日本の水生植物 水草雑記帳 Feature
スズメハコベ
(C)半夏堂
Feature Microcarpaea minima (Koenig) Merrill
公開:2015-07-05
改訂:2019-09-22


ゴマノハグサ科スズメハコベ属 スズメハコベ 学名 Microcarpaea minima (Koenig) Merrill
環境省レッドリスト2017 絶滅危惧II類(VU)

撮影 2010年8月 茨城県南部 ホシクサ、キクモ、キカシグサ等と混生(fig1)

【スズメハコベ】
*その名の通り小型で湿地地表面を這うように生育する一年草。当地では水田や休耕田に稀産するが、本種を意識して探さないと他種に紛れて見つからない。一方、何かの拍子に休耕田一面、本種が占有するほど繁茂することがあり、動向がよく分からない点も本種の特徴である。小型で柔かい草体はいかにも除草剤に弱そうなイメージであるが、危急度の高い絶滅危惧種に追い込まれているのは農薬が原因なのだろうか。
 環境省のメッシュでは本県(茨城県)には該当がないが、県最南部に近い自宅周辺の水田・休耕田には存在する。周辺には外来種のミソハギ科がいち早く出現したり、正体が良く分からない植物(本Webサイトでは「ヒメキカシグサ」として仮同定)が自生したり、トワイライトゾーンのような場所となっており、どこか遠隔地から客土のような形でまとめて来た可能性も否定できない。

推定未調査
■手抜きか調査もれか

 犬も歩けば棒に当たるというが、地元の休耕田を歩いていた時に思いがけず、というか全く予想もしない状況で唐突にスズメハコベを発見した際にはアドレナリンMAX、炎天下の水田地帯で倒れてしまうのではないかというぐらいの衝撃を受けた。(少し大げさか)長年憧れの植物であったのと、地元には分布しないはずの植物であったからだ。いずれ機会があれば和歌山や宮崎など自生地に見に行きたいとまで考えていた希少種が、何の前触れもなくいきなり足元に出現したのである。日頃驚きも感動も少ない自分だが、植物を趣味として以来、掛け値なしに感動したのはこれだけだ。

 極め付きの希少種、サワトラノオやビャッコイ(どちらも国内自生地は1〜2箇所)を見た時にもそれなりに感動はしたが、それは「ある」と分かった上での出会い、予定の結末であって本質はまったく異なる。スズメハコベよりは衝撃度は落ちるが、これまた長年発見できなかったミズマツバを地元の水田で見た際の感動に近い。これまでどちらも見過ごしてきたわけではなく、ある時唐突に出現したものである。これは稲作を巡る行政の混乱で結果として除草剤のコストが削られたことに原因が求められると思う。


(P)2010年8月 茨城県南部 休耕田で自生(fig2)


■情報不備の理由

 初めてスズメハコベを地元で発見したのはかれこれ10年ほど前だが、当時の環境省「日本のレッドデータ検索システム」では鹿児島県から栃木県にかけて12県に自生、我が茨城県には存在しないことになっていた。現在では調査が進んだのか全国28都道府県で絶滅危惧種、茨城県、岐阜県、鹿児島県で情報不足、大阪府で絶滅、福島県で「その他」となっている。(詳しくは日本のレッドデータ検索システムを参照)ちなみに「情報不足」という表現は考えもので、実態が分からない。少しは存在するが調査が行き届いていないのか、調査自体を行っていないのか、はっきりしてくれ、という所。「その他」はさらにワケ分からん。お役所仕事の修辞的表現と言ってしまえばそれまでだが、内容はともかくせっかく調査して公表するのだから表現は考えて欲しいものだ。

 この「Feature」の記事群で何度も触れている通り、個人的にはRDBもレッドリストも調査方法と対象に大きな疑問がある。しかしさすがに中央官庁が所管するデータに捏造はない注1)と信じているので、ある程度の目安にはさせて頂いているのだ。その「目安」が「ない」と示しているものを、もしかすると地元にあるかも知れないと考えるほど夢見がちな年齢でもない。「目安」が「ある」と示したものが無くなってしまうのはよくある話、しかし経験上「ない」とされたものを発見したのはこれだけである。発見は僥倖以外の何者でもなかった。忘れた頃の一発、は野歩きの大きなモチベーションだが、それを実感したのがこのスズメハコベなのである。

