカヤツリグサ科同様に水中で育つことはない。

(P)2008年5月 東京都
2011年5月 茨城県 同左

2015年5月 東京都
標準和名 ウマスゲ 学名 Carex idzuroei Franch. et Savat. 生活型 多年草 自生環境 湿地
環境省レッドリスト2017:記載なし

 微小な相違による種の違いが多いスゲ属にあって突出して特徴的。似たような果胞を持つヤワラスゲなどに比べ、大きさが格段に違い(大きい)、また画像でも判別できるように嘴が長い。雌小穂の印象が似るオニスゲは穂が接近して付くが本種は離れる。全体的な印象が他種とは異なるので同定はやや容易だろう。
 本県南部にあっては、スゲ属全般の傾向であるが水田周辺には出現せず、河川氾濫原や湿地に自生する。これは水田が徹底して乾田化されたことと無縁ではないように思う。本種、アゼナルコ、ヤワラスゲ、カサスゲなどは前述地形にスゲ帯として現れ、一方水田を好むゴウソなどは目にする機会が無くなってしまった。

 探せば見られる、という印象があるが意外なことに西日本各県(鹿児島、宮崎、大分、熊本、佐賀、福岡、愛媛、高知、徳島、岡山、兵庫、大阪など)では県RDBに記載されるほど減少しているらしい。

(P)2010年5月 茨城県
2015年5月 東京都 同左
2015年5月 東京都 同左
標準和名 エナシヒゴクサ 学名 Carex aphanolepis Franch.et Sav. 生活型 多年草 自生環境 湿地
環境省レッドリスト2017:記載なし

 雄小穂も雌小穂も柄が短く、ほとんど視認できないことから名付けられたスゲ。ヒゴクサ(Carex japonica Thunb.)は良く似るが、いかなる場合も目立つ柄があって判別点となる。

 草丈は20〜40cm、頂小穂(雄小穂)は1.5〜3cm長で側小穂(雌小穂)は2〜3個で0.7〜1.2cm長。匍匐枝によって疎らに群生する。
 日本全国に分布するが、関東地方では渡良瀬遊水地など限られた場所に点在する。この画像は渡良瀬遊水地、旧谷中村ゾーンに自生があったもの。

(P)2016年5月 栃木県

2016年5月 栃木県
標準和名 オオアゼスゲ 学名 Carex thunbergii Steud. var. appendiculata (Trautv. et C.A.Mey.) Ohwi 生活型 多年草 自生環境 湿地
環境省レッドリスト2017:記載なし

 北海道から本州の中部以北と大分県の一部に自生する山地性のスゲ。アゼスゲの近縁だが、葉茎が密生し「谷地坊主(やちぼうず)」を形成する。アゼスゲより大きいかと思いきや、草丈は30〜90cm程度で大差がない。根本が盛り上がって全体的に大きく見えることが和名由来だろう。線形の葉は幅2〜4mm、やや硬質である。頂小穂は雄性で2〜6cm、雌性の側小穂が3〜4個付く。アゼスゲとは異なり匐枝を持たない。

 谷地坊主は形成する種に地域性があり、北海道の釧路湿原では「カブスゲ」というスゲが形成することが多いと言う。他所でもシュミットスゲやヌマクロボスゲという種類が形成する地域もある。

(P)2018年6月 栃木県
2018年6月 栃木県 同左

2018年6月 栃木県 谷地坊主を形成したオオアゼスゲ
標準和名 オニスゲ 学名 Carex dickinsii Franch. et Savat. 生活型 多年草 自生環境 湿地
環境省レッドリスト2017:記載なし

 湿地に広く自生するスゲ。果実の形状から別名ミクリスゲとも呼ばれる。草体は大型のミクリに比べてかなり小型。同定の難しいスゲ属にあって実の形状からやや容易に判別できる種のひとつ。都道府県レベルのRDBに記載されている場合もあるが、当地では水辺で目にする機会は多い。

 本種は水田には稀で、川沿いの湿地などで目にする機会が多い。水田際に集まる多くのカヤツリグサ科とは自生形態もやや異なる印象がある。画像は栃木県芳賀郡の低山地の川沿いのもの。周辺の水田は湧水を水源としている湿田で、ミズオオバコやヒロハトリゲモ、ホッスモなど希少な水生植物が見られた。

(P)2006年8月 栃木県
2015年5月 東京都 雌小穂は花茎頂部に固まる 同左
2015年5月 東京都 同左
標準和名 オニナルコスゲ 学名 Carex vesicaria L. 生活型 多年草 自生環境 湿地
環境省レッドリスト2017:記載なし

