日本の水生植物 水生植物図譜
ウリ科 Cucurbitaceae
(APGV:ウリ科 Cucurbitaceae
絶滅危惧種表示:環境省レッドリスト2015準拠
外来生物表示:外来生物法第八次指定
植物分類:APGV分類 併記
genus search
ゴキヅル属 スズメウリ属
ゴキヅル属 Actinostemma
標準和名 ゴキヅル 学名 Actinostemma lobatum Maxim. 生活型 一年草 自生環境 湿地
環境省レッドリスト2015:記載なし

 珍しいウリ科のツル性の湿地植物。奇異な和名の植物であるが、由来は「合器蔓」。合器は蓋付きの椀を示す古語だが、果実の形状を見立てた意味である。果実が熟すと真ん中あたりで弾け、上下に別れるのだ。これを「蓋付きの椀」に見立てている。
 熟した種子は落下し、水流によりあちこちの岸に流れ着きそこで発芽し版図を拡大する。水辺に強く依存した完全な湿地植物である。昔は強害草扱いされるほど水田周りで嫌われた雑草だったようだが、現在では見かけることは稀で、これほど急速な衰退はその生活史から考えると乾田化の進展と無縁ではないだろう。すでにこの時期周辺の水田地帯では用水路・排水路も役割を終了し水は一滴もない。種子が落ちても激しい乾燥に晒され発芽できない環境である。

 撮影地は日当たりが良い、護岸がなく地下水位が高い、増水によって冠水する河川敷などの湿地植物の好条件が揃っていた。ハナムグラやエキサイゼリも見られる条件の良い湿地である。

(P)2009年9月 茨城県 河川敷氾濫原
2015年5月 東京都 種子からの発芽 同左
2015年9月 東京都 同左
2015年9月 東京都 和名の元となった果実 同左

2015年9月 東京都
スズメウリ属 Melothria
標準和名 スズメウリ 学名 Melothria japonica (Thunb.) Maxim. ex Cogn. 生活型 一年草 自生環境 湿地
環境省レッドリスト2015:記載なし

 河川敷など湿った環境に生育するツル性の湿地植物。同様の環境に生えるゴキヅルより一般的。霞ケ浦・利根川水系では霞ケ浦沿岸部、利根川、小貝川河川敷などで普通に見られる。雌雄同株、雄花は下図左、雌花はやや色が暗く下部に子房を持つ。(下図右)
 同じウリ科のアマチャヅルやカラスウリ同様に、晩秋になると蔓が地面に潜り込み、越冬用の塊根を形成する面白い性質を持つ。また和名由来となった小さな果実からの実生も盛んである。本種は文献により多年草とされるが、前述の塊根を「塊根」と見るか越冬芽(殖芽)と見るかで見解が分かれる所だろう。本項では本来の根が越冬しないという観点で一年草が相応しいと思い標記した。例えば殖芽を形成するヒルムシロは多年草であるが、その根拠は殖芽ではなく本来の根茎にあるからだ。

(P)2010年9月 茨城県 基部が開出する葉
2010年9月 茨城県 雄花 同左 雌花、子房から果実を形成する初期
2010年10月 茨城県 果実 同左
inserted by FC2 system