 こうした公的機関による調査結果の「揺らぎ」は何となく理解はできる。本シリーズに掲載し、大きな揺らぎがあると感じているアズマツメクサにしてもこのスズメハコベにしても存在が小さすぎるのである(物理的に)。これらのみにフォーカスして探しても発見が難しいのに、数多の絶滅危惧種の一部として片手間で調査しても実態が分からないことは十分に理解できる。そして調査が行き届かない理由、評価の不確実性が高まる理由は大きく2つあると思う。


(1)自生していたとしても他の植物に被覆され、発見しにくい。また耕作田であれば稲の生育中は水田内部を調査できない
(2)主に水田に自生する植物であるため、国内に存在する膨大な水田をすべて調査するわけにはいかない


というものである。事情はもちろん理解できる。しかし事情は事情、であればなぜ絶滅危惧種〇類、と判定できるのか、そこが理解できないのである。評価を公表した瞬間にその評価は事実となる。これは公的機関としての宿命だ。ブログやWebサイトなどネット情報を収集し加味しているのであれば信憑性はさらに低下する。もちろん私は自分の見たものを写真に撮って率直な感想を文章にしているので自分の作成した記事は信用できる。しかしこれも他人から見ればどこで撮った写真やら注2)、ってところだろう。ネット情報は便利だがすべてを信頼できない点がネック。というか絶滅危惧種に関して自生地情報を含めてすべて素直に出されてしまうのも困るけど。
 というわけでこの植物に関しては自生や危急度に関してまだまだ未調査の部分が大きいと考えている。私は以前の「12県」の分布情報から、スズメハコベの来歴に付いてある仮説注3)を持っていたが、最新の情報を参照すると正直よく分からなくなってしまった。もろもろモノを考えるベースとしての情報、現状を勘案すれば望むべくもないが、可能な限りの正確性を期待したい。

減少理由



休耕田一面に広がるスズメハコベ群落 2010年8月 茨城県南部(fig3)


■人間都合

 今更ながら水田や水辺に自生する小型の雑草は雑滅危惧種になっているものが多い。本種スズメハコベしかり(絶滅危惧II類(VU))、ミズマツバしかり(絶滅危惧II類(VU))、アズマツメクサしかり(準絶滅危惧(NT))、他にもオオアブノメ(絶滅危惧II類(VU))、マルバノサワトウガラシ(絶滅危惧II類(VU))など多くの植物が絶滅危惧種となっており、事実見かける機会も少ない。
 他種はともかく、本種スズメハコベに付いては発見から10年ほど、定点観測に近い形で栄枯盛衰を見続けてきたおかげで減少理由が何となく分かったような気がする。冒頭に書いたようにスズメハコベは極めて小型の水田雑草である。しかし水田雑草であるが故に周囲を覆い尽くす程の大型雑草、すなわち致命的な天敵の存在を人間が排除し、稲が植栽されていない畦際で命を繋ぐことができる。しかしこの状況が人間の都合によってドラスティックに変化しているのだ。

 人間の都合とは何か?本Webサイト探査記録Vol.131 乱舞の種に書かせて頂いた通り、就労人口の高齢化と農業政策である。細かい説明は重複となるので避けさせて頂くが、最近の休耕は減反政策によるものではなく、水田を維持する人手がないのと、無理して米を作っても儲からない、という構造的な理由によるものだ。この状況は特に当地に限ったことではないと思う。
 減反政策による休耕は復田注4)の可能性もあり、ある程度の手入れや湛水は行われる。これによって上記植物たちの生き延びる余地も出てくるが、耕作放棄水田はそうは行かない。遠目には休耕田も耕作放棄水田も同じように見えるが、耕作放棄水田には湛水しない。これによって陸地化の進展が早く、休耕遷移のスピードも早まるのだ。
 上画像のスズメハコベはそうした耕作放棄水田に発生したものだが、ネットで知り合った方がスズメハコベの群落をご覧になりたいということでご案内したのもこの耕作放棄水田。圧倒的なスズメハコベの繁茂に驚かれていたが、早くも翌年には陸上植物に被覆され消滅している。実は居住地周辺にはこうしたパターンが多く、上記リンク記事でご紹介したように湿地性植物にとっては死滅回廊を形成している場合もある。状況から考えて何らかの事情により(要は農業をやる人間が居なくなった、ということだろう)農業そのものを断念してしまった農家が出てきている、ということだ。水田は人間の手が入ってはじめて「水田」だが、多くの水田雑草はこの環境に特化しており、人間の手が入らず「水田」にならなければ絶えてしまう。よく言われる乾田化注5)という理由以外に、多くの水田雑草がRDBにリストアップされているのはこうした理由ではないだろうか。

