日本の水生植物 水草雑記帳 Feature
トウゴクヘラオモダカ
Photo : PENTAX OptioW90  RICOH CX4,CX5
 Canon PowerShotA2300
(C)半夏堂
Feature Alisma rariflorum Samuelsson

オモダカ科サジオモダカ属トウゴクヘラオモダカ 学名 Alisma rariflorum Samuelsson
環境省レッドリスト2012 絶滅危惧II類(VU)
葯の色
 この「変わりヘラオモダカ」を探し始めて数年経過した。運良く何箇所かで発見できたが、私が発見できるぐらいなので本当に絶滅危惧II類(VU)かな?と思うこともある。一方、本種を特徴付ける葯は褐色ながら花芽の第一分岐が3以上、という正体不明の株もあって情報を整理しておかないと混乱してしまう状況もある。

 トウゴクヘラオモダカを特徴付ける第一のポイントは「葯」の色である。花の構造や種類は文系理系問わず中学で習ったはずだが、大多数の人々同様義務教育の内容も今ではかなり記憶が怪しく、最初は「葯って・・何だっけ」という状態だった。葯は「やく」と読み、要するに「おしべ」のことだ。概ねどういうものかは朧げに記憶はあったが、通常のヘラオモダカの葯って何色だっけ?と図鑑や写真を探し始める始末。幸いなことにオモダカ属と異なりサジオモダカ属は雌雄同花、画像が残っていれば葯の色は確認できる。めでたく「何をどう調べれば良いか」という事が分かりやっとこさ調べ始めることができた。
 余談ながら花の構造や種類は最低限押さえておきたいポイントで、オモダカ科の場合、雌雄異花と雌雄同花はオモダカ属とサジオモダカ属の分岐点になっている。私が植物初心者の頃から愛用している図鑑「野山の花」(近藤篤弘・近藤陽子著 徳間書店)はちょっとこの辺が如何なものか?という部分があり、掲載されているヘラオモダカの写真は単性花(雌雄異花)、おそらく外来種のナガバオモダカである。ちなみに次のページのサジオモダカも単性花で、日本の植物ではないような気がする。素人ならいざ知らず、1冊1500円、シリーズ3冊で4500円で買っているので読者として納得し難いものもある。あえて苦言を一発入れておく。

 さて、人生50年、遠足前夜症候群がいまだに続いており、もはや性格の一部になってしまった私は「明日探査する」と決めると前夜から興奮し、当日は早起きして探し始める傾向がある。結果、見つかったヘラオモダカはすべて開花しておらず、時期が早いのかな?と二度手間三度手間を繰り返すこともあった。何が間違っているのか分かる方は達人(*1)。そういうこともこういうことも事前知識として持っていないと探査が無意味、なかなか手間のかかる奴なのだ。しかも・・これまで過去の記事で触れたように、花芽第一分岐が2、草体が小型という特徴を併せ持ってはじめて「トウゴクヘラオモダカ」なのである。現場で調べるポイントが複数あるのだ。手強い。

 その葯の色だが一つ、興味深い現象を発見した。ヘラオモダカの情報提供でお世話になった兵庫県の鈴木様から「環境省のレッドリストでは、ホソバヘラオモダカの葯は褐紫色、トウゴクヘラオモダカの葯は褐色と色の違いを強調しているように思えるのですが、実際どうですか」というご質問を頂き、写真やら実物やら調べて大差がなかったのでその旨ご回答させて頂いた。(*2)

 しかし、実は同じ花でも葯の色が刻々と変化していたのである!これは見る時期によって異なる印象となるので十分な注意が必要だ。上画像と右画像は同じ花の画像。(自宅育成株)上の花の葯の色は?と聞かれれば黒褐色と答える。しかし右画像のものは茶褐色だ。
 トウゴクヘラオモダカの葯は褐色、という頭があり、文献資料にもそう書いてあるので信じ込んでいたが、どうも開花直後、花粉放出前は黒褐色、花粉が出ると茶褐色(右画像は葯の周囲に付着している花粉が確認できる)に変化するようなのだ。(*3)
 どっちみち褐色、ヘラオモダカ(狭義)の黄色と比較すれば違いは一目瞭然なのだが、鈴木様と私、日本全国で約2名の葯中毒患者にとっては重要なことなのだ。これを見たいために真夏の湿度MAXの田んぼで挙動不審者になっているのだから。


