日本の水生植物 水生植物図譜
イネ科(2) Gramineae
(APGV:イネ科 Poaceae
絶滅危惧種表示:環境省レッドリスト2015準拠
外来生物表示:外来生物法第八次指定
植物分類:APGV分類 併記
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スズメノテッポウ属 スズメノヒエ属 チゴザサ属 ドジョウツナギ属 トダシバ属 ヌマガヤ属 ヌメリグサ属 ノガリヤス属 ヒエガエリ属 マコモ属 ミノゴメ属 ヨシ属
スズメノテッポウ属 Alopecurus
標準和名 スズメノテッポウ 学名 Alopecurus aequalis Sobol var. amurensis (Komar.) Ohwi 生活型 一年草 自生環境 水田
環境省レッドリスト2015:記載なし

 田植前から夏にかけて水田や畦道に群生する。花穂を抜き、茎を上からくわえて吹くと音が出る。子供の頃遊んだ方も多いことと思う。種子生産性が高く発芽率も高いので大発生する強害草となっている。同じ環境に自生し良く似た植物にセトガヤ(Alopecurus japonicus Steud. )があるが、スズメノテッポウの葯は茶色、セトガヤの葯は白いことで区別できる。

 学名にvar.が付記されているように、種としては異説がある。代表的なのは水田にある本種を変種スズメノテッポウ(var. amurensis (Komar.) Ohwi)とし、乾地、畑地性が強いものをノハラスズメノテッポウ(var. aequalis)と分ける説である。畦道など「湿地」とは言えない場所に自生するものはたしかに草体が小さな印象を受けるが、確証がないので特に区別はしない。

(P)2005年7月 茨城県
2015年5月 東京都 同左

2015年5月 茨城県 休耕田を占拠するスズメノテッポウ。春先に大群生する休耕田が多い
標準和名 セトガヤ 学名 Alopecurus japonicus Steud. 生活型 一年草 自生環境 水田
環境省レッドリスト2015:記載なし

 スズメノテッポウと自生地、開花時期、草姿が非常に良く似ている。スズメノテッポウの項で記したように、本種は葯が白く、さらにノギが目立つ。両種はしばしば混生し、画像の株も両種混生状態であるが、開花期であれば葯によって容易に同定は可能。茨城県南部では休耕田に於いてスズメノテッポウとともに優先種となっており、発生数が多い。また、他種が繁茂する前に開花(4月上旬)するので目立つ存在である。草体は概ね高さ30cm前後(生育条件によって差異あり)、葉は線形で3〜4mmの葉舌がある。
 自生は関東以西、とのことだが茨城県北部(ひたちなか市以北)では非常に稀、水戸市近辺でやや稀、土浦市以南では普通である。元々南方種、史前帰化種で、このあたりに北限がある可能性もあると思われる。

 スズメノテッポウは葯が茶色、セトガヤの葯は白い、という同定ポイントは動かないが、非常に紛らわしい存在にオオスズメノテッポウ(Alopecurus pratensis L.)という種があり、こちらの葯は白い。オオスズメノテッポウは牧草としてヨーロッパから移入されたものが本州中部以北に帰化している、とされる。
 確認していないので何とも言えないが、元々牧草であって水湿地に入り込むことはないと思う。湛水された休耕田で見られるものはセトガヤと判断しても良いと思われる。(最近のカラスムギの挙動などを見ると断定はできないが)陸上に於いてはさらに紛らわしいことにオオアワガエリ(Phleum pratense L.)と良く似ている。オオアワガエリは牧草や小動物飼育の敷物として販売されることも多い「チモシー」である。

 和名は瀬戸茅または背戸茅と標記されるが、瀬戸(愛知県瀬戸市)や瀬戸内海沿岸に分布上の傾斜があるわけではなく、背戸(裏口、裏手という意味の古語)のようなじめじめした場所に生える茅という後者の解釈が正解であるように思われる。

【参考】
野に咲く花 平野隆久他 山と渓谷社 P561
野草図鑑3すすきの巻 長田武正 保育社 P142,144

(P)2010年4月 茨城県

2015年5月 茨城県 田植前の水田の優占種 同左
スズメノヒエ属 Paspalum
標準和名 キシュウスズメノヒエ 学名 Paspalum distichum Linn. 生活型 多年草 自生環境 水田
外来生物:外来生物法上生態系被害防止外来種