■半耕作放棄

 更に言えばこの傾向、耕作放棄は休耕田のみならず耕作水田でも起きている。一応耕作はしているので言わば「半耕作放棄」だろうか。近年よく見られるようになったのは右画像のような水田で、稲は植栽しているが手入れがまったく行われず、水田全体をタイヌビエやケイヌビエが占拠している。小型の水田雑草が「おこぼれ」または「お目こぼし」で細々と生きてゆく畦際の空間もない。この状況を見て分かったこと、小さな水田雑草は人間の関与が不可欠である。

 また他人事ながら、この状態で米の収穫が可能なのか心配になる状態でもある。おそらく十中八九収穫できないか、収穫しても売物にはならないだろう。しかし余計なお世話、というか他人の懐の話だが、農業者戸別所得補償制度注6)(政権交代に伴い2013年以降は経営所得安定対策制度(経営所得安定対策)と名称変更)という制度があって、「こんな水田」にも補助金が交付される。とりあえず田植えさえすれば、その後のランニングコストをかけなくても一定収入があるというマジック。政府が意図するところと、悪用とは言わないまでも結果的に「楽して金を貰う」図式との相当の距離を感じる。


(P)2014年9月 茨城県南部 田植え以降、半ば放置されたと思われる耕作田。ケイヌビエの被害が甚だしい(fig4)


■社会的側面

 もう一つの考え方として、真面目にコメ作りを行ったとしても費用対効果上コスト高によって除草剤を使用できない、草を取る人間も高齢化して思うように動けない、結果的に放置という構造の負の側面があげられる。これがまさに農業の危機の本質だろう。近年様々な規制緩和が成されたせいか、米で利益を上げるために農協や流通の中間マージンをなくすため、生産者が直接販売を行うケースを見るようになった。資本力とアイディアがある生産者は農業生産法人によって大規模に取り組んでいる。こうしないと農業が続けられないという事態は、今までの農政が間違っていた、という事実の裏返しだ。
 また自宅周辺のこの一帯、福島第一原発の事故による放射能のホットスポット注7)でもある。農業生産物の出荷の際には放射能値を測定し安全基準内で出荷判定をしているが、風評被害の影響で生産した米がなかなか捌けない事情もあるだろう。困難な状況に陥りつつあることは事実だが、実質この流れは来るべきTPP注8)によってトドメを刺されるはず。これらが「社会的側面」である。まさに植物界の栄枯盛衰に関係ない人間の都合である。

 こうした「人間の都合」が、稲作という流れに生き方を合わせて進化してきた小型の水田雑草を滅亡に追いやっている、というのが減少の図式ではないだろうか。彼ら水田雑草が水田のサイクルに生活環を合わせるために費やした時間は数千年単位だろう。しかし上記したような人間の都合による変化はここ10年以内の話。時間軸が違いすぎる。現在問題となっているスーパー雑草注9)は、ある意味人間の時間軸にあわせて「進化」している。もちろん問題は問題だが、人間の勝手な都合による環境変化に対する強烈なしっぺ返しのように思えてならない。

ミクロのMicrocarpaea、小さなminima



スズメハコベの小さな花(萼筒) 2011年9月 茨城県南部(fig5)


■ミクロの草

 スズメハコベは小型の水田雑草のなかでも一際小さい。葉長はせいぜい3〜4mm、幅は1mm程度である。画像は花後の萼筒であるが、葉の大きさと比べればさらに小さい。種子にいたっては肉眼で確認できるかどうか、というレベル。同環境に自生する植物ではミゾハコベと同程度、ミズマツバよりは小さい。学名からしてMicroでminiなのである。
 以前、肉眼で見て普通のカメラで撮影していた頃はこの画像のような形状は確認できなかった。(自分が他人より視力が悪い、という条件もあるが)この画像を撮ったPENTAXは顕微鏡モードという素晴らしい機能が付いており、こうした世界を初めて見ることができた。萼筒の先端の繊毛は太さがおそらく数ミクロン、こんなレベルまで撮れるのである。フィルムカメラの頃は想像も付かなかった機能が手元にある。技術の進歩はすばらしい。


(P)2014年9月 茨城県南部 開花するスズメハコベ(fig6)