 氷河期に分布を広げたと言われる北方型の植物で中部以北に分布の中心がある。西日本にも隔離分布し、九州にも自生地がある。頂小穂は雄性で複数あり、側小穂は雌性で直立。果胞が熟すと赤褐色を帯びる特徴がある。
 霞ヶ浦・利根川水系では菅生沼、多々良沼、印旛沼、霞ヶ浦沿岸部や利根川、小貝川氾濫原など河川湖沼周辺や渡良瀬遊水地などの湿地で広範に見られる。アゼスゲやカサスゲと混生しているが、小穂の形状が独特で目立つ存在だ。自生地では地下茎によって増殖し、大きな群落となることが多い。草丈は最大1mとなる大型のスゲである。

 自生は水位変動があると考えられる地形に多いが、概ね抽水しており水際に多い。上記した地域ではスゲ帯から離れた水際でも自生が見られた。水域の自生株は、奥日光などの寒冷地ではオオアゼスゲなどと共に谷地坊主を形成する。戦場ヶ原でも複数種のスゲ属と思われる谷地坊主が見られる。

(P)2011年5月 茨城県
2011年5月 茨城県 菅生沼 同左
標準和名 カサスゲ 学名 Carex dispalata Boott 生活型 多年草 自生環境 湿地
環境省レッドリスト2017:記載なし

 湿地、沼沢地に自生する大型のスゲ属。草丈は1mに達する。日照が不足しても成長可能なため同じ環境に生育するアシ群落の下層を構成することも多く、湿地の密生した群落の代表的な組成となっている。
 和名は形状に拠るものではなく、古来菅笠の材料として用いられて来たことによる。同様の目的で小笠原に移入されたオオサンカクイは同所にしか残存しないが、本種の方は広範に見ることが出来る。

 アシの方はヨシズの効果が見直され、工業原料としての一定の需要はあるようだが、さすがに今時菅笠を用いる人は少なく(托鉢僧か河下りの船頭さんがかぶっているぐらい?)こちらの方は刈り取る人も見かけない。乾燥しても繊維の強度が失われず、素朴な香りのする「素材」であり、もっと見直されても良いと思う。刈り取れば水湿地の栄養分を除去したことになり水質浄化にも繋がる。一石二鳥のエコな植物だろう。

(P)2009年7月 東京都
2015年4月 東京都 同左

2015年6月 千葉県 湿地に大群落を形成する
標準和名 カワラスゲ 学名 Carex incisa Boott. 生活型 多年草 自生環境 湿地
環境省レッドリスト2017:記載なし

 別名タニスゲ。しかし谷や河原、というよりも里山付近に多いスゲ。アズマナルコ(Carex shimidzensis Franch.)やテキリスゲ(Carex kiotensis Franch. et Sav.)にも似ており、開花していない状態では判別しにくい。草体が小型、小穂が細く下垂することで他種と区別できる。 また頂小穂は雄性、側小穂は雌性であるが、雌小穂が幅2〜3mmで、他種に比べて細い点で判別が可能。
 自生は里山の陰となるような農道に多く、日陰、踏圧があるという、いわば劣悪な環境に耐えられる特異な植物でもある。ただし乾燥が進むといつの間にか見られなくなる半湿地性の植物生理も持っている。

 当地では平野部の水田地帯ではあまり見られず、山林近くの里山に多い。普通種、かつ強さもある植物であるが、上記したような微妙な生育環境に依存した種であるようだ。

(P)2010年8月 茨城県(筑波実験植物園)
標準和名 ゴウソ 学名 Carex maximowiczii var. maximowiczii 生活型 多年草 自生環境 湿地
環境省レッドリスト2017:記載なし

 湿地に自生するスゲ属としては中型の多年草。特異な形状の穂を付け見分けやすい。ただし果胞に乳頭状突起がないホシナシゴウソなど微小な相違の近似種も存在する。また顕著な特徴として植物体が柔軟で果実の頂部が湾曲した嘴状となるチャボゴウソという種もある。小穂を餌に見立てた「タイツリスゲ」という別名あり。
 開けた湿地を好み、大株となる。水田地帯では除草剤の影響のない場所に自生する。郷麻(ごうそ)は里に生える麻、という意。この植物を麻のような用途 で利用した和名由来、という説がある。

