日本の水生植物 水生植物図譜
ウキクサ科 Lemnaceae
(APGV:サトイモ科 Araceae ウキクサ亜科 Lemnoideae
絶滅危惧種表示:環境省レッドリスト2015準拠
外来生物表示:外来生物法第八次指定
植物分類:APGV分類 併記
genus search
アオウキクサ属 ウキクサ属 ミジンコウキクサ属
アオウキクサ属 Lemna
標準和名 アオウキクサ 学名 Lemna aoukikusa Beppu et Murata 生活型 一年草 自生環境 水田
環境省レッドリスト2015:記載なし

 水田に多く発生する強害草。第2葉状体から根を1本水中に伸ばす。大きさもウキクサに比べてかなり小さく、2mm〜6mm程度である。根の基部、根鞘に翼がある点も同定ポイントとなる。

 本種はしばしばウキクサやミジンコウキクサと混生するが、近年外来種のイボウキクサが本種に代わり、イボウキクサの繁殖範囲ではアオウキクサが見られない、という現象も見られる。霞ヶ浦沿岸では一部のハス田に於いてイボウキクサの侵入によりアオウキクサが見られない場所がある。
 他のウキクサ同様に開花は非常に稀であるが、本種は他種に比べれば開花しやすい、と言われている。増殖は主に無性生殖(草体の分裂)によって行われる。通常、第1、第2葉状体か一緒に漂っているが、第3葉状体が形成されてしばらくすると分離する。

(P)2005年7月 茨城県
2011年8月 茨城県 同左

2015年5月 東京都 ウキクサ(大きい方)に混じり水面を占拠する
標準和名 イボウキクサ 学名 Lemna gibba. L. 生活型 多年草 自生環境 水田
外来生物:外来生物法指定なし

 ヨーロッパ原産の帰化植物。侵入経路は明らかではないが、霞ヶ浦沿岸部のハス田や水田で大発生が見られる。上から見るとアオウキクサにそっくりだが、浮袋を持ち、葉状体を横から見ると膨らんでいる。(下画像参照)根は一本。葉状体裏面はアオウキクサ同様に緑色であるが、個体により赤みを帯びる場合もある。表面には腺点のような微小な突起が無数にある。
 明らかに排他性を持ち、本種の繁茂したエリアではアオウキクサが見られず、ウキクサもごく少数しか残らないという現象が見られる。増殖はアオウキクサに同じ、株の分割による無性生殖により行われる。アオウキクサ属他種と同様に開花はかなり稀である。

 茨城県内の状況は上記の通り霞ヶ浦周辺に集中して発生が見られるが、これは全国流通するハスの種苗(レンコン)に付着して入り込んだためではないか、と考えられる。同様にハス田周辺で発生量の多いオオアカウキクサに付いても精査鑑定が必要であると思われる。

(P)2011年7月 茨城県
2011年7月 茨城県 ハス田水路を埋め尽くす 同左 サイドヴューが立体的
標準和名 コウキクサ 学名 Lemna minor L. 生活型 多年草 自生環境 水田
環境省レッドリスト2015:記載なし

 日本全国に分布するアオウキクサに酷似した小型のウキクサ。アオウキクサと異なる点は常緑で根鞘に翼が見られないこと、葉状体にやや厚みがあること、裏面が紫色に色付くこと(必ず色付くわけではない)などである。また画像に見えているように根が長い。葉長は3〜3.5mm、幅2〜3.5mm、根はアオウキクサ同様1つの葉に1本付く。
 茨城県南部ではアオウキクサに比べてやや少ないが、探すのに苦労する、という程でもない。希少種とする立場もあり都道府県レベルではRDBに記載されたりしている例もあるが、水面上から見るとアオウキクサと区別が付かないので混同されている可能性もある。

 水田ではアオウキクサ、ウキクサなどと混生する。画像ではミジンコウキクサ、オオアカウキクサと混生している。本種に酷似し、やや細長く葉状体に1脈あるヒナウキクサという帰化植物もあるが当地では未確認。小さなウキクサの世界だがイボウキクサも含めると何が何だか分からなくなる。

(P)2011年8月 茨城県
2011年8月 茨城県 ミジンコウキクサと混生 同左
標準和名 ヒナウキクサ 学名 Lemna minima Kunth 生活型 多年草 自生環境 水田
外来生物:外来生物法指定なし