 一方、こうしたレベル(肉眼判別以下の部位)や種子の表面の模様がどうとか、ミクロのレベルを一般的な同定ポイントとしてあげるのはどうか、という思いもある。そうしたレベルで相違を明確にしないと判断が付かない植物はともかく、少なくてもスズメハコベはそうではないと思う。普通の野草好き、植物好きの方で、こういう特殊なカメラ注10)や顕微鏡まで持っている層はごく少数だろう。こういうのは自分で言うのも何だが、趣味者全体を一般的趣味者(A)→マニア(B)→オタク(C)のカテゴリーとした場合、(B)の一部と(C)の層にしか通用しない話だ。いわゆる野草の趣味者の圧倒的多数は(A)であることは間違いない。せっかく同定ポイントとして上げても確認の仕様がなくては意味がないではないか。
 この話は別に一般趣味者を下に見ているという類の話ではなく、植物の同定をどこまで行うかという話である。少なくてもこのサイトの水生植物図譜ではここまでの判別点は意識していない。市販の野草図鑑の多くは植物写真を一種あたり一枚で済ませているが、それでも十分役に立つ。そうした図鑑をバッグに入れて里山に散歩に出るだけでも十分に楽しいし立派な趣味だ。特定の植物に付いてそれ以上知りたければこうして暇人が色々な写真と解説をネット上に書いているわけで。

■アクアリウムの草

 いまさらアクアリウム水草の流通名を糾弾しても始まらないが、商品名、流通名で「クラッスラ」某という水草は、産地はともかく注11)として、クラッスラ属(Crassula)ではなくスズメハコベ属(Microcarpaea)の植物であることは間違いない。このことは本コンテンツFwatureアズマツメクサにも書いたが「砂漠のような場所に生きるCAM型光合成の植物(Crassula)が水草になるわけがない」と一概に否定できない部分がある。クラッスラ属ではないが、水辺の植物アズマツメクサはアズマツメクサ属という、クラッスラ属と相棒(それぞれ上位分類はクラッスラ亜科)関係にあるのだ。ざっくり括れば多肉植物である。誤解の無いように書いておくが、スズメハコベがクラッスラであるということではない。大半が酷暑と乾燥地帯に生きる植物グループ(属)のなかにも水辺に生活する種がある、ということだ。
 スズメハコベを多肉植物と誤認するはずがない、と思うが現実に私はミズマツバとアズマツメクサを誤認したことがある。(さすがに接近したらすぐに分かったが)ミズマツバと間違えるほどなのでスズメハコベでも誤認するだろう。下に画像を掲載したが、このあたりの小型植物はミゾハコベも含めて実に雰囲気が似ている。アズマツメクサが多肉植物っぽいと言ってもそれはmm単位以下の話であって、精査しなければ分からないのだ。多肉植物っぽいと言えばキカシグサの方がよっぽど多肉植物っぽい。その程度の違いなのだ。
 アクアリウムの「クラッスラ」誤認説に同情してるような文章になっているが、そうではなく小さな植物を判別するのに先入観は禁物である、ということである。また蛇足ながらアクアリウムの場合は「誤認」ではなく意図的なネーミングであることは排除できない。しかし書きたいのはそんなことではなく、多肉植物だろうがRDBのメッシュにない植物だろうが、近所の水田近くに存在する可能性はある、という「事実」である。

 スズメハコベは水没しても生育注12)できる。つまりアクアリウムでも育成することが可能である。しかし本種は1年草であって長年維持することは困難であるようだ。屋外で浅水の環境を用意できるのであれば世代交代を行いつつアクアリウムに導入した方が合理的である。種子生産性、発芽率は共に良好な植物なので維持はさほど難しくない。しかし屋内アクアリウムでは雰囲気の良い前景草となるが、屋外では本当に「単なる雑草」となってしまう。綺麗な花でも咲けばまだしも、花は前掲の写真のような有様である。お世辞にも観賞価値があるとは言えない。アクアリウムという目的がなければなかなか育成しにくい植物だ。


 誤認や育成の話はともかくとして、野外で目視した際に、似たもの仲間の(自生環境や遠目の草姿が、という意味)ミゾハコベやミズマツバ、アズマツメクサ等とどう印象が違うのか、直感的に分かる情報が、まだまだ自生情報が不足しているこの植物に付いては有益なのではないか、と思う。慣れれば一目で見分けは付くが、見た事がない場合、事前情報としてビジュアルを見ておくことが重要だと考える。撮影角度やスケールも異なり不完全なものではあるが、下に比較したので「イメージとして、ビジュアルとして」、実際に比較する機会があればご参考にして頂きたいと思う。


