日本の水生植物 水草雑記帳 Invader
オランダガラシ
(C)半夏堂
Invader Nasturtium officinale R. Br.

アブラナ科オランダガラシ属オランダガラシ 学名 Nasturtium officinale R. Br.
被子植物APGW分類 同分類
  国内 生態系被害防止外来種 総合的に対策が必要な外来種/重点対策外来種

水路に大群生するオランダガラシ 2014年7月 千葉県柏市(fig1)

【オランダガラシ】
*いわゆる「クレソン」である。高級なレストランに行く機会が皆無の我が家ではさほどポピュラーな食材とは思っていなかったが、ここまで帰化が拡大しているということは世間では広く用いられている食材なのだろうか。家庭の事情はさておき、今や本種は野歩きをすれば最も目に付く外来種の一つである。これだけ拡大し防除が実質的に困難になってしまった現状で「重点対策外来種」とは具体的に何をどう、重点的に対策すればよいのだろうか。
 帰化定着は意外な場所にも及び、私の故郷である茨城県水戸市にある偕楽園の湧水水路にも繁茂している。偕楽園は行けば分かるが台地と斜面から構成される公園で他所からの流入河川もなく、オランダガラシがどうやってここまで来たのか不思議だ。また逆に、周囲に公園やキャンプ場などがない、しかも人口密度の低い純農村地帯の下手賀沼付近の水路にも大繁茂している。(上写真)不思議は不思議だが、そこにあるのは現実。どうやって「重点的に対策」するのか、真剣に考える時期に来ている外来種だ。

*初出 2016-07-16 改訂 2020-05-24

地味に要注意
■認識レベル

 本種はオランダガラシという名よりクレソン注1)という名称の方が一般的だろう。また実態もオランダガラシという水生植物の雑草よりもクレソンという名の食材の方がポピュラーだと思う。こいつが田園風景のなかで水路や池など水気のある場所に大繁茂し、今や外来生物法の生態系被害防止外来種に指定されていることなど、付け合わせのちょっと苦い野菜、という認識の前にはマイナーな知識でしかない。要するに現実の山野に広がる大問題に対して、認識レベルが異様に低い状態であると言っても過言ではない。

 それが何故か、と言うと世間一般の外来生物や植物に対する意識の水準とか、社会生活を営む上で他に気にしなければならない事が多いという優先順位の問題など色々と理由はあるだろうが、結果としては認識レベルとして非常に地味なInvaderという位置付けとなっている。
 これでは有効な対策も打てないと思うが、広く社会に問題を提起した、という選定は理解しつつも。とりあえずそれで仕事をしたというお役所官僚的な発想も何となく感じられる現状とのギャップがある。


2014年5月 千葉県柏市 水路全般に繁茂し開花する(fig2)


■選定

 ところで環境省の蛮勇としか思えない選定は何を目指してのものなのかイマイチ分からない。以前の要注意外来生物カテゴリーでの解説では「利用に関わる個人や事業者等に対し、適切な取扱いについて理解と協力をお願いするものです」とある通り取扱(運搬・飼養・売買など)に規制はかからないものの、「今後も特定外来生物の指定の適否について検討する」ものである。食材としての栽培農家、流通、消費と多くの人間が業として関わっているものに指定の意味があるのか、というと大いに疑問だ。それらを考慮しないでの選定、それらを考慮しても環境負荷を考えての選定、どちらの場合も蛮勇であると思う。(良い意味も含めて)

