日本の水生植物 水生植物図譜
アブラナ科 Cruciferae
(APGV:アブラナ科 Cruciferae
絶滅危惧種表示:環境省レッドリスト2015準拠
外来生物表示:外来生物法第八次指定
植物分類:APGV分類 併記
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イヌガラシ属 オランダガラシ属 タネツケバナ属 ワサビ属
イヌガラシ属 Rorippa
標準和名 イヌガラシ 学名 Rorippa indica (L.) Hiern 生活型 越年草 自生環境 水田
環境省レッドリスト2015:記載なし

 畦道や用水路際に普通の越年草。葉は近縁のスカシタゴボウ同様に羽状に裂けるが、裂け方が浅く、鋸歯状になることで区別できる。アゼトウガラシやスズメノトウガラシと同様「カラシ」を名乗るが、秋に結実する種子の形態が似ているだけで前2種同様芥子として利用はできない。花期はほぼ1年中であり、真冬でも日当たりのよい畔などで開花している。
 近似種にはスカシタゴボウ以外に長角果が長いナガミノイヌガラシ(種としての扱い不明)、花弁のないアオイヌガラシ、小型のコイヌガラシ(渡良瀬遊水地などに多産)、イヌガラシとスカシタゴボウの交雑種であるヒメイヌガラシなどがある。

 本種は食用となり、タネツケバナやスカシタゴボウ同様に新芽が利用される。水田付近のものは除草剤や殺虫剤がかかっている場合があるので注意が必要。

(P)2007年9月 茨城県

2011年7月 茨城県

同左
標準和名 キレハイヌガラシ 学名 Rorippa sylvestris  (L.)Besser 生活型 多年草 自生環境 湿地
外来生物:外来生物法指定なし

 ヨーロッパ原産のアブラナ科帰化植物。大正時代末に北海道で発見され、その後北海道・東北に分布を拡げたが、近年は関東地方でも見られるようになった。別名(発見時命名)ヤチイヌガラシ。
 根生葉が深く切れ込みスカシタゴボウにも似るが、基部から葉先まで羽状に深裂し不規則な鋸歯があり、全体の印象が異なる。草丈は30〜60cmになり、花期は6〜8月。

 本種は外来種に多く見られるように再生力が強く、特に根の一部からでも植物体を再生するため駆除が難しい雑草で、入り込んだ湿地では徐々に数を増やしている。スカシタゴボウやイヌガラシの生態的地位を占める可能性もある。

(P)2015年7月 茨城県

2015年7月 茨城県 ロゼット

同左 近似種と印象が異なる

2015年7月 茨城県
標準和名 コイヌガラシ 学名 Rorippa cantoniensis (Lour.) Ohwi 生活型 越年草 自生環境 湿地
環境省レッドリスト2015:準絶滅危惧種(NT)

 湿地に自生するやや稀なイヌガラシの仲間。茨城県南部では水田、休耕田には見られず氾濫原河川敷などで見られる。基部近くで分枝し、草丈は30〜40cmとなる。葉長は10cm程度までであり、羽状に深裂。印象が似たスカシタゴボウは葉長が倍近くなり、同定ポイントの一つとなる。またこの仲間では珍しく花が腋生することでも区別できる。果実にはごく短い柄があり(下右画像参照)、長い柄のイヌガラシ、スカシタゴボウと異なる。(イヌガラシは果実も長い)花期はこの属の仲間同様かなりアバウトで、春〜秋の間いつでも開花する。画像は11月の撮影。
 根はタンポポのように白い根が地中深く伸びるが(下左画像参照)、湿地植物でも撹乱地形に多いため、増水などで流されるのを防ぐためのように思われる。

 環境省絶滅危惧種に指定されているが関東各地には多くの残存があり、特に当地では開発の可能性がない地形に多いため危急度は低いと考えられる。

(P)2011年11月 茨城県 河川敷氾濫原

2011年11月 茨城県

同左

2011年11月 茨城県 草体全景

同左 果実
標準和名 スカシタゴボウ 学名 Rorippa islandica (Oeder) Borbs 生活型 越年草 自生環境 水田
環境省レッドリスト2015:記載なし

 イヌガラシと草体、生態が似ているが、本種は根生葉が羽状に切れ込むことで同定できる。(下左画像参照)また同様に葉が切れ込むタネツケバナとの差異は開花時期、花色である。ただし開花時期はタネツケバナ同様かなりアバウトで年間の大部分の時期見られる場合もある。これは水分や土壌、日照などの条件によると考えられる。
 生活史は本来アブラナ科に見られる「越年性」であるが、場合により(発芽時期により)一年草と同じ挙動も見せることがあり、このあたりもかなりアバウトである。
 和名の由来は「透かし田牛蒡」で、根がゴボウに似ていることによる。水田や畦道に一般的な一年草。黄花が密生して咲き、雰囲気はアブラナに似ている。野生ではイヌガラシとしばしば混生し、自然交雑種のヒメイヌガラシという種もある。