(P)2013年6月 自宅育成株(2枚とも) 上画像と下画像は数日違い、下画像、2つの半葯とも茶褐色に変化し、周囲に黄色い花粉が付着している。

花芽第一分岐と草体の大きさ

 本種を特徴付ける第二のポイント、花芽の第一分岐。第一分岐とは縦方向に伸びてきた花芽が最初に横に分岐する場所、すなわち地表に最も近い分岐である。ヘラオモダカ(狭義)は通常数分岐するが、トウゴクヘラオモダカは二分岐と言われている。これには諸説あり、紛らわしいのがトウゴクヘラオモダカの花芽第一分岐は2または3というもの(*4)。ヘラオモダカ(狭義)が3以上とされているので、では3分岐のものはどちら?ということになる。こういうグレーゾーンは本来決定的な同定ポイントにはならない。しかし実際問題として花芽第一分岐が3のヘラオモダカ(狭義)は見たことがない。この問題を考える前にヘラオモダカの3分岐があるかどうか、という事が問題になると思う。今までの所、多数の株を見た結果「ない」と断言しても良いように思われる。
 前項のポイント、葯の色で判断ということになるが、フィールドでは4〜5分岐し、かつ葯が褐色のヘラオモダカも発見している。従ってこの同定ポイントは参考程度と考えた方が良いのではないだろうか。もともとこういう「亜流」ヘラオモダカの存在が悩みの種となった経緯があるので、突き詰めるとドツボにはまるだろう。

 画像の株(千葉県八千代市産育成株)は草姿、葯の色が典型的なトウゴクヘラオモダカの特徴を現し、花芽分岐も2である。しかし時間の経過とともに分岐の根元から弱い分岐、すなわち太い軸状にならずそのままヒョロッと伸びて開花する分岐が1〜2枝出る。これをカウントするかしないかで話は大きく変わる。
 画像の株、個人的にはトウゴクヘラオモダカと確信しているが「花芽第一分岐は2、絶対」という同定ポイントが正であれば、ヘラオモダカsp.になる。関東東北で何箇所か発見した本種、具体的には福島県、栃木県、千葉県の「トウゴクヘラオモダカ」はすべて基本分岐(太い軸状)の他に弱分岐を持っていた。完全な二分岐は花芽を上げた直後、早い時期に見ただけだ。
 不調法ながら、というか信憑性に疑問符を付けつつも(*5)ネットで画像検索をしてみると、栃木県産トウゴクヘラオモダカ東京都産トウゴクヘラオモダカの各画像、完全な二分岐には見えない。現状言えることは「トウゴクヘラオモダカの花芽第一分岐はヘラオモダカに比して少なく、2〜3の場合が多い」程度か。

 続いてのポイント、草体の大きさ。これも当初は懐疑的だったが、トウゴクヘラオモダカはヘラオモダカより確実に小さい。草本植物の「大きさ」は生育環境に左右されやすく、たまたまかと考えていたがヘラオモダカ(狭義)と環境をあわせて3年間育成してみたがトウゴクヘラオモダカは確実に小さい。生育不良でないことは花芽を元気に伸ばして多くの花を付けることで分かる。逆にこれだけ小さなヘラオモダカ(*6)(狭義)が開花している姿を見たことがない。もちろんヘラオモダカ中毒者なので各地で数千株は見た上で、だ。


(P)鉢は5号、草丈10cm前後で開花 2013年6月 自宅育成

自生地に付いて

 画像は・・・何が何だかわからんと思うが、上の画像の株2年前の姿。休耕田で有象無象の水田雑草に埋もれて生えていたが、花が点々と咲いていたので分かったのだ。周囲の細い葉はイヌホタルイである。イヌホタルイの背丈のイメージが分かれば、なるほど5号鉢サイズ、とご理解頂けるだろう。