 本種の導入経緯は明確に分かっており、1870〜71年頃に食用・薬用として導入されてる。かなり古い時代の帰化種である。外来生物法の検討対象種は江戸期以前と明治以後で判断されているようだが、オランダガラシはちょうどそのボーダーライン上の植物だ。上記事情に加え、すでに全国に拡大して長い時間が経過している現状もあり、指定されたからと言って「今更どうする」感は否めない。
 逸出の事情も容易に想像が可能で、栽培地からの流失、流通途中の脱落、野菜屑としての放棄など各段階、どこからでも拡がって行く。この事情は1870年代も現在もさほど変わりはない。自生は平野部の水田地帯から山岳部渓流にまで及び、渓流のものは推測ながらキャンプ場のゴミが逸出源ではないか、と考えられる。逸出源もバラエティーに富んでいる。
 一説によれば日本で最初に野生化したのは、東京上野の精養軒で料理に使われた野菜屑の断片が不忍池注2)に流入し定着したものとされている。この話からも分かる通り、オランダガラシは分化全能性注3)も強く持っている。逸出源が多様、再生能力が強い、要するに世界最強の帰化植物の一つであると言えるだろう。オランダガラシにはもう一つ、世界最強があるがそれは次項で触れる。

 原産はヨーロッパ〜中央アジア。この意味では「オランダ」は当たらずと言えども遠からず、アクアリウム・プランツのオランダプラントの如き出身地詐称的植物ではないが、これだけ全世界に拡大している現状を考えれば原産地にもさほどの意味はないか。分布は南北アメリカ、日本を含むアジア全域、オセアニア、そして原産のヨーロッパ〜中央アジア。ほぼ世界全域である。

■意味不明

 毎度のことで申し訳ないが(もちろん読んでくださる方に対して、お役所にではない)公的にオランダガラシに付与された肩書きが著しく意味不明である。自分は情報発信側の端くれとして難解な表現、論理は極力使わないようにしているし、書き上がった記事も読み直してそうした部分は校正している。その意識で「肩書き」を見るとどう読んでも意味が分からないのである。ちょっと並べてみよう。

・生態系被害防止外来種
・総合的に対策が必要な外来種
・重点対策外来種
・利用に関わる個人や事業者等に対し、適切な取扱いについて理解と協力をお願いするものです
・今後も特定外来生物の指定の適否について検討する

 こんなところか。たいした文字数ではなく、今全部読んでみても何を言いたいのか分からない。感想は「で?」である。これらの「肩書き」を全部読んで該当する事象を漢字3文字で示せ、正解は「外来種」である。しかしそれ以上の回答は導き出しようがない。すなわち外来種に対して外来種である、と言っているのに過ぎない。相変わらず、と言ってしまえばそれまでであるが、たとえば公園のベンチに「ペンキ塗りたて」、家庭用洗剤に「混ぜるな危険」と書いてあるのが簡潔にして明瞭、だと思わないだろうか。ペンキ塗りたてであれば座らない、混ぜると危険であれば混ぜない、結果がどうなるのか、どうして欲しいのかも全部理解できる。
 一方、上記したような文言は、おそらく一言一句、お役所の決済ルートを通って、すなわち時間と労力をかけて出てきているのである。もちろんその時間と労力に対する賃金は税金で賄われている。はっきり言えば「それでこの程度か」と言いたくなるではないか。その理由は用語の持つ曖昧さだと思う。「生態系被害」=具体性なし、「総合的に対策」=お役所用語で何もしないということ、「重点対策」=何に対しての重点でその根拠は?、「適切な取扱いについて理解と協力」=だから何を理解し、具体的にどう協力をしろと、「指定の適否について検討する」=死ぬまでやってろ、民間企業の社内外文書ではまず通らない。もっともその際のダメだしは「お前はお役所か」なのである意味筋は通るな。

 この手の「何か出しておけばOK」という姿勢はお役所が操っている政治の世界もそうで、新型コロナ以降は騒ぐ政治家が減ったが「原発反対」という稚拙なアピール。原発が全機停止した際の影響はまったく考慮されていない。火力発電の比重が高まったことによる原油輸入増加に伴う貿易赤字、排出二酸化炭素量の増大、これは国際社会からも馬鹿にされている。要するに何か事を行う際の根拠と理由、結果としての影響まで考えてはじめてまともな施策となる。はっきり断言できるが、このカテゴリー、生態系被害防止外来種に付いての情報発信がこの程度である限り、誰も何もしない。