スズメハコベの葉(fig7) アズマツメクサの葉(fig8)
ミズマツバの葉(fig9) ミゾハコベの葉(fig10)

Microcarpaea minima Photo Gallery



耕作放棄水田に群生 2011年8月 茨城県南部(fig11)

地表から僅かに立ち上がる 2010年8月 茨城県南部(fig12) 他種の侵入を許さない群落 2011年9月 茨城県南部(fig13)
脚注

(*1) 報道されることは少ないが意外にあるという「噂」は絶えない。特に世論調査で得た数値を、意図する方向に誘導するような操作が行われている、という噂を度々聞く。しかしあくまでも「噂」であって裏がない話。珍しく表に出たのが2018年に明らかになった厚生労働省の不正統計。政権の「働き方改革関連法案」への忖度と言われているが、似たような話は水面下に数多く存在するはず。
 本文にも書いたようにRDB(レッドリスト含む)に関わる調査の範囲、手法が公開されておらず、スズメハコベに限らず疑問に思うことが多い。(外来生物法も同様)プロセスを公開せず、結果のみ公開することは消極的な情報の捏造だと思われても仕方がないと思うのだが如何だろうか。少なくても自然科学分野の話であって、Material&Methodは必須。これがいい加減で結局「捏造」になったのがSTAP細胞。

(*2) スズメハコベは当県で発見した大規模な自生地に、ネットで知り合った同好の方が来県されご案内したことがあった。当時の状況はその方もブログにアップされているので、ある意味「証人」だが、一般にネット記事の信憑性は100%ではない。自分でWebサイトを公開して言うのも何だが、写真撮影地点、解説などはいくらでも虚偽申告が可能、意図をもって情報をコントロールすることが可能なのである。「これは違う」と思っても実質的に反証が不可能なので閲覧する方は「ネット情報」として割り切って閲覧するのが良いと思う。もちろん私の記事は正直申告だが、それも私しか知り得ない話なのは百も承知。

(*3) スズメハコベは数年前の「日本のレッドデータ検索システム」では鹿児島から栃木まで、主に太平洋岸を中心に特徴的な分布となっていたため、(1)南方系植物の稲作伝来同時伝来(2)その後の海運ルートで北上、という仮説を持っていたが、最新のデータではそのように思えなくなった。これには伏線があって、ある研究者の方から「スズメハコベは大河川の流域に自生する」という情報を頂いたのである。地元自生地と最も近い自生地である渡良瀬遊水地を結ぶ「線」は利根川、上流方向に流れる種子はないので、運搬ルートは利根川の水運、ということで自分なりに納得していたが、リセットしてもう一度考えてみようと思う。

(*4) 読んで字の如く、田に復すること。以前耕作水田であって、何らかの理由で休耕していたものを再び水田として利用すること。復田の手間は休耕時の状態や期間によって大幅に変わってくるという。現代の水田は基盤整備により必要な時期のみ湛水する運用となっており、休耕、耕作放棄の際の陸地化の進行が早い。休耕田であっても耕作田同様に耕起、湛水して管理している場合は復田が決まっているケースが多い。放棄水田で数年間経過した場合の復田に要する費用は当該水田で得られる当年度の収益では賄えないという。

(*5) 乾田は「乾いた田」であって、水田でありながら湛水される時期は田植え直前(4月下旬〜5月上旬)から収穫前(8月下旬頃)までである。この間も稲の根に酸素を供給したり収量を増やすための中干しなど水を抜く期間があり、実質3ヶ月程度の湛水期間となる。年間の25%だけが水田であり75%は陸地、この状態を水田と呼ぶには無理があるような気がするが、名詞として「乾田」は使われている気配がない。

(*6) (旧)民主党が推進した農業政策で、民主党が政権をとった2010年から実施された。骨子は販売価格が生産費を恒常的に下回っている作物に付いては差額を交付するというもの。水田に関しては2010年度予算の概算要求で5618億円のモデル対策を計上、米の生産数量目標に即した生産を行う販売農家を対象とする「米戸別所得補償モデル事業」と麦や大豆への転作及び米粉用米・飼料用米などを生産する販売農家を対象に主食用米生産と同等の所得を確保する水準の金額を交付する「水田利活用自給力向上事業」を実施した。稲作農家には、米価水準にかかわらず、全国一律の定額補償が10アール当たり15,000円で対象農家は約180万戸。後出しジャンケン的評価であるが、客観的にバラマキ行政にしか見えない。