(P)2005年10月 茨城県

2011年8月 茨城県
切れ込みの大きい葉

同左
花穂、アブラナに似ている

2014年5月 茨城県 草体

同左 花

2015年11月 茨城県 冬季にも開花する
標準和名 ヒメイヌガラシ 学名 Rorippa × brachyceras (Honda) Kitam. 生活型 多年草 自生環境 水田
環境省レッドリスト2015:記載なし

 イヌガラシとスカシタゴボウの交雑種。両種が分布する水田地帯ではやや一般的。多年草ながら不稔で実生はしない。スカシタゴボウよりイヌガラシ的な雰囲気だが、大きく異なるのは果実で、細くて長い実がイヌガラシ、短くて太い実がスカシタゴボウだが、本種はイヌガラシの細さとスカシタゴボウの短さを兼ね持っている。つまり果実に種子が熟さないため小さい。また花も半開きである。

 植物の和名では母種よりも小型なことを示す「ヒメ」を名乗るが、雑種優勢のためかイヌガラシやスカシタゴボウよりも草体が大きい場合が多い。両種とも春の強害雑草と言われるが、本種も発生期、花期は同様である。

(P)2014年5月 茨城県

2014年5月 茨城県

同左
オランダガラシ属 Nasturtium
標準和名 オランダガラシ 学名 Nasturtium officinale R. Br. 生活型 多年草 自生環境 湿地
外来生物:外来生物法上生態系被害防止外来種

 いわゆるクレソン。おそらくは食材、野菜屑の投棄などから逸出したと思われる帰化植物。繁殖力は凄まじく、湿地に侵入すると他種を圧迫するほどの大群落を形成する。自生域も広く、平地のかなり汚れた用水路や湿地から渓流域まで確認されている。渓流域においてはキャンプ場からの逸出の可能性が強く指摘されており安易なアウトドアブームの遺産とも言うべき状況となっている。
 もともと食材であり各種ビタミンが豊富なこともあり、健康食品である。微力ながらフィールドで見かけた際には食用に持ち帰るようにしているが無力さを思い知らされる繁殖ぶりで、ある意味最も湿地への影響が懸念される植物である。

 水源に近い渓流や低水温の河川では沈水化し、こうした環境に多いバイカモなどを圧迫している。余談ながら日本で唯一のビャッコイの自生地にも繁殖しており、ビャッコイと競合している。

(P)2003年6月 千葉県 More invaderオランダガラシ

2014年5月 千葉県 花

同左

2014年5月 千葉県 群生

同左

2014年5月 千葉県

2016年5月 千葉県
タネツケバナ属 Cardamine
標準和名 オオバタネツケバナ 学名 Cardamine regeliana Miq. 生活型 多年草 自生環境 湿地
環境省レッドリスト2015:記載なし

 非常に細かく分化しており、同定が難しいタネツケバナの仲間。特に似た仲間にはオオケタネツケバナ、ミズタネツケバナ、ニシノオオタネツケバナ、コシジタネツケバナ、タカチホガラシなど多くの種がある。同定にあたっては植物図鑑・撮れたてドットコムのカルダミネの比較表、並びにoNLINE植物アルバムの本種に関する木村勝好氏、マツモムシ氏のコメントを参考にさせて頂いた。見た目では頂小葉が側小葉に比べ極端に大きく側小葉の数が少ない、という特徴があり、タネツケバナやオランダガラシと大幅に印象が異なる。

 平地の水田や湿地では見たことがなく、この画像は阿武隈山地の水源近くの渓流に生えていたものである。渓流の浅い水底から抽水するのが本種の典型的な自生形態と言われているが、まさにその通りの自生であった。この渓流は近在のセリ摘み場所でもあるが、オオバタネツケバナも山菜としては一級品らしい。あまり知られていないのか、多くの株が残存していた。

(P)2010年5月 茨城県 阿武隈山地渓流

2016年4月 千葉県

2016年4月 千葉県

2016年4月 千葉県
標準和名 タネツケバナ 学名 Cardamine flexuosa With. 生活型 越年草 自生環境 水田
環境省レッドリスト2015:記載なし

 他の多くの水田雑草と異なり晩秋に発芽、春先に開花する。この花が咲く時期に稲の種もみを水につける事が、タネツケバナという和名の由来になっている。ただし、地球温暖化の影響か、元々そうなのか不明だが、開花期はかなりアバウトで意外に長期に及ぶ。晩秋にも開花している姿を見かけることがしばしばあるほど。