栄養価
■世界最強野菜

 栽培植物としての産地で有名なのは山梨県南部。山梨県はクレソンの出荷高日本一注4)であるが、このためか本種は冷水性の水生植物と思われることが多いようだ。しかし実態はそうではなく、前述のように水質悪化で有名な手賀沼注5)近辺にもある。と言うよりも水田地帯には広範に帰化している。食べる気がするかどうかは別として採集は容易、また作ろうと思えば自宅でも簡単に栽培できる。簡単に育ってしまう所がいかにも生態系被害防止外来種らしい。

 農産物として出荷されているほどなのでオランダガラシには野菜としての一定の需要があるが、実は食材として優れた栄養価を持っている。「優れた」どころか、各栄養素をスコアして総合点を算出する比較では世界最強の野菜なのである!これがもう一つの「世界最強」であるが、繁殖力が強く栄養価が豊富であるという点に注目すれば考えようによっては素晴らしい資源であると思う。どうやって防除するかという発想よりも、どうやって利用するかを考えた方が結果として正解であるように思われるが、そこは環境省と農水省の管轄の違い、縦割り行政の限界なのだろうか。


千葉県松戸市 2015年5月 小河川に進出。こういう場所のものは比較的安全に食べられるはず(fig3)


■栄養価

 アメリカ疾病予防管理センター(CDC)の機関誌「Preventing Chronic Disease」の2014年6月5日号に発表された同研究でカリウム、食物繊維、タンパク質、カルシウム、鉄、チアミン、リボフラビン、ナイアシン、葉酸、亜鉛、ビタミンA、B6、B12、C、D、E、Kの17の栄養素の含有量をもとに世界の野菜がスコア化されているが、オランダガラシは総合100点を獲得して第一位となっている。また、単に栄養があるということのみならず、含有する成分に成人病をはじめとする現代的な疾患に諸々の予防効果があるのだ。それらは以下である。

カロテンが100g中2700μg含まれる
カロテン(carotene)は強い抗酸化作用を持ち、動脈硬化や高脂血症などの生活習慣病を予防し、癌や老化を防ぐ効果があることが知られている。高カロリーに傾いた食生活が常態化している日本人にはピッタリだ。
脂肪の消化を高めるシングリンを含む
シングリン(cingulin)は辛味成分の正体だが血液の酸化防止効果を持つ。上記同様。
アレルギー物質に対抗する
アレルギー疾患の代表的存在である花粉症にどこまで効果があるか。
含まれるカリウムが余分なナトリウムを体外へ排出する。強力なデトックス効果を持つ
塩分の多い食生活には最適である。
タバコに含まれる発ガン物質のNNKを部分的に無毒化する

 驚くべきことにオランダガラシは現代の生活習慣病のほとんどに効果がある上にアレルギーを抑制する、夢のような野菜なのである。最近話題注6)のトマトを添え、エゴマで炒めてオリーブオイル注7)をかければ、ブームとして現れては消える、効果定かならぬ雑多な健康食品など足元にも及ばない逸材である。なにしろ伝聞や噂レベルではなく、エビデンスがあるのだ。
 こんな貴重な野菜がそこら中に帰化定着しているとは、逆説的に言えば「ラッキー」である。いくらでも採って食べられる。しかしいくら採っても防除に繋がらないことは自明。採って食べられない期間に圧倒的に繁茂する。採集する場合は農薬の影響のない場所で根こそぎ、が基本だ。後のことを考えずに好きなだけ採集できる、という点でも珍しい水生植物である。

帰化の道筋


繁茂するオランダガラシ 2015年5月 千葉県松戸市(fig4)

■意図的導入

 帰化植物の定義的なものとして「帰化植物は、単に国外から入った植物の意味ではなく、人為的な手段で持ち込まれた植物のうちで、野外で勝手に生育するようになったもののことである。意図的に持ち込まれたものも、そうでない(非意図的な)ものも含まれる」というものがある。(ウィキペディア、帰化植物の解説より引用)オランダガラシは前出のように19世紀に意図的に持ち込まれたものである。