 南米原産(北米原産説あり)の帰化植物。淡緑色で薄く、やや湾曲する。根は1本で糸状白色。常緑越冬する。コウキクサに近似するが、根は1本で根鞘に翼がなく、根の先端が鈍頭となる。加えて葉裏の色や、形状から判断した。また複数のソースがヒナウキクサの帰化地として指摘している場所での撮影である。(一応)

 本種は帰化種のなかではあまり自生地を聞かず(静岡県、兵庫県など数ヶ所のみという説がある)、関東地方では茨城、千葉両県ではあまり記録がない。しかし東京都や神奈川県では広範に帰化しているようだ。コウキクサとの誤認も含まれていると思われるが、帰化種なので分布の拡大は予断を許さない。

(P)2015年8月 東京都
2015年8月 東京都 水面を占拠する勢いで増殖 同左

2015年8月 東京都
標準和名 ヒンジモ 学名 Lemna trisulca Linn. 生活型 多年草 自生環境 湖沼
環境省レッドリスト2015:絶滅危惧U類(VU)

 なかなか見られない希少な浮草。浮草と言っても水面付近水中で他の水生植物に引っ掛かるように留まり自生する性質を持った植物で、半沈水の生活史を持つ多年草である。漢字で表記すれば品字藻、すなわち「品」という漢字に見える藻という意味であるが、草姿を見れば納得できる。シダのようにも見えるが被子植物であり、画像、実物とも見たことは無いが、ごく稀に開花するらしい。ウキクサ科全般、開花は非常に珍しい。増殖は主に分裂による無性生殖である。
 本州の自生地は少なく、静岡県の柿田川など湧水起源の河川や一部の湖沼などに残っているらしいが、湖沼のものは不安定で、発見後数年以内に消滅したという話を何回か聞いている。

 育成方法であるが、半日陰の睡蓮鉢で増殖している。これはアオミドロや高水温が天敵のため、比較的アオミドロの発生がなく水温上昇も緩やかな半日陰の環境が合っているため、と考えられる。

(P)2011年8月 茨城県(自宅育成)

2011年8月 茨城県(自宅育成) 同左
ウキクサ属 Spirodela
標準和名 ウキクサ 学名 Spirodela polyrhiza (Linn.) Schleid. 生活型 一年草 自生環境 水田
環境省レッドリスト2015:記載なし

 最も普遍的な水田雑草の一つ。凄まじい爆殖ぶりは有名であるが、しばしば混生する近似種との同定ポイントは意外と知られていない。
 大きさで言えばウキクサ>アオウキクサ=イボウキクサ>ミジンコウキクサで、植物体の特徴(同定ポイント)は、ウキクサは裏面が赤紫色(画像下)、根が多数出る(画像下)のに対し、アオウキクサ、イボウキクサは両面緑で根が1本である。ミジンコウキクサは根が無い。

 一応種子植物なので実生するが、滅多に花は咲かず本体の一部を冬芽に変化させて越冬する。花は植物体が強いストレスを受けた際に種の存続のために開花するとも言われるがよく分からない。

(P)2011年8月 茨城県

2011年8月 茨城県 葉裏が赤い 同左 多数の根が出る
ミジンコウキクサ属 Wolffia
標準和名 ミジンコウキクサ 学名 Wolffia globosa (Roxb.) Hartog et Plas 生活型 多年草 自生環境 水田
外来生物:外来生物法指定なし

 画像のウキクサの間の小さなツブツブがミジンコウキクサである。本当に小さく、世界最小の被子植物と言われている。ちなみに花も世界最小である。
 水田や湖沼に普通にあるような気がするが、意外なことにヨーロッパ南部原産の帰化植物である。帰化時期も古く明治時代と言われている。県内では霞ヶ浦、北浦周辺から県南部にかけて多くの場所に帰化している。

 この植物は育成云々よりも水槽や水鉢に入り込んでしまった際に、いかに駆除するかという点が問題になる。有効だったのは熱帯魚用の目の細かいネットで、掬ったらバケツなどで洗い流し、を繰り返す。しかし忘れた頃にまた殖えていたりするので完全な駆除は難しい。
 水槽では換水の際にポンプで水面近くを吸い取り一緒に除去してしまう、水面にキッチンペーパーなどをかぶせ貼り付けてしまう、という方法がある。手で除去するのは無謀で、かなりの忍耐力が要求されるだろう。

(P)2008年9月 茨城県
2015年10月 東京都 同左

2015年10月 東京都 赤く見えるのはアゾラ・クリスタータ
inserted by FC2 system