日本の水生植物 | 水生植物図譜 |
マメ科 Leguminosae (APGV:マメ科 Leguminosae) |
■絶滅危惧種表示:環境省レッドリスト2015準拠 ■外来生物表示:外来生物法第八次指定 ■植物分類:APGV分類 併記 |
genus search クサネム属 ゲンゲ属 シナガワハギ属 ソラマメ属 タヌキマメ属 ツノクサネム属 ハギ属 レンリソウ属 |
クサネム属 Aeschynomene |
標準和名 | クサネム | 学名 | Aeschynomene indica Linn. | 生活型 | 一年草 | 自生環境 | 水田 |
環境省レッドリスト2015:記載なし 水田地帯に一般的なマメ科植物。独特の羽状複葉が目を引く草で、葉は1枚あたり40〜60の小葉を付ける。小葉は狭長楕円形、長さは10mm〜15mm程度。花は画像のようにマメ科の蝶形花、色は薄い黄色である。 豆果(画像左下)は長さ5cm以下、小節果は4〜8である。(画像の豆果は7)種子はマメそのもので(画像右下)大豆にも似ている。(食用にはならない) もともと畦や周辺の植物であったが、近年水田への侵入が問題となっている。稲と同程度の草丈まで成長するので、稲刈の際に同時に刈り取られ、脱穀の際に種子が混入し、米の品質を低下させるという。もともと自生種であったものが自生の環境を変えるというのは珍しい話であるが、温暖化や乾田化や水田雑草を取り巻く環境も刻々と変化している証左かも知れない。 (P)2011年9月 茨城県 More weedクサネム |
2011年9月 茨城県 蝶形花 |
同左 複葉 |
2011年9月 茨城県 果実(鞘豆) |
同左 豆果 |
2014年6月 茨城県 水田への侵入 |
同左 |
ゲンゲ属 Astragalus |
標準和名 | ゲンゲ | 学名 | Astragalus sinicus Linn. | 生活型 | 一年草 | 自生環境 | 湿地 |
環境省レッドリスト2015:記載なし またの名をレンゲ、レンゲソウ。田植え前の水田に植栽され、肥料としてそのまま鋤込まれる利用法が成されている。これは本種が空中窒素固定を行う根粒菌を共生させる性質を利用したもので、いわば緑肥。 中国原産の帰化植物であるが、江戸期以前に移入されており、外来生物法でも検討対象に入っていない。要するに帰化植物扱いはされていない。文化的にも根付いている植物で「やはり野におけ〜」と俳句にもなっている。季語が「れんげそう」である。また養蜂でも重要な植物であり、ミツバチによって集められた蜂蜜は「れんげハチミツ」としてメジャーな蜂蜜になっている。 (P)2005年4月 茨城県 水田 |
2010年5月 茨城県 |
2009年4月 茨城県 |
シナガワハギ属 Melilotus |
標準和名 | シナガワハギ | 学名 | Melilotus officinalis (L.) Lam. | 生活型 | 越年草 | 自生環境 | 湿地 |
外来生物:外来生物法指定なし 江戸時代に帰化した古顔の帰化植物。原産地は中央アジア・ヨーロッパ。帰化当初、品川(東京都)付近に多かったため付与された和名。18世紀中頃に出版された「草木図説」にはすでに記載されており、明治維新以前の帰化種であることが明白であるため外来生物法の対象外となっている。乾地の他、河川敷など湿地にも進出する。 草丈は1m前後にまで育つ大型の植物。葉は3つの小葉から成り、小葉は1〜3cm長、幅は5mm〜1cm程度。葉脇から3〜5cmほどの総状花序を出し5mm前後の黄花を多数付ける。 本種は芳香のある「クマリン」を高濃度に含み、西欧では古くからハーブとして用いられている。また、頭痛、不眠症、消化不良等の民間薬としての歴史があり、現在でも薬効成分としてサプリなどに用いられる。 (P)2015年7月 東京都 |