 農産物として持ち込まれた植物がここまで版図を拡大し、ついに生態系被害防止外来種に指定された例は他には見当たらないが、被害程度は小規模ながらダイコンが野生化したハマダイコンなどに類似の例を求められるだろう。ダイコン自体が弥生時代に渡来した、いわゆる「史前帰化種」であるが、在来種と言ってもよいほどの歴史があり、かつ重要な農産物でもあるので比較は難しいかも。同じ「オランダ」を名乗り渡来時期も近いオランダミミナグサは、世間的な認識が薄い点、在来種を圧迫して日本全国に拡大している点で比することができるかも知れない。


千葉県市川市 2015年6月 小河川水中から立ち上がる(fig5)


■検証

 価値観も多様化の時代となり、今まで見たこともなかった野菜や園芸植物が多数栽培されるようになっている。それらがダイコンのように大人しいのか、オランダガラシのように大爆発力を内包するのか、輸入段階では誰もそこまで検証していないと思われる。当初日本の冬を越えることができないと考えられていたホテイアオイやボタンウキクサの例もある。検証していない、と言うよりも「検証できない」というのが正直な所だろう。新たな帰化植物を防止する水際作戦は難しいのが現状だと思う。難しい、という言葉は「だからできない」に容易に転換するが、もっと始末が悪いのが検証したつもり、ってやつ。古くはアメリカザリガニ、ショクヨウガエルからブラックバス、ブルーギルにいたるまで権威ある機関がそれなりに理屈を述べた上で移入している。結果はあえて書くまでもない。

 こうした例が身近な所で何かないかと探してみた所、狭い我が家の庭にも色々あった。「こうした例」とは検証されずに輸入され、大きな繁殖力を発揮している植物という意味である。まずはムラサキカタバミ(カタバミ科カタバミ属注8)、Oxalis corymbosa DC.)。まったく植栽した覚えがないが、いつの間にか庭のあちこちで群落を作っている。カタバミ属の特徴である、果実を弾けさせて種子を拡散するという増殖法も強力であるが、除草の際に地下の鱗茎を除去するのが困難で(地上部が簡単に取れてしまう)、復活スピードが速い。食べられないが防除難、除草難である点、陸のオランダガラシであると言えるだろう。
 次にハナニラ(ヒガンバナ科ネギ亜科ハナニラ属、Ipheion uniflorum)。早春、他の園芸植物が開花しない時期に開花し、庭の彩となるので放置していたが、これも地下でいつの間にか分球を繰り返し増殖している。ハナニラは園芸植物であるが、これも自分では植栽していない。いつの間にか庭に出現したものである。
 また最近フウセンガズラ(ムクロジ科フウセンカズラ属 Cardioapermum halicanabum)が多くなっている。風船状の果実の形状が面白く、種子も黒白のツートンカラーで面白いので夏のグリーンカーテン(最近は胡瓜が主)に巻き付くのを放置していたが、これも庭のあちこちから生えている。ただ、前2種と異なり抜きやすいので除草は楽にできる。

 以上、目立ったのは3種類の帰化植物(園芸植物)だが、植えた覚えはないが、あえて除草する必要もない、という微妙な立ち位置と強力な繁殖力が現在の自宅周辺の植物構成に繋がっているのだろう。これは明確な「被害」ではなく、容認するか否定するか判断すべき状況でもないように思えるが、少なくてもムラサキカタバミは生態系被害防止外来種に指定されており、個人的にも庭の邪魔者なので除草したいが、繁殖力は個人的努力を超越し、また外部からも種子が飛来するので現実的には不可能である。前述したように、どうしてこうなってからの指定なのだろうか。完全な検証は無理としても、もう少し事前の精査によって防止できると強く思うのだが。

【清流に進出したオランダガラシ】
清流への進出 東京都東久留米市の落合川 2015年6月(fig6) 同左(fig7)

数百倍ゲーム
アブラナ科特有の果実の付き方 2020年5月(fig8) 種子 同左(fig9)

