日本の水生植物 水生植物図譜
ハス科 Trapaceae
(APGV:ハス科 Trapaceae
絶滅危惧種表示:環境省レッドリスト2015準拠
外来生物表示:外来生物法第八次指定
植物分類:APGV分類 併記
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ハス属
ハス属 Nelumbo
標準和名 ハス(花ハス) 学名 Nelumbo nucifera Gaertn. 生活型 多年草 自生環境 湖沼
環境省レッドリスト2015:記載なし

 霞ヶ浦近辺ではビオトープや湖沼に植栽されるタイプ(この画像のタイプ)と蓮根(出荷高は茨城県が全国一位)を収穫するためのタイプ、2タイプが見られる。
 学術的な分類よりも、自然環境に対して二つの大きな問題があるが、花の美しさ故かあまり話題となる事もない。一つは他種への圧迫で、水面を覆ってしまう増殖ぶりのため特に沈水植物に壊滅的影響をもたらしてしまう。多様性を維持するためにヒシ同様ハス刈りをしなければならないため池などもある。もう一つは非常に栄養吸収が盛んな植物であり、枯死した際に一気に栄養塩が水中に拡散するために水質が一気に悪化する点である。

 園芸「品種」のものは実生を行うと遺伝的な形質が変わり、親の品種と異なるものが往々にして出現し、遺伝的な発現が安定していないものが品種として出回っている可能性もある。

(P)2002年6月 千葉県

2014年7月 千葉県 抽水葉

同左 浮葉
標準和名 ハス2(大賀ハス) 学名 Nelumbo nucifera 生活型 多年草 自生環境 湖沼
環境省レッドリスト2015:記載なし

 1951年に千葉市の東京大学検見川厚生農場の落合遺跡で発掘されたハスの種子を理学博士大賀一郎氏が発芽させたことで「大賀ハス」と呼ばれるようになった古代ハスの一つ。現在では各地の水生植物園やビオトープに移植されている。古代ハスには他にも中尊寺の金色堂須弥壇から発見されて発芽した「中尊寺ハス」や埼玉県行田市で発掘され発芽した行田蓮がある。

 古代ハスでも「ハスはハス」であり、学名その他扱いはハスと同一であり、二名法ではNelumbo nuciferaと標記される。超休眠種子からの発芽体後裔であっても繁茂ぶりはハスとまったく変わらない。この画像を撮影した茨城県北相馬郡利根町の親水公園では、広い池のかなりの部分が本種によって占拠されてしまっている。他に勢力を二分するのは温帯スイレン(園芸種)である。たしかにどちらも花は綺麗だが、花だけが水生植物の存在価値でもない。傍らの自然湿地では以前見られたタコノアシが見られなくなっている。

(P)2010年7月 茨城県 公園植栽

2011年8月 茨城県 果実

同左 種子

2014年6月 茨城県

同左

2014年6月 茨城県

同左
標準和名 ハス3(藕糸蓮) 学名 Nelumbo nucifera 生活型 多年草 自生環境 湖沼
環境省レッドリスト2015:記載なし

 ハスの本場、茨城県土浦市の八島八郎氏が品種改良を行った花ハスである。藕糸蓮(ぐうしれん)という難しい、漢字変換が出てこない品種名が付いているが、藕糸とは蓮の茎部から繊維が採取でき織物に活用できるという意味らしい。(千葉県我孫子市の栽培ハス田解説文より)実際に八島氏は藕糸蓮から紡いだ糸で皇族の家紋を表じた袱紗を織り皇室に献上しているそうである。

 花はご覧のように複雑な構造で美しいものだが、要するに園芸品種である。あまり見かける種ではないが、千葉県我孫子市手賀沼湖畔、水の館から水生植物園(アヤメ園)に向う途中の農家が個人的に栽培され、公開を行っている。

(P)2010年6月 千葉県
標準和名 ハス4(茶碗バス) 学名 Nelumbo nucifera 生活型 多年草 自生環境 湖沼
環境省レッドリスト2015:記載なし

 園芸用に改良された矮性のハス。茶碗で育てることが出来るほど小さい、という所から付けられた品種名であるが、もちろん実際には茶碗で育てることはできない。花は原種に似たもの、八重咲など様々なものが流通している。
 原種は溜池など広い環境でも水域を占有するほど増殖するが、この品種は睡蓮鉢程度でも何とか収めることが出来、園芸用、観賞用として人気がある。ホームセンターの夏の「水生植物コーナー」の定番商品にもなっている。一般にハスは種子から育てた場合、開花まで3年かかると言われているが、チャワンバスのなかには数ヶ月で開花する品種もあり、手軽さも人気の要因となっている。

 栽培は根元にも日が当たる水深の浅い環境で、肥料切れに注意。実質こうした環境で混植し共存して育つ水生植物は見当たらず(早晩土壌と水面で繁殖力に負けてしまう)、専用の環境を用意する必要があるだろう。

(P)2010年8月 茨城県(公園植栽)
標準和名 ハス5(金澄) 学名 Nelumbo nucifera 生活型 多年草 自生環境 湖沼
環境省レッドリスト2015:記載なし

 レンコン収穫用に品種改良されたハス。千葉県のハス農家、金坂孝澄氏が品種改良、種苗登録を行った品種で「金澄」として登録されている。金澄は1985年に登録されているが、その後金澄20号、34号、36号と改良が進められている。
 品種としての特徴は外観品質、食味が良く、多収性で、浅根性であり収穫が容易という、農作業を軽減し商品品質に優れるものであるため、霞ケ浦沿岸のハス田ではほとんどこの品種を栽培している。

 食生活の変化によってレンコンはあまりポピュラーな食材ではなくなってしまったが、低カロリーでビタミンCや食物繊維が多くミネラルも豊富、優れた健康食品である。漢方では薬として扱われているほど薬効成分もあり、特に最近では花粉症症状軽減等の効果が注目されている。

(P)2010年6月 茨城県 ハス田
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