 キシュウ=紀州と和歌山県の旧称名がついているが、和歌山県原産ではなくアジア、アメリカの熱帯地方に広く分布する外来帰化種である。和歌山県ではじめて発見されたことによる和名。分布は関東地方南部以西とされているが、関東地方北部でも普通に見ることが出来るので年々北上し分布を拡大しているものと推測される。
 イネ科雑草の特徴そのものを発揮し、種子生産性が高く繁殖力が異常に強い。近似種(スズメノヒエ)との同定は花穂により、V型に2筋に分岐していれば本種である。花穂は独特の粘性があり手で触れるといつまでもベタつく。

 この草は非常にしぶとく、切り取って積んでおいても結実してしまう。一説には10%以下まで水分含有率が低下しないと完全に枯死しないと言われており、完全な防除は手作業で根ごと抜き取って行くしかないとされていた。
 最近になりこの草に有効な除草剤が開発、発売されたが「長期的な」安全性はどうだろうか?もちろん残留性や化学物質としての安全基準を満たしているはずだが、エピジェネティクス変異を誘発する側面を考えないと結局は生態系に重大な影響を与えてしまうのではないか、と個人的に考えている。

(P)2005年8月 茨城県
2014年7月 千葉県 同左
標準和名 スズメノヒエ 学名 Paspalum thunbergii Kunth ex Steud. 生活型 多年草 自生環境 湿地
環境省レッドリスト2015:記載なし

 山野や路傍、畑など広範に自生するイネ科多年草。一般に陸上植物に分類されるが、画像のように水田や湿地にも入り込む。茎は束生し、草丈は80cmまで伸長、先端近くに3〜5本の小穂(正確には小穂が並ぶ「総」)を付ける。
 分布は北海道を除く日本全土。ただし琉球列島では奄美、沖縄本島、沖永良部など一部の島にしかなく、稀な植物となっている。

 本種は普遍的な雑草のように思われるが、近年非常に近似した帰化種のシマスズメノヒエ(ダリスグラス)に置き換わっている例が多い。シマスズメノヒエは葉に毛が多く、草丈が高い(150cm程度)、株立ちとなる点で区別できる。

(P)2014年7月 千葉県
2014年7月 千葉県 同左
チゴザサ属 Isachne
標準和名 チゴザサ 学名 Isachne globosa (Thunb.) O. Kuntze 生活型 多年草 自生環境 水田
環境省レッドリスト2015:記載なし

 水田や湿地に生える笹の仲間。普通種で日本全国幅広く自生する。チゴ(稚児)と名づけられている通り陸生の笹に比べるとかなり小型の種である。特に水田の周辺に多く、中国、東南アジアやオーストラリアにも分布する。

 草丈30〜60cm長、茎は固く直立し1〜1.5mm径でやや褐色。葉は披針形〜線形、4〜7cm長、幅は5〜6mmでやや硬く、鋭頭、無毛である。花期は6〜8月で頭頂部に3〜6cm長の円錐花序を出す。地下茎で短期間に増殖するために水田の強害草とされる場合もある。

(P)2010年7月 茨城県
2011年7月 茨城県 同左
2014年6月 茨城県 同左

2015年8月 千葉県
ドジョウツナギ属 Glyceria
標準和名 ドジョウツナギ 学名 Glyceria ischyroneura Steudel 生活型 多年草 自生環境 水田
環境省レッドリスト2015:記載なし

 水田地帯に多いありふれたイネ科の雑草である。畔に湿生し、水路に抽水する。水温の安定した湧水起源の水路等では時に沈水する姿が見られる。
 泥鰌繋という和名がどこから来ているかよく分からないが、(1)ドジョウの棲家のような場所に生える(2)捕まえたドジョウを繋ぐ、と2説ある。この草でどうやってドジョウを繋ぐのかピンと来ないが、ウナギツカミ同様に比喩的な表現だろう。

 小穂にはそれぞれ3〜7個程度の小花が付く。当地の自生株は赤紫を帯びることが多いようだ。下画像はイネ科に特徴的な葉舌と葉耳で、葉舌は1mm以下の場合が多い。葉鞘は合着して筒状。花期(5〜6月)に似たようなイネ科雑草が多く開花するが、水湿地に生え陸生イネ科雑草に比べて穂が細く、かえって目立つ植物である。

(P)2010年6月 茨城県
fig.A fig.B
fig.A 特徴的な葉舌
fig.B 小穂
fig.C 用水路に抽水する

All 2010年6月 茨城県
fig.C
標準和名 ヒロハノドジョウツナギ 学名 Glyceria leptolepis Ohwi 生活型 多年草 自生環境 湿地
環境省レッドリスト2015:記載なし