■実生

 生態系被害防止外来種だ、指定が遅い、何だかんだ散々書いておいて言いにくいが実は自分でも食用に栽培している。前述のように周辺の水路や河川でも簡単に入手できるが除草剤の影響が怖いのだ。様々な健康に良い成分があると言っても除草剤がもれなく含まれていては健康もへったくれもない。自宅の環境ではそれこそ草を育てるためなので除草剤は一切使用しないし、家の敷地でも予算の関係で使用することがないので、その点では安心なのだ。
 こうして栽培していると色々なことが分かってくるが、目に付くのは前述の「分化全能性」、つまり草体の切れ端からの増殖ではなく盛んな実生という側面だ。また水生植物というイメージに反し、ある程度乾燥した場所でも育ってしまうという強靭性も感じる。オランダガラシはアブラナ科特有の果実を形成するが、一株あたり100以上の果実を形成し、それぞれに数十の種子が入っている。そして発芽率が非常に高い。よく倍々ゲームというがオランダガラシは数百倍ゲームで増殖するのだ。栽培しているものは管理下にあるものなので、不要な分は株ごと他の雑草と一緒に燃えるゴミにまとめて廃棄するが、自然下で誰も管理しない場合、非常な短期間で大増殖するはずだ。それが本稿でこれまで見てきた画像の姿である。この増殖スピードと方式を身近に見ていると、例えばfig1の下手賀沼付近の水路にしても水路を覆い尽くすまでにさほど時間はかかっていないはず。それがこの「生態系被害防止外来種」の本質である。

■生態系被害

 正直なところ、手賀沼付近も私の自宅周辺も「生態系被害」と言われてもピンとこない。水田地帯は目に付く植物はほとんど帰化植物であり、特にヒレタゴボウやアメリカキカシグサ、キシュウスズメノヒエなどが猛威を奮っている。一種類や二種類増えても今更感があるが、そうも言えない場所があるのも事実である。

 画像は静岡県三島市の源兵衛川のものだが、この河川には移入した注9)とは言え、特産のミシマバイカモが育つ。川岸を日照を遮るように育つオランダガラシと場所によっては水面を覆ってしまうイケノミズハコベ注10)は脅威であり、文字通り「生態系被害」をもたらしかねない。この地点からほど近い柿田川でも両種の存在を確認しており(意外だが水系は連続していない)、よそ者ながらこういう光景を見ると真の意味での生態系被害を実感できる。しかしここでも増え方は変わらないはずであり、何度刈り取っても短時間で元に戻ってしまうのだろう。私の居住地付近では外来種だらけ、守るべき希少植物もなく感覚が麻痺しているわけで、こうした場所に来ると脅威が実感できる。


静岡県三島市 2019年5月 市内、ミシマバイカモが育つ源兵衛川に蔓延るオランダガラシ(fig10)


 前項画像の落合川(東京都東久留米市)もさほどの危急度はないもののナガエミクリが自生しており、また東京都では見る機会が少ないミズハコベや沈水化したヤナギタデも見られる。落合川の場合、オランダガラシよりも沈水化して水域も専有してしまうオオカワヂシャの方が問題が大きいが、こちらは生態系被害防止外来種どころか特定外来生物である。一般人が勝手に手を出すこともままならない「危険物」である。たとえば町内会で防除作業をするにしても無許可では法的に困難が伴う。最も実効性が高いと思われる地域住民のボランティアが、意図したものではないだろうが外来生物法という法律が障壁となって機能しない、こんな本末転倒があるだろうか。
 乱暴な言い方かも知れないが、私の居住地付近のような「どうでも良いところ」と、本気で生態系を考えないと取り返しが付かない場所は特定外来生物にしても扱いを変えるぐらいの柔軟性が欲しい。環境省の方も見ているようなので(写真しか見ていないかも知れないが)意見として書いておくことにする。

