日本の水生植物 水生植物図譜
アカバナ科 Onagraceae
(APGV:アカバナ科 Onagraceae
絶滅危惧種表示:環境省レッドリスト2015準拠
外来生物表示:外来生物法第八次指定
植物分類:APGV分類 併記
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アカバナ属 チョウジタデ属

アカバナ属 Epilobium
標準和名 アカバナ 学名 Epilobium pyrricholophum Franch. et Savat. 生活型 多年草 自生環境 湿地
環境省レッドリスト2015:記載なし

 湿地や休耕田に自生するアカバナ属の植物。チョウジタデ属の黄花と異なり薄い紫がかったピンクの花をつける。(右画像は開花後、紅葉に向かう姿)和名から受ける印象とは裏腹に非常に地味な植物である。
 アカバナの和名の由来は秋に全草が赤く紅葉することによる。ミズオトギリやタコノアシと並び、秋の湿地のアクセントである。耕作田には見られず、休耕田や自然度の高い湿地のみに自生する傾向がある。アカバナ属は水中、沈水状態での生育はせず湿生する。

 休耕田では遷移初期の植物となっており、ガマやアシなど大型の植物の影になりひっそりと咲いている。いつの間にか見られなくなるが、別の水田が休耕になると直後に現れる。

(P)2005年11月 茨城県
2006年11月 茨城県 休耕田にて 同左
2011年10月 茨城県 休耕田にて 同左
チョウジタデ属 Ludwigia
標準和名 ウスゲチョウジタデ 学名 Ludwigia epilobioides Maxim. subsp. greatrexii (H.Hara) Raven Maxim. 生活型 一年草 自生環境 水田
環境省レッドリスト2015:準絶滅危惧(NT)

 学名で分かるようにチョウジタデの亜種(subspecies)である。チョウジタデとの相違は葉や枝に細毛があり、花弁及び萼片、葯が5である。(チョウジタデは基本4)しかし後者の特徴は固定されたものではなく、同一株でも4や6のものが見られるので「概して」という特徴だ。ただチョウジタデやヒレタゴボウにはこの地域ではごく稀にしか5弁花のものは見られないので、有力な同定ポイントになることは間違いない。花弁数に加え、花弁はそれぞれが近接し、チョウジタデの花弁のような間隙がなく大型である。また、葉面主脈と側脈の窪みが深く、近似種に比べると立体的な印象が強い。(画像下左参照)

 全国的には希少な植物だが、茨城県、千葉県の利根川流域から渡良瀬付近にかけて自生密度が高い。2011年に調査した茨城県南部、取手市〜牛久市の水田や休耕田ではチョウジタデ1に対し本種が9という極端な比率の場所もあった。しかし近年のヒレタゴボウの侵入により見られなくなった場所も多く、今後の動向に注意が必要。

(P)2011年9月 茨城県
2011年9月 茨城県 休耕田 同左
標準和名 チョウジタデ 学名 Ludwigia epilobioides Maxim. 生活型 一年草 自生環境 水田
環境省レッドリスト2015:記載なし

 花後の果実の形が熱帯性常緑樹チョウジに似、草体がタデ科植物に似る事から命名された。別名はタゴボウ(田牛蒡)。水田、畦道に普通の一年草。ヒレタゴボウのように群生せず、あちこちに株が独立する傾向が強い。秋には紅葉し、水田のそこかしこに真っ赤な草体を見ることが出来る。ちなみにチョウジはスパイスのグローブのことである。

 花弁は基本4、稀に5を付ける。チョウジタデを画像検索するとなぜか5弁花のものが多くヒットするが、花弁の形が明らかにウスゲチョウジタデのものも含まれており、同定には注意を要する。確実な同定は花床の毛の有無を確認することで、蕊が落ちた後の花を見て毛がなければチョウジタデ、あればウスゲチョウジタデである。
 牧野新日本植物図鑑には、チョウジタデが花弁4枚・雄蕊4本とあり、ウスゲチョウジタデも雄蕊4本と書かれているがイラストは5本になっており混乱の痕跡が見られる。簡単なようで難しい。