(*7) もちろん農産物はすべて放射能値を測定、安全基準を満たした上で出荷されている。市内の放射能測定は完了し値が高い場所及び公園など公共性が高い場所に付いては除染も終了している。それでも残るのが風評被害。尚、ホットスポットは今や放射能値の代名詞的に使われているが、元々は「局地的に値が高かったり、地殻変動、その他の活動が盛んな地域、場所」のことで一般用語。福島第一原発事故後、茨城県取手市は放射能値の高い場所が多く、同様に千葉県我孫子市、柏市などでもホットスポットができている。このため(と言われている)一時的な人口流失が起きているという。

(*8) この項を書いている時点(2015年5月)では完全に合意に至っておらず未締結。特に焦点となっているのはアメリカからの食用の米の輸入量で、これが大幅に緩和されると稲作農業には致命的なダメージとなるはず。
(改訂版追記)その後2017年に就任したアメリカのトランプ大統領はTPPからの交渉離脱を行い、ひとまずTPP締結による安価な食用米の流入は阻止できた。しかし日米の個別の農産物交渉は完全に決着しておらず将来的にどうなるのか尚予断を許さない。

(*9) 一言で表現すれば、農薬(除草剤)の効果がない雑草のことである。出現のメカニズムとしては、除草剤を散布しても枯死しない遺伝子組み換え作物の花粉を雑草が受粉し、除草剤耐性を身に付けてしまう、というもの。同時に成長速度や収量の増加を取り込んでしまった雑草もある。水田雑草で代表的なものはオモダカで、異常に大きな草体と成長スピードにより養分収奪が従来とは比較にならない大きなものになっている。もちろん除草剤は効かないので手作業による除草しかないが、株数も圧倒的に多く出現する(収量増加による種子生産性の向上)ので一筋縄では行かない状況となっている。

(*10) 特殊、というか中身は普通のカメラ。耐環境性能(防水、耐衝撃)と屈折式の光学系を活かした顕微鏡モード(スーパーマクロ)やその他ギミックが搭載された、いわば「特殊」なカメラ。光学式レンズを搭載したタイプのカメラに比べれば画質はそれほど良くない。私はその辺を割り切って特殊用途(スーパーマクロ撮影)専用として使用している。ただしこれが意外に役にたち、先代W90から愛用している。積極的に新型に買い換えるほどのものではないが一台あると非常に重宝する。こういうのが隙間商品というのだろう。

(*11) スズメハコベはいわゆる史前帰化種の一つと考えられており、東南アジアには同種または近似種と考えられる植物が存在する。こういうものが水草として輸入され、万が一にも帰化定着してしまった場合の惨事は想像するに余りある。絶滅危惧種と外来生物がまったく同様の姿形で混在する状況を想起して欲しい。これでは保護も駆除も手の付けようがない。同種または近似種であっても日本産と東南アジア産には数千年の時間の懸隔があり、遺伝的には違う植物になっているはず。申し訳ないが「日本産のトキが絶滅したので中国から借りてきました」的なノリは通用しないと思う。

(*11) 耕作水田に自生するものは乾田の環境で生きている。すなわち田植えから稲刈りまで小まめに湛水、落水され、スズメハコベにしてみれば沈水、抽水、湿生環境を生き延びなければならない。自分がアクアリウムで育成した際には小さすぎて気中葉なのか沈水葉に変化したのか見極められなかったが、水中で長期間成長したということは、何らかの手段で水中から二酸化炭素を調達していたはず。つまり沈水植物の機能は持っているはずで、水草と呼んでも差し支えないのではないだろうか。


【Photo Data】
・Canon PowerShotG10 *2010.9.15(fig1,fig2)
・Canon PowerShotG11 *2010.8.30(fig3,fig7,fig12) *2010.6.1(fig8)
・Nikon CoolPixP330 *2014.9.27(fig4)
・Pentax OptioW90 *2011.9.12(fig5,fig6)
・SONY α6000 + SEL30M35 *2014.8.9(fig9)
・Canon EOS KissDigital + SIGMA Macro50mmF2.8 *2005.6.25(fig10)
・RICOH CX5 *2011.8.28(fig11) *2011.9.6(fig13)

Feature Microcarpaea minima (Koenig) Merrill
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