脚注

(*1) クレソン(Cresson)はフランス語呼称だが、フランス料理に多く用いられ、この名称の方が優勢になったようだ。このためか、農水省は統一名称としてクレソンを用いている。環境省の要注意外来生物はオランダガラシ。こんな所にも縦割り行政が感じられて面白い。まさか要注意外来生物はオランダガラシなので農作物としてのクレソンは関係ないよとは言わないと思うが、縄張り意識の強い中央官庁はそういう事がありそうで怖い。いっそのことオランダガラシ(もちろんクレソン)を特定外来生物に指定し、環境省と農水省が大喧嘩を始めるぐらいであれば本気を感じるのだが。他の省庁にではなく、自然環境に「忖度」して欲しいものだ。

(*2) 東京上野にある自然湖沼。周囲約2km、面積約11万平米。池は遊歩道を兼ねた堰堤によって3分割され、それぞれハスが大繁茂する蓮池、貸ボートで遊覧できるボート池、上野動物園の敷地に組み込まれている北部の鵜の池(カワウが繁殖している)と呼ばれている。堰堤で結ばれた池中央やや東寄りには弁才天を祀る弁天島がある。今や観光名所にもなっていて隣接する恩賜上野公園ともども外国人観光客の姿も多い。
 都会の湖沼らしく水質はあまり宜しくない。見るべき水生植物もなく、個人的にはあまり興味がないが、水鳥の飛来も多く、また歴史的な石碑も多数あるので、そちら方面の趣味の方には興味深い場所かも。また、娘が池の向こう側の国立大学に通っていた関係で通学ルートにもなっていたが、路上生活者も相変わらず多く、夜は治安が悪そうだな、と思った。

(*3) 本来葉の欠片は「葉の細胞」、茎の断片は「茎の細胞」であるはずだが、そこから根や芽が出て独立した植物体となる。この現象は植物体を形成するすべての細胞種へ分化可能だからで、この能力を分化全能性という。動物の場合、自然状態では受精卵しかこの能力を持っていない。が、STAP細胞の発見によって再生医療や新たな美容整形に道が拓かれた・・・と思ったら論文の取り下げやら自殺者やら大変な騒ぎになっているようだ。結局は捏造という悲しい結末になってしまった。しかしあれがちょっとしたビジュアルの女性研究者だからあの程度で済んだような気がするが、私のように小汚いオヤジだったらもっと責められたような。何だかんだ言っても世論はけっこう差別を行う。

(*4) クレソンの出荷は62%(2010年)で山梨県がダントツ1位である。2位が沖縄県の10%(同年データ)なのでほぼ独占状態と言っても過言ではない。なかでも道志村は人口2000人に満たない小さな村だが、日本有数のクレソンの産地である。ちなみに最近流行りの「ふるさと納税」。娘がしゃれで道志村に納税し、謝礼は絶対クレソンだぜ、と言っていたが送られてきたのはジャムのセットだった。クレソンは自給自足できるのでその方がありがたいが意外性があって面白かった。ふるさと納税にはまってしまうかも知れん。

(*5) ご存じ水質汚染全国ワースト・ワンを長年続けた千葉県の湖沼。近年利根川から注水し、汚染を薄める北千葉導水路が稼働し、水質はやや改善している。元々は大きな沼だったが干拓が進み、我孫子市や柏市にまたがる手賀沼と、干拓地を挟んだ下手賀沼が残存する。ちなみに当記事の画像、1枚目と2枚目はこの手賀沼と下手賀沼の間の干拓地の水路で撮影したものである。
 水草のガシャモクの有名な産地であったが現在はもちろん見られない。近年国土交通省の工事による攪乱で休眠種子が目覚め復活したが、水質やザリガニの影響ですぐに見られなくなっている。この時の株は我孫子市の「水の館」などで系統保存されている。また森島先生(「車軸藻」のページ、千葉県立高校の先生)が底泥から復活させた絶滅種の藻類、テガヌマフラスコモなど、湖沼の名称を冠した植物もある。