 利根川流域では大幅に減少し、ごく限られた場所に自生するのみとなってしまった。関東近県の自生記録を調べると本県同様に著しく減少しているようだ。

(P)2014年6月 千葉県
2014年7月 果実(果胞) 同左 種子

2016年4月 千葉県

2018年6月 千葉県
標準和名 コタヌキラン 学名 Carex doenitzii Boeck.var. doenitzii. 生活型 多年草 自生環境 湿地
環境省レッドリスト2017:記載なし

 どちらかと言えば陸生の印象が強い植物だが、湿地にも自生し通販では「水辺の植物」として販売されることもある。タヌキラン同様に花穂を狸の尾に見立てた和名。雄花が上部に一つ、雌花が下部に2〜3できる。受粉後、茶色くなった雌花穂が大きく目立つようになる。

 地下には短い根茎があり、地上茎は密生して株となる。葉は線形、20cm長で裏面に白粉をまとう。茎下部に褐色の鱗片葉が葉鞘を形成する。この属全般、花穂がない時期は著しく見分けにくい。日本固有種である。


(P)2013年8月 茨城県
2013年8月 茨城県 同左
標準和名 シオクグ 学名 Carex scabrifolia Steud. 生活型 多年草 自生環境 湿地
環境省レッドリスト2017:記載なし

 海水の影響を受ける湿地(塩湿地)に生える多年草。河口付近などに大きな群落を形成する。草丈は50〜60cm程度になり、コウボウシバ(Carex pumila Thunb.)に似た雌小穂を付ける。コウボウシバは湿地にも進出するが塩湿地にはなく、またシオクグの方が大型(コウボウシバは30cm程度)であることから区別できる。

 この画像を撮影した利根川河口堰付近(千葉県香取郡東庄町)には、同様の環境に自生するオオクグ(Carex rugulosa Kuk.)とともに大規模な群落が見られる。内陸、霞ヶ浦近辺ではカモノハシ(イネ科)など海浜であった頃の残存植物が見られるが、シオクグやオオクグはあまり見られない。

(P)2019年6月 千葉県
2019年6月 千葉県 利根川河口堰 同左
2019年6月 果実(果胞) 同左 小穂

2019年6月 千葉県 利根川河口堰の自生地
標準和名 ジョウロウスゲ 学名 Carex capricornis Meinsh. 生活型 多年草 自生環境 湿地
環境省レッドリスト2017:絶滅危惧U類(VU)

 関東以北に自生するスゲ。60〜70cmになる大型種で茎に三稜がある。花穂も大きく形状に観賞価値があることから「上臈」スゲという和名となったとされる。関東地方でも自生地はそう多くないが、なぜか水質問題の代名詞となっている手賀沼、霞ケ浦湖畔には多い。
 霞ケ浦では湖岸湿地に自生するが、中期的に生育地が安定せず遷移が進むと消えてしまうことが多い。阿見町や美浦村の堤防内側の湖岸湿地では地形が安定していることで毎年見られるようだ。環境省レッドリスト2012では絶滅危惧U類(VU)、RDBでは絶滅危惧IB類(EN)とされる希少種だが、この一帯では普遍的かつ代表的なスゲ属の一つである。

 育成下では実生によって容易に増殖する。ただし種子を一定期間乾燥させること(室内保存)、種播時(4月)から水を切らさないこと、が必要で腰水栽培が適している。地味なスゲ属にあって成長、開花の姿に気品がある植物だと思う。

(P)2010年6月 千葉県
2010年6月 茨城県 霞ヶ浦畔 同左
2014年8月 果実(果胞) 同左 種子

2016年5月 栃木県 花期
標準和名 タヌキラン 学名 Carex podogyna Franch. et Savat. 生活型 多年草 自生環境 湿地
環境省レッドリスト2017:記載なし

 和名タヌキランであるが蘭ではなく、別名のタヌキガヤもカヤではなくスゲ属であるという変な和名が付与されたスゲ属の植物。
 本来の自生地は湿地であると思われるが、本画像は海岸の崖、湧水が溜まった湿地で、塩分の影響も強く受ける塩湿地である。塩分に対する耐性や、時期によっては湧水が枯渇するので乾燥に対する耐性も持っていると考えられる。

 本州中部以北から北海道にかけて分布、草丈は30cmから1m近く伸長する場合もある。葉は軟質で花期は20〜30p長、5〜10o幅であるが、結実後に伸長する性質を持っており、1m近くになる場合もある。和名由来となっている(と考えられる)小穂が特徴的。

