日本の水生植物 水生植物図譜
バラ科 Rosaceae
(APGV:バラ科 Rosaceae
絶滅危惧種表示:環境省レッドリスト2015準拠
外来生物表示:外来生物法第八次指定
植物分類:APGV分類 併記
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キジムシロ属 キンミズヒキ属 シモツケ属 ヘビイチゴ属 ワレモコウ属
キジムシロ属 Potentilla
標準和名 オヘビイチゴ 学名 Potentilla sundaica (Bl.) O.Kuntze var.robusta (Franch. et Savat.) Kitag. 生活型 多年草 自生環境 湿地
環境省レッドリスト2015:記載なし

 常緑の多年草で、湿地や水田ではなくても湿り気が多少あればどこにでもある雑草。群生すると黄色い花が美しい。同属に近似種が多いが、本種のみ葉が掌状の5小葉であり明瞭な同定ポイントとなっている。ヘビイチゴ属の他種は小さなイチゴを実らせるがキジムシロ属の本種はイチゴを付けない。果実は5〜6mmの褐色の痩果である。
 ヘビイチゴを名乗るのは葉や花の雰囲気が似通っているためと思われる。雄蛇苺だが、ヘビイチゴに比べて草体が大きい印象故か(花はむしろ小さい)、熟果を付けないためか、あるいはその両者なのか、由来はその辺りだろう。

 文献により同属ミツバツチグリとの相違点に茎の色(オヘビイチゴは緑色、ミツバツチグリは赤褐色)があげられる事が多いが、画像の通り本種も時期により赤褐色の表現形がある。ミツバツチグリはその名の通り三つ葉なので誤認することはないだろう。
 日当たりが良過ぎず湿り気があればどこでも生育可能で、春から夏にかけての花を楽しめる野草。秋から初冬にかけての紅葉も意外に美しい。

(P)2006年4月 茨城県
標準和名 カワラサイコ 学名 Potentilla chinensis Ser. 生活型 多年草 自生環境 湿地
環境省レッドリスト2015:記載なし

 河原など砂礫地に自生する多年生草本。漢字で書けば河原柴胡または川原柴胡となる。柴胡とはセリ科ミシマサイコの漢名で、漢方で薬用とされる根茎部位が類似することから来ている、とされる。カワラサイコの根も薬用となり、薬効として解熱、通経の効能があるようだ。
 葉は羽状複葉で、小葉の間に付属の小葉片を持つ。近縁種のヒロハノカワラサイコ(Potentilla nipponica Th. Wolf)は小葉の間に小葉片が無く、茎に白毛が多いことで判別が可能。花期は6〜10月、花色は多くのキジムシロ属同様に黄花。

 本種は近年多くの都道府県でRDBに記載されているが、たしかに探してみるとなかなか見つからない植物だ。減少原因は本種を含む礫原特有の植物群が、ダム整備による冠水頻度の低下、立地の富栄養化等の要因によって帰化植物やツル植物の侵入により圧迫されている点があげられる。

(P)2010年7月 茨城県
2019年8月 東京都 花 同左 葉

2019年8月 東京都
標準和名 クロバナロウゲ 学名 Potentilla palustris (L.) Scop. 生活型 多年草 自生環境 湿地
環境省レッドリスト2015:記載なし

 珍しいバラ科の湿地植物である。ワレモコウも湿地で見かけることがあるが、本来は陸上の植物である。(コバナノワレモコウは湿地性が強い)
 分類に付いて諸説ある植物であり、科は動かないが属名に付いてはクロバナロウゲ属、クロバナロウゲ亜属、キジムシロ属などの分類が図鑑により出てくる。本Webサイトではキジムシロ属との立場に準拠する。
 元々バラは木本であるが、最も原始的な木本とされており、本種も茎の一部が木質化するので木本性もあるが、資料群も草本扱いしているのでこれも従うことにする。やや標高の高い山地の湿地に自生するが、低地の湿地でも見かけることがあるので特に亜寒帯や標高というキャップ条件は無いと思われる。

 和名漢字は「黒花狼牙」であり、狼牙は本来「ミナモトソウ」(同属)Potentilla cryptotaeniae Maxim.)の別名であるが、草体の印象が似て黒っぽい花を付けることによる、とされている。ミナモトソウは源平由来ではなく水源草で、水源近くにあるという意。こちらも似たような環境に育つ湿地植物である。