2015年7月 東京都 |
2015年7月 東京都 |
ソラマメ属 Vicia |
標準和名 | クサフジ | 学名 | Vicia cracca L. | 生活型 | 多年草 | 自生環境 | 湿地 |
環境省レッドリスト2015:記載なし 原野、河川敷、湿地(渡良瀬遊水地や小貝川氾濫原に多い)に自生する植物。ナヨクサフジをはじめ近似種が多いが、この仲間では最も個体数が多いと考えられている。小葉の形状で見分けられるオオバクサフジ、ヒロハクサフジ、ツルフジバカマを除外するとナヨクサフジが近いが筒部が短いことで判別できる。またツルフジバカマやナヨクサフジは本種よりやや花期が遅い。 当地では乾地の原野や草原といった遊休地が少ないためか、河川敷、湿地などで多く見かける。もちろん純粋な湿地植物ではないが過潤地に対する適応力を持っていると推測される。 (P)2015年6月 茨城県 河川敷 |
2015年6月 茨城県 |
同左 |
2015年6月 茨城県 |
標準和名 | ナヨクサフジ | 学名 | Vicia dasycarpa var.glabrescens | 生活型 | 越年草 | 自生環境 | 湿地 |
外来生物:外来生物法指定なし ヨーロッパ原産のツル性の帰化植物である。クサフジに酷似するが花の筒部(筒状の部分)が旗弁の舷部(反り返った部分)より長い、花色がクサフジより濃い、氾濫原河川敷など湿地にも進出する、という点が異なる。秋に発芽し春〜初夏に開花する越年草。(一年草説あり) 茎は他の植物に絡みついて伸長し、2m程度になる。葉は羽状複葉で小葉は狭楕円形、10-24枚と多数を付け、先端は巻きヒゲとなって植物体固定の役割を持つ。花序は葉腋に付き、15mm長の赤紫色の蝶形花を穂状に付ける。 もともと家畜の飼料や緑肥用に導入されたが逸出して野生化している。本地域では利根川、小貝川の河川敷に多い。和名漢字表記は「弱草藤」で、なよなよした草藤との意。 (P)2010年6月 茨城県 河川敷 |
2011年5月 茨城県 |
同左 |
タヌキマメ属 Crotalaria |
標準和名 | タヌキマメ | 学名 | Crotalaria sessiliflora L. | 生活型 | 一年草 | 自生環境 | 湿地 |
環境省レッドリスト2015:記載なし 本州以南から朝鮮半島、中国、東南アジアからインドまで分布するマメ科一年生植物。そのユニークかつ強烈な名前が印象的である。本来は原野や草原に自生するが、湿地が隣接する地形では湿地際を好む傾向があり、また湿地そのものにもしばしば進出する。 苞が独特であり、名称のイメージと重なって覚えやすい植物だろう。名称が狸の体を示すのか、一部分(いわゆる、袋)を示すのかは定かではない。個人的印象及び願望は後者である。マメ科に特有なスイートピーのような形の青花を付ける。午前中は開花せず、昼頃から開花が始まる。 (P)2009年9月 千葉県 |
2011年10月 栃木県 |
同左 |
ツノクサネム属 Sesbania |
標準和名 | アメリカツノクサネム | 学名 | 、Sesbania exaltata (Raf.) Cory | 生活型 | 一年草 | 自生環境 | 湿地 |
外来生物:外来生物法指定なし アメリカ合衆国東部原産(他に熱帯アメリカ説、ヨーロッパ説があり明確ではない)とされる外来植物。戦後すぐに帰化したとされるが、全国的にさほど分布していない。関東地方でも局所的に稀に見られる程度である。 クサネムに比べると草体は大きく、1m〜3mにまで育つ。花はマメ科の蝶形花で萼が5裂する。葉はクサネムに似た羽状複葉で草体全体の印象もクサネムに近いが、豆果がツノ状に細く尖ることが大きな特徴となる。またそれが和名由来ともなっている。(画像参照) 未確認ながら水田を畑地に転作する際の土壌改良植物として用いられることがあるらしい。ゲンゲ同様に窒素固定を行うので草体を鋤き込むことで施肥の機能を利用したもののようだ。一方、従来の除草剤が効かず、鋤き込む際にも茎がコンバインの刃を傷める程固く、駆除難の雑草になる危険性も高いが幸いなことに上記の通り分布は拡大していない。 (P)2015年9月 東京都 |