(P)2006年5月 茨城県
標準和名 トダスゲ 学名 Carex aequialta 生活型 多年草 自生環境 湿地
環境省レッドリスト2017:絶滅危惧TA類(CR)

 埼玉県戸田市の戸田ヶ原付近に自生していた事から名付けられた希少なスゲ。現在同地に造成された彩湖や隣接するさいたま市桜区付近に残存する。一時期、埼玉県では造成工事等により絶滅したと考えられていたが、平成4年に再確認され保護エリア等に移植され存続している。日本固有種。
 花期以外は他のスゲ属植物、特にアゼスゲやカサスゲに酷似するが、雄性の頂小穂と雌性の側小穂が同長程度であるのが特徴。また果胞が膨らむことから別名アワスゲとも呼ばれる。

 都道府県版レッドデータでは埼玉県以外に東京都で絶滅危惧II類(VU)、千葉県で絶滅危惧TA類(CR)となっているが、両都県では未見で、栃木県及び茨城県では絶滅とされている。

(P)2016年4月 埼玉県
2016年4月 埼玉県 同左

2016年4月 埼玉県

動画 2016年4月 埼玉県

2016年5月 埼玉県 受粉が終わり小穂が充実してきた

2016年5月 埼玉県 アワスゲの別名の通り果胞が膨らんでいる
標準和名 ナガバアメリカミコシガヤ 学名 Carex vulpinoidea Michx. 生活型 多年草 自生環境 湿地
外来生物:外来生物法指定なし

 北アメリカ原産の帰化植物。発見は比較的近年で、1998年に神奈川県相模湖町の休耕田で確認されている。基本的には湿地性と思われるが、この画像を撮影した帰化植物見本園(東京都江東区)では陸上に植栽されていた。このことからミコシガヤより自生範囲が広いことが推測される。その名の通り葉が細長く頂部に花穂を付ける。ミコシガヤよりもやや穂が細長く、ヤガミスゲとミコシガヤの中間のような印象を受ける。

 帰化分布は関東地方では埼玉県と神奈川県、他に福岡県で確認されている、とある。ただし見かけの通り在来種スゲ属の複数の種の中間的な印象があり、精査すれば他の地域でも確認される可能性はあると思う。

(P)2016年6月 東京都(帰化植物見本園)
2016年6月 東京都(帰化植物見本園) 同左

2016年6月 東京都(帰化植物見本園)
標準和名 ヌマアゼスゲ 学名 Carex cinerascens 生活型 多年草 自生環境 湿地
環境省レッドリスト2017:絶滅危惧II類(VU)

 アゼスゲに近似するが、果穂の脈がなく果胞に嘴がない点など細かい部分で異なる。草丈は60cmほど、茎は3稜形。根茎から匍匐枝を出して群生する。産地は岩手、宮城、栃木、群馬の4県。
 一見アゼスゲと区別が付かないが、本種は主に湖畔や河岸の湿性地に生育し、水田周辺に多いアゼスゲと微妙に住み分けているような印象もある。渡良瀬遊水地ではアゼスゲのうち99%がヌマアゼスゲであり、アゼスゲは稀であるという。

 本種の存在を知って以来、近隣で最も多く自生があるとされる渡良瀬遊水地で探していたが、通常のアゼスゲより開花時期が早く、トネハナヤスリやエキサイゼリを見に行った際にやっと見ることができた。

(P)2019年4月 栃木県
2019年4月 栃木県 同左

2019年4月 栃木県 その名の通り水際に群生する
標準和名 ハタベスゲ 学名 Carex latisquamea Kom. 生活型 多年草 自生環境 湿地
環境省レッドリスト2017:絶滅危惧TB類(EN)

 湿地に希産するスゲ属植物。関東地方ではごく稀で、渡良瀬遊水地でも2006年になって初めて見出された。草体全身に開出毛があり、まばらに叢生する。草丈は40〜70cm。葉幅は5mm前後で基部の鞘は赤褐色である。側小穂は雌性で数個付け、雌小穂は円柱形。ウマスゲに似る。

 関東地方近辺、渡良瀬遊水地以外の湿地では見たことが無く、当遊水地でも自生場所は限られる。また開けた地形で日当たりの良い場所を好むため、アシ原では見ることができない。スゲ属のなかではトダスゲと並び、極め付きの希少種と言えるだろう。

*2017年5月に、栃木県の長島様より前掲画像のスゲが別種誤認である可能性のご指摘を頂き、同時にハタベスゲ草体のご提供も受けましたので画像を差し替えました。長島様、ありがとうございました。