 やや標高の高い渓流際などに自生する大型のイネ科植物。平地に多いドジョウツナギに似るがよりも大型になる。茎は横走し、節から単生して束生しない。葉鞘と葉の特徴はドジョウツナギに似る。草体は柔らかい。茎は高さ90〜180cm、基部の直径は3.5〜10mm。

 関東地方では平野部では見られず、山間部の渓流際などに多い。画像は利根川水系片品川の標高700m地点である。よく見られるのは片品川(群馬県)、大谷川(栃木県)流域など。標高500m以下になるとあまり見られない。場所によって両方見られる場合もあり、紛らわしいが、ヒロハノドジョウツナギは草体が大型、柔軟で小穂が黄緑(画像左下)であることから印象が相違する。
 両種が存在する場所では稀に交雑種であるマンゴクドジョウツナギ(Glyceria×tokitana)という種が見られるらしい。両種の性質を持つようだが、比較的近年に記載されており、実物も未見であって詳細は不明。

(P)2011年7月 群馬県
2011年7月 群馬県 同左
標準和名 ムツオレグサ 学名 Glyceria acutiflora Torr. 生活型 多年草 自生環境 水田
環境省レッドリスト2015:記載なし

 休耕田や湿地に生えるドジョウツナギの仲間。この属はやや水分依存度が高く、用水路などでは抽水し、水深がある環境では沈水葉となることもある。基部で茎が横走し、花期には直立し草丈60〜70cmとなる。葉は線形で長さ30cm前後、幅5mmほど。この属の他種同様に葉舌が目立ち、長さが6〜7mmある。また小穂が分離せず(画像参照)軸に沿うため、一本の花序に見える。

 漢字表記では「六折草」、種子が熟すと小花がバラバラになる様子から付与されたと言われている。また別名でミノゴメ、または田麦とも呼ばれるが、これは本種がいわゆる雑穀範疇の植物であり、食用になることから来ている名称である。当水系では湛水された休耕田や自然湿地などで見られるがさほど多くない。耕作田や排水路近くに群落を形成するドジョウツナギとは生態に距離がある印象だ。

(P)2010年5月 茨城県
トダシバ属 Arundinella
標準和名 トダシバ 学名 Arundinella hirta (Thunb.) 生活型 多年草 自生環境 湿地
環境省レッドリスト2015:記載なし

 生育地を選ばない普遍的なイネ科植物。湿地付近では休耕田、畦などでよく見られる。草体は大型となりMAX150cm程度にまで伸長する。地下茎は横走し群生する。茎は円柱形、葉は広線形で長さ20-40cm、幅は6-15mm、先端は鋭頭で基部は丸く毛がある。葉鞘にも毛があることが多い。

 和名のトダシバは「戸田」シバで、トダスゲの自生地で有名な戸田近辺に多かったため、とされるがどこでも見られる植物なので真偽は不明。尚、種内変異が多い植物だが、毛を密生させるものを基本種とし区別する場合にはケトダシバ、無毛か、毛がまばらなものをウスゲトダシバ、小穂にも剛毛があるものをオニトダシバとする立場がある。さらに花序が白くなるもの(普通は紫が多い)をシロトダシバ(画像の株?)とする場合もある。

(P)2015年8月 東京都
2015年8月 東京都 同左

2015年8月 東京都
ヌマガヤ属 Moliniopsis
標準和名 ヌマガヤ 学名 Moliniopsis japonica (Hack.) Hayata. 生活型 多年草 自生環境 湿地
環境省レッドリスト2015:記載なし

 大型のイネ科湿地植物。主に山岳部の湿原や低地の貧栄養性湿地に生育するが、生育条件はさほど厳しくなく、やや広範に分布する。中間湿原では代表的な植物の一つ。花期は10月頃だが出穂は7〜8月、2か月以上かかって開花する、イネ科植物としては珍しい存在。「ヌマ」ガヤであるが抽水はせず、地下水位の高い湿地を好む。条件が合致すると大繁茂し他の希少な湿地植物の圧迫要因になっている場合もある。
 草体は山岳部では20〜30cmだが、平野部では1mを超える。葉は硬質で線形、長さ50cm程度になる。表面には光沢があり、裏面はやや白っぽい。茎に節はなく基部は太い。花序は散形花序で長さ30〜40cm、花序枝の先端に小穂を一つ付ける。

 関東地方では平野部でスポット的な自生があり、群馬県や栃木県の山岳部湿原では大群落が見られる。奥日光戦場ヶ原では代表的な植物の一つとなっている。

(P)2011年7月 群馬県
2011年8月 千葉県 2011年7月 群馬県
ヌメリグサ属 Sacciolepis
標準和名 ヌメリグサ 学名 Sacciolepis indica (L.) Chase var.oryzetorum (Makino) Ohwi 生活型 一年草 自生環境 水田
環境省レッドリスト2015:記載なし