 トウゴクヘラオモダカは一説によれば水源近く、棚田奥(これも湧水近く「水源」か)などに自生するとされる。はじめて本種を見た福島県白河市ではたしかに棚田最奥、要するに最上段にあり水源は湧水のようだった。しかしこの記事の写真の草体は平野部の真ん中、千葉県八千代市の休耕田産である。ちなみに水源は神崎川というやや汚れた一般河川、まったく状況は異なっている。周囲は棚田どころか180度山陰は見えず、運と天気が良ければ東京スカイツリーが見える大平原である。
 もう一つ事例を。以前の記事で触れた千葉県松戸市産のヘラオモダカは今から思えばトウゴクヘラオモダカだろう。当時は第一分岐に引っ張られ過ぎて、葯の色まで確認しながらどうしても確信が持てず判断できなかった。
 この分布状況であるので、トウゴクヘラオモダカは必ずしも山間部棚田、湧水付近と自生地を限定したものではないと思う。調べれば平野部の水田でもまだまだ発見できる可能性がある(*7)

 左は松戸市のヘラオモダカ。草体はヘラオモダカ(狭義)に比して極端に小さく葯は褐色(*8)であった。しかし花芽第一分岐が3以上あり、確信が持てずに判断を保留した。文献・ネットではまったく触れられていないのだが、トウゴクヘラオモダカは花芽第一分岐の「主軸」が2なのではないだろうか。主があれば当然従もある。

 さて、そろそろトウゴクヘラオモダカの同定ポイントに付いて結論を出そうと思う。色々な同定ポイントがあり、花芽第一分岐のようにグレーゾーンの部分もあるが、現時点で確実なのは小型草体で葯が褐色であること、だと考えている。逆にヘラオモダカ(狭義)でこれほど小型草体は見たことがないし、八千代市から連れて来た株が「休耕田、他植物に包囲され」から「鉢植え、荒木田、単植」に条件変化しても表現型に変わりがないからだ。環境適応による変化がなく、同じ表現型を継続するということはすなわち「形質」に他ならない。
 ヘラオモダカ(狭義)でこれだけの小型株(もちろん葯は黄色)があれば考え方も変わると思うが、どちらにしてもヘラオモダカには多くの表現型の組み合わせがあるはずで、興味が尽きない植物だと思う。


(P)上 千葉県八千代市休耕田 2011年7月 下 千葉県松戸市公園 2012年8月


【「主」の2分岐と「従」の弱分岐】
弱分岐例1。自宅育成株の花芽1本目、分岐枝から直接蕾が出ている。
2013年7月 自宅育成株

弱分岐例2。自宅育成株の花芽2本目、分岐枝から更に2分岐した。
2013年7月 自宅育成株


【自生地に関する追記】2015.8G

 本稿公開以降、数箇所でトウゴクヘラオモダカを発見し、自生地に付いて確信を持てたので情報整理を兼ねて追記しておくことにする。一般に出回っている情報として、ヘラオモダカは平地の水田、トウゴクヘラオモダカは谷津田の奥など水源近くに自生する、というものがある。同様の話でタタラカンガレイは平地の水湿地、カンガレイは谷津田奥や湧水源近くに自生する、という話もあるが、結論を言えばこうした類型化はあまり意味がない。
 トウゴクヘラオモダカもカンガレイも水温や水質、日照条件にキャップ条件はなく、自宅の環境で容易に育成できるという植物生理学的側面な点がひとつ。つまり必ずしも環境に特化した植物ではない。また両種ともどちらの環境でも見られるというフィールドワーク的側面が二つ目の根拠である。トウゴクヘラオモダカに付いて、これまで発見した地形をまとめたのが下表である。

No. 地形タイプ 地形 発見地 備考
1 谷津田 谷津田最奥、湧水源近く 茨城県石岡市 鉄分を含む鉱泉質湧水(下画像を参照) 2015.7
2 谷津田 谷津田最奥、湧水源近く 福島県白河市 2009.8 探査記録 Vol.71 南みちのく紀行〜白河の関編に記述
3 谷津田 水生植物園、湧水源近く 茨城県水戸市 2013.8 探査記録 Vol.128 東国の箆に記述
4 谷津田 谷津田最奥、湧水源近く 茨城県水戸市 2013.8 探査記録 Vol.128 東国の箆に記述
5 平地 休耕田 千葉県八千代市 2011.7 本稿記述
6 平地 耕作水田(公園内) 千葉県松戸市 2012.8 本稿記述
7 平地 耕作水田 千葉県我孫子市 2014.9 水草雑記帳FieldNote ヘラオモダカ変異種Part3に記述