 湿った環境を好む湿地植物であることは動かないが冬季の落水状態の水田で生育するために耐乾燥性を持つのか、水田から離れた道端や空き地でも見かける事がある。寒風吹き荒ぶ冬の水田にぽつりぽつりとロゼットが育つ姿は植物の強さを感じさせてくれる。ミズタガラシと同属(カルダミネ)であるが完全な水中での生育はしない。

(P)2003年11月 茨城県

2011年12月 茨城県

2007年3月 茨城県 開花

2014年4月 千葉県

同左
標準和名 ミズタガラシ 学名 Cardamine lyrata Bunge 生活型 多年草 自生環境 湿地
環境省レッドリスト2015:記載なし

 水田や湿地に自生するアブラナ科の野草であるが、水草水槽用に「カルダミネ・リラタ」と学名読みした流通名で流通する植物でもある。山地の湿地が本来の自生環境で、居住地近辺の平野部の湿地では見ることが少ない。このあたりは水田、湿地、湖岸、水気のあるところならどこにでも進出する同属タネツケバナとは対照的である。

 5月ごろ白い花を開花させるが、アブラナ科の他種よりはやや大きく目立つ花である。水田芥子、でありアブラナ科特有の食感があるが、水田等で採集したものは遅効性の除草剤を吸収している可能性があり、注意したい。

(P)2008年6月 茨城県(自宅育成)

2012年5月 茨城県(自宅育成) 開花

同左
標準和名 ミズタネツケバナ 学名 Cardamine flexuosa With. var. latifolia Makino 生活型 越年草 自生環境 湿地
環境省レッドリスト2015:記載なし

 区別の難しいタネツケバナの一種。植物体の特徴としては葉の裂片が広い、無毛で紫色を帯びない、花がやや大型、などがあるが、タネツケバナやオオバタネツケバナの変異の幅としても妥当な範囲かもしれない。図鑑によっては本種を独立させて扱わないものもある。独立させる場合は前述の特徴の通りオオバタネツケバナとタネツケバナとの中間的な形質を示す場合が多い。

 両種と区別されない場合もあるためか、当地近辺での分布状況はよく分からない。一説にはタネツケバナより水辺寄りに自生するとされるが、撮影地はそうした場所、馬蹄形の河跡湖の内側湿地である。

(P)2014年3月 茨城県

2014年3月 茨城県

同左
標準和名 ミチタネツケバナ 学名 Cardamine hirsuta L. 生活型 越年草 自生環境 湿地
外来生物:外来生物法指定なし

 ヨーロッパ原産の帰化植物。タネツケバナに似るが、タネツケバナの茎が白い繊毛が密生するのに対し本種はほぼ無毛、タネツケバナの果実(長角果)は開花位置より下にあるのに対し、本種は開花位置より上に付く(下右画像)、等の相違点がある。
 またタネツケバナは自生が水田や湿地周辺など湿地植物の性格が強いが、ミチタネツケバナはこれらの環境に加え、畑地や路傍などにも進出する。乾燥耐性があり、自生域が広い事から急速に版図を拡大しているようだ。

 国内では1988年に確認された記録があるが、タネツケバナ同様に地味で顧みられることが少ない範疇の植物なのでそれ以前から入り込んでいた可能性が強い。詳しい侵入経路や経緯は不明である。

(P)2016年3月 東京都

2016年3月 東京都

2016年3月 千葉県

2016年3月 東京都
ワサビ属 Wasabia
標準和名 ワサビ 学名 Wasabia japonica (Miq.) Matsum 生活型 多年草 自生環境 湿地
環境省レッドリスト2015:記載なし

 アブラナ科の多年草で、日本固有種である。属名は「ワサビア」種小名は「ジャポニカ」である。日本人の食文化には欠かせない有用植物である。山間部の湧水を利用したワサビ田で栽培される作物でもある。
 このイメージがあって冷水性の水生植物と思われているが、高温時の軟腐病に注意すれば庭先のプランターでも栽培可能である。理想は湧水であるが、そんな環境を庭先に持っている方はそうそういないだろう。日陰で管理し、水温が上がらないように多いときには日に2〜3回冷水で換水、そこまでやっても花は地味な白花、僅かに食料になるだけだ。以前栽培していたことがあるが、あまりの苦労に諦めてしまった。

 水生に拘らなければ畑ワサビと言って、野菜を育てる環境で栽培することが可能である。(画像のものはそうやって陸上で栽培したものである)通常のワサビを沢ワサビと呼ぶが、物の本(農文協「『ワサビ』栽培から加工・売り方まで」)によれば植物学上、まったくの同じ品種だそうである。クワイとともにスーパーで手に入る、食材として一般的な水生植物である。

(P)2010年1月 茨城県(自宅育成)
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