 水田の畦周りや湿地に生えるイネ科の一年生草本。ヌメリの由来は葉を揉むとぬめることによる。学名にvar.が付くのは本種が、地を這うハイヌメリの変種とされているからである。
 ハイヌメリとの相違点は、株が匍匐せずに根元から立ち上がること、花穂がやや長く紫色を帯びること、である。(掲載していた画像はその後の調査でハイヌメリと判明したので差し替えた)。

 イネ科雑草は種子生産性、発芽率ともに高く、おまけに稲と共通の病気を持ったりで水田では嫌われる。そのためか和名の付け方からして即物的なやっつけ仕事の香りも漂う。非常に地味で人々に名前も知られないような雑草である。

(P)2014年10月 茨城県
2014年10月 茨城県 同左 周囲は矮性のヤナギタデ
標準和名 ハイヌメリ 学名 Sacciolepis indica (L.) Chase var. indica 生活型 一年草 自生環境 水田
環境省レッドリスト2015:記載なし

 ヌメリグサの近縁種。どちらも学名に「var.」が付くが、分類はハイヌメリを基本種とし、ヌメリグサを変種とするのが一般的。植物体としても極めて近似するが、本種の茎の基部は匍匐して広がり、群生する。またヌメリグサの項にあるように花穂がやや短く紫色を帯びない。

 水田、休耕田に一般的で、自然湿地や、やや湿り気のある畑地にも見られる。当地ではヌメリグサと自生環境が同一であり、種間交雑なのか種内変異なのか判断が付かない中間型のような形質の株も見られる。

(P)2009年9月 東京都
2016年10月 茨城県(自宅) 出穂初期 同左 自宅の湿地実験環境に自然に生えてきたもの
ノガリヤス属 Calamagrostis
標準和名 ホッスガヤ 学名 Calamagrostis pseudo-phragmites (Haller fil.) Koeler. 生活型 多年草 自生環境 湿地
環境省レッドリスト2015:記載なし

 日照が確保できる湿地に自生する多年草。ホッスモ同様に仏具の払子が和名由来となっている。ある意味ホッスモより「払子」らしい。苞穎は長く、特徴的な穂の形状となる。開花期以外はイネ科他植物と紛らわしいが(ヤマアワなど)、開花期であれば花序が払子状に開くので判別できる。

 やや普遍的なイネ科雑草であるが土壌を選ぶ傾向もあり、海岸近くや河川敷の砂地を好む。また上記のように開花期以外は他植物に紛れることも多く意外に見つけにくいかも知れない。茨城県南部では利根川水系の砂質の河川敷の一部地域で見られる。

(P)2016年10月 茨城県

2016年10月 茨城県
ヒエガエリ属 Polypogon
標準和名 ヒエガエリ 学名 Polypogon fugax Steud. 生活型 越年草 自生環境 水田
環境省レッドリスト2015:記載なし

 水田や湿地で見られる最も普遍的な雑草の一つである。穂が開く前と開いた後(画像)ではかなり印象が異なる。開いた後の群生を逆光で見ると非常に美しい。
 和名由来は稗返り、だがヒエに似ており野性味溢れる小型の草姿が原種に先祖返りしたようだ、というところから来ているらしい。事実関係は不明・・というか進化(ないし退化)の一過程を示しているかのような、考えて見れば壮大な和名である。

 以前リスを飼っていた際に喰うかどうか熟した小穂ごと試しに与えたところ、あまりの小ささに食べ物として認識しなかったようで無関心であった。小動物や鳥にあまり食べられない点も爆発的な発生数に関係しているのだろう。

(P)2009年5月 茨城県
2014年5月 茨城県 同左
マコモ属 Zizania
標準和名 マコモ 学名 Zizania latifolia Turcz. 生活型 多年草 自生環境 湖沼
環境省レッドリスト2015:記載なし

 全国に分布する多年生の抽水植物。アシが湖沼沿岸部や湿地・休耕田に多いのに対し、湖沼に多く、アシより沖に生える。また水田地帯においても用水路中やため池に生えることが多い。一種の棲み分けだろう。マコモは地下茎が菰角と呼ばれ食用にされる他、黒穂菌に寄生され肥大化した新芽もマコモタケと呼ばれ食用とされる有用植物である。アシ同様に身近な植物の有効利用という庶民の知恵である。
 生態的には繁殖力が強いため他の植物を圧倒してしまう傾向があり、用水路でも浮遊物などをせき止めて水流が悪くなったり、なかなかの強害草である。