 発見地のパターンを見ると、トウゴクヘラオモダカは谷津田の奥など水源近くに「」自生すると言い換えた方が良さそうだ。逆に谷津田最奥湧水源の環境ではヘラオモダカ(狭義)は見られず、現時点では「逆は真」、つまり「ヘラオモダカは平地の水田に自生する」結果を裏付けるものとなっている。


【湧水源近くのトウゴクヘラオモダカ】
2015年7月 茨城県石岡市 湧水は鉄分を多く含んでいるようだ 同左 湧水が流れる斜面に群生する珍しいパターン
2015年7月 茨城県石岡市 花芽第一分岐 同左 周囲にはオニスゲ、ドクダミ、イヌスギナ、コケオトギリなど

【分布に関する追記】2015.8G

 本コンテンツ、FieldNote「ヘラオモダカ変異種Part2」で触れたように、トウゴクヘラオモダカの特徴を持つヘラオモダカが岡山県で見つかっている(*9)。同記事及び関連記事で記したように、個人的にはヘラオモダカの表現型は様々で(遺伝的多型)、これをトウゴクヘラオモダカという種として断定し切れていないが、特徴だけを見る限り「種としてのトウゴクヘラオモダカ」と同定するに吝かではない。というか、植物を同定する上での「要件」が揃っている以上、そうすべきだろう。
 トウゴクヘラオモダカの自生地と分布に付いて情報を整理していた時に、広島県在住の小田様という方から「変種のヘラオモダカ」という題で、広島県で見つかった変種のヘラオモダカの画像が添付されたメールを頂いた。画像を拝見すると(1)褐色の葯(2)花芽第一分岐が2、という要件が揃っており、写真では判断が付かない草体の大きさも膝程度の高さであるという。これも要件が揃っており、トウゴクヘラオモダカとしても問題はないと思う。またその後のやりとりで、広島県トウゴクヘラオモダカの標本が収蔵されている(*10)という情報も頂いた。
 岡山県に続き広島県、そして九州にも一部自生があるという情報もあり(ただし未確認)、トウゴクヘラオモダカは西日本にも自生すると判断しても良いと考えられる。アズマツメクサの「アズマ」、トネハナヤスリの「トネ」パターンの話であるが、まだ研究が進んでいない本種だけに自生地を限定して考える必要もないだろう。


【広島県のトウゴクヘラオモダカ】*以下画像の著作権は小田様に属し、二次使用のご許可を賜り本サイトに転載しています
葯の色は褐色 花芽第一分岐は2
草体 同左

脚注

(*1) ヘラオモダカ(トウゴクヘラオモダカも含み)の開花時間は昼前後であり、午前中早い時間には開花していない。すなわち葯の色は確認できない。遅い時間に開花する湿地植物は他にもあって、有名なところではヒツジグサ。未の刻(午後2時)にならないと開花しない。またミズオトギリは午後3時ぐらいにならないと開花しない。こうした特性を頭に入れないと写真撮影もままならないのだ。ヘラオモダカのような雑草はマニアな知識すぎて誰も教えてくれないので身をもって学習しないといけないのである。

(*2) トウゴクヘラオモダカの葯の色の表現に付いて、産地である福島県の文献「ふくしまの水生植物」では「縁に粗大欠刻のある大きな花弁をもち、葯が紫褐色を呈する」とあり、環境省の表現とニュアンスが異なる。というか、鈴木様のご質問にあるホソバヘラオモダカの葯の色と表現が同じである。色表現に付いては多分に主観的なものも含まれ、時期によって色が微妙に遷移(以下脚注参照)することもあるので、単に「褐色」と括っても問題ないと考えている。
 ちなみにネットに掲載されている画像では微妙な色は判断できない。それはデジカメとレタッチの問題で、撮影素子がCCDかCMOSか、画像改造エンジンのチューニングがどうか、レンズの特性がどうか、色々な要素で変化するし各社各機種各様、それをユーザーの「好み」でレタッチすれば、ほぼ実物の色に再現することは難しい。あくまで参考程度(この記事の画像も含め)と捉えたい。