(*6) 最近教養ベースのTV番組の多くで、健康食材として、トマト、ヨーグルト、納豆が3種の神器として登場することが多い。過去モロモロ登場した有象無象の食材と異なり、この3種は科学的根拠もあって効能が確からしい。という事で我が家の食卓には毎日このうち最低2種が登場する。そのためか、私は血圧検査の度に「見かけと数値」のギャップに驚かれる。発酵食品の効果は以前から知られていたが、トマトは近年注目を集めている「リコピン」を多く含み、強力な抗酸化作用によって生活習慣病の原因を抑制する。また、リコピンは悪玉コレステロールを分解するということで、どちらかといえば苦手な食材だったが最近ではコーヒーの代わりに食塩不使用のトマトジュースまで飲むようになった。

(*7) エゴマ油にはオメガ3脂肪酸の一つ、αリノレン酸が含まれ、体内に取り入れるとEPA、DHAに変わる。EPA、DHAはうつ、老化、認知、血栓、ガンを予防しダイエット効果があることが分かっている。というTV番組の翌日、スーパーからエゴマ油が消えていたので私と同じように「踊らされる」人々が多かったようだ。日本人は昔から踊らにゃ損、という体質なので仕方がないが、その後の陳列棚の状況を見ると短期間で飽きられたようだ。こういうのは習慣化してはじめて効果が出るものなので飽きるぐらいなら最初から踊らなきゃいいのに、と思ってしまった。
 またオリーブオイルは同様にコレステロールの低下、抗酸化作用、ダイエット効果、美肌作用などがあるらしいが、こちらはスーパーから消えておらず、庶民の食生活では登場機会が限られることが推測される。簡単に言えば私の食生活でもどう使って良いか分からない。また多用するスペイン人やイタリア人の平均的体形を考え「過ぎたるは及ばざるが如し」という格言も脳裏に・・・。

(*8) 当記事での植物分類はAPGWによる。ちなみにハナニラが属するヒガンバナ科ネギ亜科は従来分類ではユリ科に属し、またAPGUではネギ科として独立していた経緯がある。ハナニラはやたら群生するので開花期は見応えがあるが、開花期以外はニラの畑のようで味気ない。しかし「スプリング・エフェメラル」なので晩秋から冬まで休眠し、他の園芸植物とバッティングしない、ということもあって存在を許容されている。まさにスプリング・エフェメラルとしての狙い通りである。

(*9) 三島市内源兵衛川のミシマバイカモは過去繊維産業による地下水の大量消費や生活排水の流入によって絶滅している。現在見られるものは柿田川から移入されたものである。ミシマバイカモの「ミシマ」は三島市、しかし柿田川は清水町なので厳密には羊頭狗肉、やや情けない話であるが、トキにしたって国内では絶滅し、中国から借りた生体で増やすとか飛ばすとかやってるじゃないの、同じ種類なのでドンマイ、ってところか。しかしこの話は生物の地域性を無視している匂いもして全面的に賛同は出来かねるが、三島市と清水町は徒歩で行ける距離なので許容範囲か。

(*10) 主に東日本に帰化定着しているヨーロッパ原産の植物。ミズハコベに似るが、ミズハコベのように線型の沈水葉を出さず、浮葉とほぼ同型である。侵入経緯ははっきりしないが、山梨県のクレソン栽培でクレソンの株を輸入した際に一緒に付いてきた、という説が有力である。東日本では山梨県の他、静岡県や栃木県の湧水河川で確認されている。


【Photo Data】

・RICOH CX5 *2014.7.5(fig1) *2014.5.20 (fig2) 千葉県柏市
・SONY DSC-WX300 *2015.5.27(fig3,fig4) 千葉県松戸市 *2015.6.4(fig5) 千葉県市川市 *2015.6.17(fig6,fig7) 東京都東久留米市
・PENTAX WG-3 *2020.5.17(fig8,fig9) 茨城県取手市(自宅栽培)
・SONY DSC-WX500 *2019.5.5(fig10) 静岡県三島市


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