(P)2017年5月 自宅育成(渡良瀬遊水地産)
2017年5月 自宅育成(渡良瀬遊水地産) 同左

2017年5月 自宅育成(渡良瀬遊水地産)


2019年6月 種子
標準和名 ヒゴクサ 学名 Carex japonica Thunb. 生活型 多年草 自生環境 湿地
環境省レッドリスト2017:記載なし

 湿地周辺や日陰に生えるスゲ属多年草。細い根茎が横に伸び、まばらに叢生する。茎は三稜形でざらつく。雌性小穂が花期に直立し果期には垂れ下がる。花期に雌小穂から長い柱頭が伸びているのが特徴。

 漢字表記は肥後草、または籤草(細い茎を竹ひごに見立てた)と書かれるが、肥後熊本特産というわけではなく全国に分布する。北関東では湿地周辺などで見られるが、やや稀な植物となっている。画像の株は小貝川氾濫原に自生していたもので、他の湿地性スゲ属やハナムグラ、ノカラマツなどと混生していた。

(P)2011年5月 茨城県
2011年5月 茨城県 同左
標準和名 マスクサ 学名 Carex gibba Wahlenb. 生活型 多年草 自生環境 湿地
環境省レッドリスト2017:記載なし

 別名マスクサスゲ、日陰の林縁や道端に普通のスゲ。当水系では河川敷湿地に特に多い。また水田の畔にも多く見られることから、湿地植物の性質も色濃く持っていることが考えられる。草丈は25〜70cm、叢生する。茎は三角柱状で直立する。葉は幅2〜5oの線形、茎の上部に0.5〜1pの無柄の小穂を数段に離れて付ける。小穂は雌雄性。
 この奇妙な和名の由来だが、茎の両端を持って裂くと、枡形の四角形が出来ることに由来するらしい。科名植物のカヤツリグサの和名由来に近いネーミングだ。

 マスクサは同様の環境に自生するヤブスゲと草姿が似て紛らわしく細かい観察となるが、本種は柱頭が3分岐、ヤブスゲは2分岐であることで区別できる。また近似種のタカネマスクサは自生が山間部の湿地に多く、平野部には見られないようだ。

(P)2011年5月 茨城県
2011年5月 茨城県 同左
標準和名 マツバスゲ 学名 Carex biwensis Franch. et Sav. 生活型 多年草 自生環境 湿地
環境省レッドリスト2017:記載なし

 湿地や休耕田などに自生する春咲のスゲ属。花茎の先端に小穂を一つしか付けないのでスゲ属植物としては外見的に異質である。花期には葉はほとんど出さず、花茎のみが目立つ。この様子を「松葉」に見立てた和名である。
 花茎は硬質で三角柱状、長さは40cmに達する。小穂は雄雌性で、先端が細い雄花、基部側が太い雌花となり、前述のように花茎に一つ付く。

 見た目が近似するコハリスゲ、シラコスゲなどがあり分類が厄介だが草体の大きさ、果胞の形状等で同定可能。分類はハリガネスゲやハリスゲの仲間とし、ヒゴクサ節とする説、ハリスゲ類と併せてハリスゲ節とする説などがある。

(P)2016年4月 千葉県
2016年4月 千葉県 特徴的な小穂 同左

2016年4月 千葉県
標準和名 ミコシガヤ 学名 Carex meurocarpa Maxim. 生活型 多年草 自生環境 湿地
環境省レッドリスト2017:記載なし

 和名の意味するところは御輿萱(茅)、であり花穂の形状を御輿に例えたユニークな和名を持つカヤツリグサ科の多年草である。花穂は所々突き出した包葉によってさらに印象的な形となっている。
 本種は分布資料によれば近畿以東、岡山県でやや稀に見られる、との事だが東日本、関東地方ではやや普通に見られる植物である。水田の畦や湿地外縁で見ることが出来る。スゲ属としては花期も長く、4月下旬から6月中旬頃まで(関東地方基準)開花している。

 便宜上「花穂」と称したが、実は無柄花序を円柱状に密に付けたもので、小穂は雄雌性である。頂部の少数の雄花を多数の雌花が囲む構造となっている。見かけが特徴的であり同定の困難なスゲ属にあってはオニスゲやアゼナルコと共に分かりやすい植物である。

(P)2008年5月 東京都
2012年7月 茨城県 同左
2013年8月 茨城県 花穂 同左 種子
標準和名 ヤガミスゲ 学名 Carex maackii Maxim. 生活型 多年草 自生環境 湿地
環境省レッドリスト2017:記載なし