(*3) 同じ「褐色」でもトウゴクヘラオモダカの葯は花粉放出前、放出中、放出後で微妙に変化する。ただ後述する松戸市の株とは異なり、開花期間を通じて黄色になることはない。逆にヘラオモダカ(狭義)は褐色の時期はないので明瞭な同定ポイントになると思われる。(例外あり、リンク記事参照)

(*4) 本種の自生が多い栃木県の「レッドデータブックとちぎ」では「花序の第一節目の枝が通常2本であること」としている。通常2本とはまた微妙な表現だが、ソースによっては2本または3本としているものもあって悩ましい。「日本水草図鑑」では2本(稀に3本)と表現しており(P17)各者各様、グレーゾーンとなっている。実物を観察し続けた結果、太い主軸の分岐は2本、後に同所から細い分岐が数本出る、というのが正解のような気がする。

(*5) そもそもこの記事もインターネット上に発表するための記事であって、ネット記事の信憑性に疑義を呈示しているわけではない。ただし本種に限っては「花芽の第一分岐は2」と提示するのであれば明瞭に判別できる写真を付けるべきだと思う。モノによっては「葯が褐色」と言い切りながら花が判別できない写真を付けているものも多い。あまりポピュラーではない植物なので、ネットで調べる方も多いはず。そりゃあんまり不親切ではないかい、ってことです。

(*6) 私は見たことがないが、本文中でご紹介した鈴木様からご報告頂いた例がある。トウゴクヘラオモダカの分布には定説らしきものがない。(上記「日本水草図鑑」では、分布するとされる九州の分布を疑問視しているほど)兵庫県や岡山県にあっても何の不思議もない、と思う。
 ちなみに画像の植木鉢は5号である。園芸になじみがない方にはピンと来ないかも知れないが、1号は直径3cm、2号で倍になるので5号は5倍、すなわち直径15cmの鉢である。普通のヘラオモダカは(私は鉢で育成しているが)7号以上ないと窮屈な大きさだ。

(*7) インターネット自然研究所のWebサイトには本種の自生メッシュがあり、千葉県の平野部にも点々とマッピングされている。湧水、水源地という自生地情報は「たまたま」だと思う。少し形質が違うだけで基本的にはヘラオモダカ、水田雑草であってスギナモやバイカモのような自生地環境にあるわけではない。

(*8) ヘラオモダカの記事が掲載されていた「松戸の自然」(現在は閉鎖されている模様)には、開花直後黄色の葯が褐色に変化する、とあった。記述された場所を自分でも数次訪問し観察したが、葯はすべて褐色であり黄色は観察できなかった。黄色から褐色に変化する葯を持つヘラオモダカが実在すれば、また悩ましきヘラオモダカに仲間が増えることになる。

(*9) 兵庫県の鈴木様からの情報及び画像による。(本Webサイトヘラオモダカ変異種Part2を参照)広島県のもの(小田様撮影)もそうだが、自分で実物を見ている東日本産の株に比べて草体各部の線が太いような気がするが、これは使用したカメラの差(最近のデジカメはメーカーによってこの部分がかなり違う)であると思われる。

(*10) ただし県博レベルの収蔵品に信憑性が薄いことは、ヒメタデでお世話になった栃木県の長島様がヒメタデとヌカボタデの収蔵品を調査されて誤りを見出した通り。植物標本は色を保持できないのが弱点で、特にトウゴクヘラオモダカは葯の色が同定の第一歩であって、標本でも残る花芽第一分岐が2、という草体の特徴も、葯が黄色いタイプもあることは筆者(私)が発見済み。(本Webサイトヘラオモダカ変異種Part3を参照)


【参考文献】
・日本水草図鑑 角野康郎 文一総合出版 P16〜P19
・ふくしまの水生植物 薄葉満 歴史春秋社 P103
Feature Alisma rariflorum Samuelsson
日本の水生植物 水草雑記帳 Feature
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