 平野部の水田地帯では用水路や河川に沿って本種やアシがグリーンベルトとなっており、遠景からでも水路の位置が分かる。田園地帯の風景の一部となっている。

(P)2006年9月 茨城県 More weedマコモ
2009年9月 千葉県 2014年6月 千葉県 手賀沼

2015年6月 茨城県

2015年8月 茨城県
ミノゴメ属 Beckmannia
標準和名 カズノコグサ 学名 Beckmannia syzigachne (Steud.) Fernald 生活型 一年草 自生環境 水田
環境省レッドリスト2015:記載なし

 小穂の形状をカズノコに見立てた和名を持つ水田地帯に普遍的なイネ科雑草。果期には小金色となり印象はさらにカズノコに近づく。イヌビエやアワガエリとは小穂の印象がまったく異なるので判別は容易だろう。一般的な雑草であるわりには以下のようにいくつかの謎がある。

(1)柱頭が3本のものと2本のものがある
(2)別名ミノゴメ(蓑米)は正月七草粥の一だが、ムツオレグサとする説がある
(3)同所であっても一年草と越年草が混生する(正しくは「一年草または越年草」)

 ミノゴメの件だが、実際に熟した小穂を分解してみるとかなり細く小型の種子が出てくる。集める手間や生で齧ってみた風味から到底食用にはならないと思う。ムツオレグサの方は本種に比べやや米に近い味がするので、ムツオレグサ=ミノゴメ説に一票である。

(P)2010年6月 東京都
2015年5月 東京都 同左

2015年5月 東京都 花穂がカズノコ状の形状をしている(白い部分が花)
ヨシ属 Phragmites
標準和名 アシ 学名 Phragmites australis (Cavanilles) Trinius ex Steudel 生活型 多年草 自生環境 湿地
環境省レッドリスト2015:記載なし

 湿地や湖沼で普通に見られる大型の抽水植物である。アシは「悪し」に通じるためヨシとも呼ばれ、属名もヨシ属である。ヨシズなど製品の原料にもなる。実はここがこの植物の大きなポイントで、今や栄養吸収による浄化能力によって水辺環境で注目されている植物の一つであるが、適切な刈り取りを行なわなければ栄養分がすべて還って行くのでより一層の富栄養化をもたらしてしまう。
 葦の加工品の原料供給などスキームを確立しないと結局は浄化に何ら寄与しない結果となってしまう。もちろん小鳥や小動物の営巣や土壌微生物など、生態系への貢献は別としても。

 ヨシズの効果は想像以上で、おしゃれな洋風住宅のカーテンなど物の数ではない。我が家では見かけを気にせず多数使用しているが真夏の日中でも使用/非使用で体感温度は全く違う。消費量が拡大すれば刈り取りも進んで浄化に繋がる。
 湿地歩きの際には葦帯は動きが取れず、他に目ぼしい植物が存在する確率も低いのでどちらかと言えば邪魔であるが、生態系のみならず人間の生活とも密着したエコな植物である。

(P)2006年9月 茨城県
2015年5月 東京都 同左
2015年9月 東京都 同左

2015年9月 東京都
標準和名 ツルヨシ 学名 Phragmites japonica Steud. 生活型 多年草 自生環境 湿地
環境省レッドリスト2015:記載なし

 河川中上流域の礫の河原や湿地帯に自生する大型の抽水・湿地植物。アシと非常に近似する。微妙な相違はあるが、一番簡単な同定法は、本種は匍匐枝を出して数珠繋ぎに増殖する点である。匍匐枝は地表を通るので根元を確認すれば分かる。(下左画像)河川下流、護岸用の捨石の上を這い回り、所々で芽を出す。(下右画像)
 別名でジシバリと呼ばれることがあるが、キク科のイワニガナの別名もジシバリで紛らわしい。どちらも地表を占拠する様を表現した別名である。

 見たままの感想だが、近似種のアシとは「休戦協定」のような関係で、河川中上流域は本種、それより下流はアシと棲み分けが成されている。湿地帯でもアシ原には侵入を見たことが無い。お互いに作用する忌避物質を出して共倒れを防いでいるような印象だ。
 アシの利用法、ヨシズの原料や水質浄化などの用途に於いて両者は区別されずに使われている、と聞いたことがあるが少なくともそうした用途に於いては同じ植物である。

(P)2009年6月 茨城県
2010年8月 茨城県 同左
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