(P)2014年5月 茨城県
2014年5月 茨城県 開花 同左 黒と言うよりクリムゾンカラーに近い
標準和名 ミツバツチグリ 学名 Potentilla freyniana 生活型 多年草 自生環境 湿地
環境省レッドリスト2015:記載なし

 日当たりの良い湿地や畑地、草原や林縁と幅広い環境に生育する多年草。キジムシロに似るが、キジムシロの羽状複葉と異なり和名の通り三つ葉(3出複葉)である。ちなみに「ツチグリ」は根茎が太く、部分的に塊状になるので、その部分を栗の実に模した、という説。ツチグリ(キノコ)に似ているから、という説がある。花は5弁が通常だがかなりの確率で6弁花も見られる。花期は4〜6月。

 食用になりそうな名前だが、ミツバツチグリの根茎は非常に硬く、何らかの調理を行っても食べられないと思う。毒はない。

(P)2016年4月 茨城県
2016年4月 茨城県 同左

2016年4月 茨城県 バラ科野草の群落で
キンミズヒキ属 Agrimonia
標準和名 キンミズヒキ 学名 Agrimonia pilosa  var. japonica 生活型 多年草 自生環境 湿地
環境省レッドリスト2015:記載なし

 草原や湿地に自生する多年草。草丈は最大80cm程度となり大型となる。湿地に自生するものはアシなど大型草本に負けないためか、概して大きくなるようだ。草体全体に毛が多く、種小名の由来となっている。(pilosaは「軟毛のある」という意味)
 葉は奇数羽状複葉で小葉は5〜9個、裏面に腺点がある。8月頃、細長い総状花序を出して、黄色い直径1cm前後の5弁花を咲かせる。この花序が和名由来となっている。

 同じ和名由来のミズヒキとギンミズヒキはタデ科の植物で紛らわしいがキンミズヒキはいかにもバラ科植物らしく見える。

(P)2015年8月 埼玉県
2015年8月 埼玉県 花序 同左 葉

2015年8月 埼玉県 サクラソウ自生地、田島ケ原にて
シモツケ属 Spiraea
標準和名 ホザキシモツケ 学名 Spiraea salicifolia L. 生活型 多年草 自生環境 湿地
環境省レッドリスト2015:記載なし

 自生地が限られるバラ科の湿地植物。北海道及び本州では栃木県奥日光と長野県霧ヶ峰に隔離的に分布する。同じバラ科のシモツケソウの花に似ているが本種は円錐花序であるためにこの和名となったそうである。
 基本的には当Webサイトは湿地性草本を扱っているが、本種は分類によって木本とされることがある。ただし木本と草本の区分は明瞭ではなく、特にバラ科は木質化の程度によってどちらとも考えられるので収録した。

 画像は引いて撮ったものであるが、戦場ヶ原の湿原に彩りを添えるピンクの花穂が本種である。この湿地では優先種といっても良いほどどこにでもある。似たような環境は他の山岳地帯にもあるのにここ奥日光と霧ヶ峰高原だけに存在するのが不思議である。標高の高い開けた湿原、平地・盆地に向った斜面の上、などいくつかの地形的共通点はあるにはあるが良く分からない。
 シモツケ、は言うまでもなく下野(栃木県旧分国名)であるが、上記シモツケソウやシモツケコウホネなど固有、準固有の植物が多い。

(P)2009年7月 栃木県
ヘビイチゴ属 Duchesnea
標準和名 ヘビイチゴ 学名 Duchesnea chrysantha (Zoll. et Mor.) Miq. 生活型 多年草 自生環境 湿地
環境省レッドリスト2015:記載なし

 水田、休耕田、湿地などで見られる馴染み深い植物。オヘビイチゴとの違いは小葉が3であること、その名の通りイチゴを付けることである。花は両種黄花。点々と実った赤い小さなイチゴは美味そうであるが味がほとんど無く、食用にはならない。動物や鳥もあまり餌とはしないようで、イチゴが多数残っている姿をよく見かける。巷説で有毒とされるが毒は無く、むしろ薬草として用いられることもある。
 一般に食用になる野イチゴは花が白、またはピンクとされクサイチゴやナワシロイチゴが代表的な食用野イチゴである。また「ヘビイチゴ」を名乗るがシロバナヘビイチゴやエゾヘビイチゴは白花でありイチゴも美味しい。