 ミクリ科の花穂を小型にしたような特徴的な草姿のスゲ。全国に分布する、とあるが霞ヶ浦・利根川水系では群落は少ない。利根川沿いの湿地や小貝川氾濫原河川敷などで小規模な群落が見られる程度である。
 葉幅は平均4〜5mm、有花茎は50〜60cm程度になり、鋭稜がある。近似の帰化種にアメリカヤガミスゲ(Carex scoparia)やヒレヤガミスゲ(Carex brevior)という帰化種があるが、本種に見られる特徴である「稈が長く伸び花期に有花茎が倒れる」というものがないので同定の一つの足掛かりとなる。またミノボロスゲ(Carex albata Boott)にも似るが、ミノボロスゲは低地の河川敷には自生せず、山地にある。
 数少ない群落の観察であるが、同じスゲ属のアゼナルコやミコシガヤが河川敷内のやや乾地にも進出するのに対し、本種は氾濫原内の小池周辺の泥濘に自生しており、湿地性が強い印象を受ける。

 本種は都道府県版RDBには多く記載されているが、スゲ属ではやや脆弱な形質を持ち、背の高い他種湿地植物との競争力が弱いとする説もある。どちらにしてもこの水系では希少で探すのに苦労するスゲである。

(P)2011年6月 茨城県
2011年6月 茨城県 同左
2015年5月 東京都 同左

2015年5月 東京都
標準和名 ヤマアゼスゲ 学名 Carex heterolepis Bunge 生活型 多年草 自生環境 湿地
環境省レッドリスト2017:記載なし

 アゼスゲの近似種。山間部の渓流沿いやダム付近で見られる。自生地が異なる(アゼスゲは平地の湿地、ヤマアゼスゲは山間部の湿地)他、草体全体がアゼスゲより一回り大きく、果胞口部が2裂する。(アゼスゲは全縁)
 草丈は20〜60cm、地下に横走する太い匐枝があり、疎らに叢生する。頂小穂は雄性で長さ20〜50mm、側小穂は雌性で長さ15〜60mmで円柱形、ほとんど柄がない。

 自生地の状況から山岳性の湿地植物だと思われるが、自宅育成の株は平地で何年も生き残っており、特にキャップ条件となるわけではないようだ。発芽時期や花期もさほど変わらない。

(P)2020年5月 茨城県(自宅育成)
2020年5月 茨城県(自宅育成) 2019年5月 茨城県(自宅育成)
標準和名 ヤワラスゲ 学名 Carex transversa Boott 生活型 多年草 自生環境 湿地
環境省レッドリスト2015:記載なし

 湿度の高い河川敷や湿地周辺で見られるスゲ。当地では小貝川氾濫原、利根川河川敷などで普通に見られる。和名由来は草体が全体的に緑色で柔らかに見えることによるが、実際にはやや硬質で他のスゲ属に比べても特に柔らかい訳ではない。根茎が短く、株立ちとなる。草丈は40-50cm程度。

 頂小穂は雄性、下部に付く側小穂は雌性で、どちらも斜上する。側小穂は2-3個で先端のものは雄小穂の基部に集まるが、下部のものは離れて下に出ることが多い。果胞の嘴が長く、雌花鱗片も突き出すのでトゲトゲしい印象となる。
 近似種にアワボスゲ(Carex nipponica Ohwi)があるが、果胞の嘴がはるかに短く果胞の丸い印象が勝つためアワの穂に見立てた和名となっている。見た目で判別できると思う。


(P)2014年6月 茨城県
2011年6月 茨城県 同左
2015年5月 東京都 同左
標準和名 リーベンボルシースゲ 学名 Carex leavenworthii. Deway 生活型 不明 自生環境 湿地
外来生物:外来生物法指定なし

 1999年頃発見された新顔の帰化植物。北アメリカ原産とされており、本邦産のアオスゲ、ヤワラスゲに雰囲気が似ている。現時点では帰化は広範ではなく、一部地域にとどまっているようだ。
 まだ確認後数年ということもあってか、和名も学名読み、詳細な情報も不明な状態だが、日本帰化植物写真図鑑増補改訂版(全国農村教育協会)や日本のスゲ増補改訂版(文一総合出版)には収録されている。ただし詳細な解説はない。

 植物体は東京都都市緑化植物園(東京都江東区)で栽培されており実物を見ることができる。本稿の写真も同所で撮影した。

(P)2016年6月 東京都
2016年6月 東京都 同左
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