2015年9月 東京都 花 |
2015年9月 東京都 形成されつつある豆果 |
2015年9月 東京都 「ツノ」の形状 |
ハギ属 Lespedeza |
標準和名 | ハイメドハギ | 学名 | Lespedeza juncea (L. fil.) Pers.var.serpens (Nakai) Ohashi | 生活型 | 多年草 | 自生環境 | 湿地 |
環境省レッドリスト2015:記載なし ハイメドハギはメドハギの変種であり、メドハギ同様に河川敷湿地などに多く自生する。本州〜九州、沖縄から中国にも分布する。ハギ(萩)は同じマメ科の木本植物だが、ハイメドハギ、メドハギは草本植物、花期が早く、8月下旬頃から咲き始める。 茎が地を這って広がることが第一の特徴(ハイメドハギの由来)。茎には開出毛があり、著しく毛があるものをケハイメドハギとして品種に分類することもある。葉は3小葉で密に付く。花は中央部が紫色で他の部位は白、メドハギはこれに対し基部が紫色でやや印象が異なる。 (P)2009年9月 千葉県 |
2009年9月 千葉県 |
標準和名 | メドハギ | 学名 | Lespedeza juncea (L. fil.) Pers. var. subsessilis Miq. | 生活型 | 多年草 | 自生環境 | 湿地 |
環境省レッドリスト2015:記載なし 河原や湿地周辺など湿り気がある場所に自生する。利根川、小貝川では河川敷、氾濫原に普通の植物。アシ帯が切れる、やや乾燥した場所にも進出しミゾコウジュやノカラマツと混生している。 日本、東アジアに広く分布する普通種であるが来歴には諸説あり、日本が原産であるとする説、東南アジアからの帰化種ではないかとする説がある。中国では漢方原料とし、夜関門(やかんもん)という生薬名で用いられる。効能は咳止め・去痰などである。 漢字で標記すれば「筮萩」、筮は占いに用いる筮竹(ぜいちく)の「筮」で、メドギとも読む。昔この植物の茎を「筮」として使用した故事に因む和名である。この手の道具は「筮竹」の名の通り竹の印象が強いが、竹は比較的遅く渡来したらしい。 花期は9〜10月、ハイメドハギの項に記したように花の基部が紫色で他の部位は白。またハイメドハギと異なり大きく広がることはない。 (P)2010年6月 茨城県 |
2010年9月 茨城県 |
同左 |
2015年6月 千葉県 株全体 2019年9月 茨城県 |
レンリソウ属 Lathyrus |
標準和名 | レンリソウ | 学名 | Lathyrus quinquenervius (Miq.) Litv. | 生活型 | 多年草 | 自生環境 | 湿地 |
環境省レッドリスト2015:記載なし 一風変わった和名は「連理草」、小葉が綺麗に並ぶ様を「連理」、つまり夫婦の仲睦まじい姿の例えとしたものであるとされる。出典は白楽天の長恨歌中の「比翼の鳥、連理の枝」である。日本文学でも源氏物語で光源氏がこの一説を引用して口説き文句に使っている。マメ科植物では最も馴染み深いスイートピーは同じレンリソウ属であり、和名をジャコウレンリソウと呼ぶ。花期は5月。 スズメノエンドウ、カラスノエンドウ、カスマグサに似るが花色が濃く(青みがかる)大きく、独特の線形の托葉を持つことで判別できる。また基本的に湿地性であり乾地で見ることはない。 (P)2016年5月 埼玉県 |
2016年5月 埼玉県 絡み合って群生する |
同左 有力な同定ポイントの一つである托葉 |
2016年5月 埼玉県 |