(P)2003年10月 茨城県
2011年11月 茨城県 耕作田 同左
2014年8月 茨城県 花弁は4枚 同左

2015年9月 東京都
標準和名 ヒレタゴボウ 学名 Ludwigia decurrens Watt. 生活型 一年草 自生環境 水田
外来生物:外来生物法指定なし

 別名アメリカミズキンバイ。異名で分かる通り熱帯アメリカ原産の帰化植物である。ルドウィジアとしては外来生物法でアメリカミズユキノシタ(Ludwigia repens 流通名レッド・ルドヴィジア)が要注意外来生物に指定されているが、環境省Webサイト中、この種の解説で本種についても触れられており、被害実態や危険性が認識されれば早晩リスト入りすると考えられる。
 北関東では従来千葉県北部まで進出を確認していたが、近年茨城県南部でも確認できるようになった。ややチョウジタデに似るが草体は大きく4稜があって茎の断面が正方形であることで区別できる。花はミズキンバイやチョウジタデに似たルドウィジア特有の黄花で大型である。

 チョウジタデやウスゲチョウジタデと異なり大規模に群生し(下段左画像参照)、排他性を発揮する。花後の果実の形状が独特であり(中段右画像参照)和名由来のヒレ(翼)とともに特異な同定ポイントとなっている。

(P)2005年10月 茨城県
2011年10月 茨城県 花、チョウジタデより大型 同左 独特の「ヒレ」を持つ果実
2011年10月 茨城県 大規模に群生する傾向が強い 同左 チョウジタデ同様に紅葉する

2011年10月 茨城県 休耕田に群生する
標準和名 ミズキンバイ 学名 Ludwigia peploides subsp. stipulacea 生活型 一年草 自生環境 湿地
環境省レッドリスト2015:絶滅危惧U類(VU)

 大型の黄花をつけるルドウィジア。分布は極めて限られており、知りうる限り関東地方では数箇所に残存するのみ。環境省RDBでも非常に危急度の高いCRとなっている。(レッドリスト2012では絶滅危惧U類(VU))自生地が減っているのは、野池やため池などが次々と護岸され汚され埋め立てられ環境そのものが減少していることに拠るものと考えられる。
 地下茎と分岐によって次々と繁殖する丈夫な植物で、開花数が多い観賞価値の高い植物である。まさに和名通り水「金梅」である。この園芸植物的価値は「種の存続」にはプラスであると思うが、商品価値の側面は限られた自生地での乱獲を招くので一長一短があるだろう。

 増殖は次々に伸びて分岐する枝を挿し芽をするのが簡単。容易に発根し独立した株となる。水金梅の名が示す通り普通は五弁花であるが、我が家の株(水草ショップで購入)の花の2〜3割は画像の通り六弁花となる。何に起因するものかは不明。

(P)2003年7月 茨城県(自宅育成)
2011年7月 茨城県(自宅育成) 2011年9月 群馬県 水路

2015年7月 千葉県
標準和名 ミズユキノシタ 学名 Ludwigia ovalis Miq. 生活型 多年草 自生環境 湿地
環境省レッドリスト2015:記載なし

 湿地に自生する匍匐性のルドウィジア。水中でも沈水葉となって生活できる。他のルドウィジアと異なり葉は互生する。
 湿地や湖沼の浅水域に抽水植物として生育している姿を見かけるが、本種も湿地そのものの減少や、オランダガラシの侵入等により急速に姿を消しつつある。雑草然とした草姿で目立たないが、貴重な水生植物となりつつある。
 基本的には沈水葉、気中葉ともやや赤みを帯びた色となるが、日陰では緑色になることもある。光量に応じて葉緑体の量を調整する植物が存在するので同じような機能を持っているのだろう。

 「水」ユキノシタであるが、美しい花のユキノシタ(Saxifraga stolonifera Meerb.ユキノシタ科ユキノシタ属)とは似ても似つかない。花はあるのかないのか、というレベル。(下画像)

(P)2003年7月 茨城県 ため池浅水域
2011年8月 茨城県 互生する葉の様子 同左 小さく地味な花
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