 和名由来に付いて調べたが噂珍説怪説入り乱れ、よく分からない。少なくても蛇は食べないし、本種を好むという事も無い。本種が生える湿潤な環境は夏季には爬虫類である蛇には居心地が良いだろうことは想像できる。たぶんその辺りが正解なのだろう。

(P)2010年5月 埼玉県
2015年5月 東京都 同左
2015年5月 東京都 同左 花
ワレモコウ属 Sanguisorba
標準和名 ナガボノアカワレモコウ 学名 Sanguisorba tenuifolia Fisch. ex Link var.purpurea Trautv. et Mey. 生活型 多年草 自生環境 湿地
環境省レッドリスト2015:記載なし

 本種はナガボノシロワレモコウの赤花種であり、それ以外に顕著な相違が見られない。このため、ナガボノシロワレモコウと区別せず、ナガボノワレモコウ(Sanguisorba tenuifolia Fisch. ex Link)として同一種扱いする説もある。花穂は長さ2〜7pで円柱形、萼片、雄蕊とも4で花は花の先端から順に咲く。

 関東地方ではナガボノシロワレモコウが多く、ナガボノアカワレモコウは稀で、前者の群落にごく少数の株が点在するような自生の仕方が見られる。このことから上記「ナガボノワレモコウ」として同一種とする説、ナガボノシロワレモコウの種内変異とする説にも一定の根拠があると考えられる。

(P)2015年8月 東京都
2015年8月 東京都 花穂 同左 葉

2015年8月 東京都 ピンクや白の花穂も混じる。交雑種か
標準和名 ナガボノシロワレモコウ 学名 Sanguisorba tenuifolia Fisch. ex Link var.alba Trautv. et Mey. 生活型 多年草 自生環境 湿地
環境省レッドリスト2015:記載なし

 湿地に希産する北方型のバラ科植物。分布は基本的に関東地方以北とされるが、中国地方にも隔離分布しておりこの理由はミツガシワ同様に氷河時代の分布の名残である、とされている。
 この長い名前は「長穂の白吾亦紅」であり、花穂が長く白いワレモコウ、という意味である。ワレモコウも湿地にも自生するが、場所によって混生しておりフォトジェニックな雰囲気を醸し出す。この画像を撮影した東京都港区の自然教育園にも両種が見られ、多くのカメラマンが集まっていた。

 本種は染色体数が2n=56(8倍体)と2n=84(12倍体)の2種類があり、ワレモコウとコバナノワレモコウの自然雑種である、とする説がある。一方、コバナノワレモコウはナガボノシロワレモコウの標準和名で、後者は東日本での呼称だ、という説もある。なんだか複雑でよく分からない。コバナノワレモコウに付いてはWebで調べる限り本種との著しい相違点は見られないので後者が正しいような気もする。

(P)2009年8月 東京都(自然教育園)
2013年8月 茨城県(自宅育成) 同左 独特の鋸歯
同上。根生葉の他に太い軸を出し、葉を展開する 同左 新芽

2015年8月 東京都
標準和名 ワレモコウ 学名 Sanguisorba officinalis L. 生活型 多年草 自生環境 湿地
環境省レッドリスト2015:記載なし

 全国の山野に自生するバラ科多年草。独特の花穂の形状が面白く切花としても用いられる。基本的には陸生植物に分類されるが、嫌気耐性を備えているようで湿地でもしばしば目にすることが出来る。古来から薬草としても用いられ、タンニンやサポニンを含むとされる。葉は根生葉(ロゼット)で背丈が低いが、花茎が多数分枝し1mほどに伸びる。形状としても面白い植物である。

 ショップでも鉢植を販売しているのを見かけるが、亜種か外来種か、はたまた改良品種なのか、微妙に異なる草姿のものを一律に「ワレモコウ」として販売している。購入される際には図鑑などでよく調べることをお奨めする。
 ワレモコウ、漢字変換すると「吾亦紅」となり、これが漢字和名らしいが他にも吾木香などの表記もあり、意味、由来にも諸説あってよく分からない。葉を揉むとメロンやスイカのような爽やかな香りがすることから、キク科の木香(木本、根を香水に利用)に模し、「我も木香」転じてワレモコウになったのではないか、と考えている。

(P)2009年9月 千葉県
2015年6月 東京都 成長期 同左
2015年8月 千葉県 開花期 同左

2015年8月 千葉県
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