日本の水生植物 水生植物図譜
ガマ科 Typhaceae
(APGV:ガマ科 Typhaceae
絶滅危惧種表示:環境省レッドリスト2015準拠
外来生物表示:外来生物法第八次指定
植物分類:APGV分類 併記
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ガマ属
ガマ属 Typha
標準和名 ガマ 学名 Typha latifolia Linn. 生活型 多年草 自生環境 湿地
環境省レッドリスト2015:記載なし

 水辺に一般的な水生植物。日本には本種とコガマ、ヒメガマ3種類のガマが自生する。園芸で流通する「ゴクヒメガマ」は改良品種であると思われる。
 花粉には薬効があるとされ、古事記の「因幡の白兎」には早くも登場している。また筑波の「ガマの油」も一般にガマ蛙の油と誤解されているが(誤解を助長する演出がある)本種の花粉のことである。薬効は傷薬・火傷薬で漢方薬では「蒲黄」(ほおう)と呼ばれている。

 ガマの穂は熟すとタンポポの綿毛のように種子を風に乗せて飛ばし、水田が休耕になると早くも翌年にはこの植物が生えてくる。

(P)2005年7月 茨城県 More weedガマ
【種子の旅立ち】2013年12月 茨城県
2013年12月 茨城県 結実期 同左 種子に飛翔用の綿毛が付く

2015年7月 茨城県 谷津田最奥の耕作放棄水田に群生する
標準和名 コガマ 学名 Typha orientaris Presl 生活型 多年草 自生環境 湿地
環境省レッドリスト2015:記載なし

 自生形態、草姿などほぼガマと同じである。相違は花穂の長さが短いこと、開花時に花穂(ガマの穂)の上に雄花の集合花がついていることにより区別される。出穂していれば見分けは容易。

 水田地帯でやや普通に見られ、用水路際や休耕田に自生している。当地では休耕田の代名詞になる程普遍的に見ることができる。不思議なことに水田が休耕になるとガマとともに初年度から生えてくる(耕作田ではあまり見られない)ことで、発芽のセンサーが稲作の有無と連動しているかのような印象を受ける。種子自体は風に乗って広がるので、どの水田でも埋土種子として生きていると考えられる。

(P)2006年8月 茨城県
2014年8月 茨城県 休耕田の優先種となる 同左
標準和名 ゴクヒメガマ 学名 Typha minima 生活型 多年草 自生環境 湿地
外来生物:外来生物法指定なし

 水辺の植物としてホームセンターやネット通販で盛んに販売されている植物。一説にはヨーロッパ〜西アジア原産の外来生物とされるが、園芸改良されたような形跡(草体や穂の大きさ、色など)も感じられる。(確証はない)
 他のガマ科在来種と異なり花期が早く、晩春から初夏、5〜6月に開花する。また草丈が50〜60cmと低く、鉢植えなどで鑑賞できるためそれなりに需要があるようだ。ガマ科植物は種子を風で飛ばし版図を拡大するが、本種を植栽している場所周辺では拡大が見られないことから、日本の気候下で実生するのかどうかは不明。穂上げもややハードルが高いという話もある。

 逸出の有無の問題はありつつ、外来種とすれば扱いは慎重にすべきで不要となった株の投棄は厳に慎まなければならない。
 
(P)2015年6月 東京都(公園植栽)
2015年6月 東京都(公園植栽) 同左
標準和名 ヒメガマ 学名 Typha angustifolia Linn. 生活型 多年草 自生環境 湿地
環境省レッドリスト2015:記載なし

 非常に背の高くなる(約2m)草であるが、ガマに比べ葉が細く花穂の付き方が異なる。(上の雄花と下の雌花が5〜6センチ程度離れている)ガマに似て全体が小ぶりなものはコガマTypha orientalis である。当地では水田地帯よりも湖沼や湿地に多い印象を受ける。画像は手賀沼畔、湖畔にはヒメガマが多く、周囲の休耕田にはガマが多く見られた。

 学名には混乱があり、Typha angustifolia はホソバヒメガマという別種(正体はよく分からない)のものという説がある。また、ガマとホソバヒメガマは交雑しTypha angustifolia x T. latifolia(和名不詳)という交雑種があるという説、ガマとコガマの雑種のアイノコガマという交雑種もあるという説もあり、整理された情報が望まれる。

(P)2003年6月 千葉県
2014年7月 千葉県 同左
2014年7月 千葉県 同左

2015年6月 東京都 公園の湿地に群生
標準和名 フイリヒメガマ 学名 Typha latifolia cv.(不詳) 生活型 多年草 自生環境 園芸種
環境省レッドリスト2015:記載なし

 園芸用に改良された斑入品種のガマ。学名や穂の形状を見る限り、和名(商品名)に示されるヒメガマではなくガマの改良品種のようだ。園芸店やネット通販でよく販売されている。
 改良の元品種は上記の通りガマと推測されるが、流通する株は総じて草体が小ぶりであり改良の過程でヒメガマかコガマか、何らかの交配が成された可能性がある。

 自生種と異なり葉に斑が入り、花穂が出ていない時期にも鑑賞できるように改良されている。 花期は6〜7月頃、自生種と同様の時期に開花するが実生に関しては未確認。

(P)2015年6月 東京都(公園植栽)
2015年6月 東京都 公園植栽 同左
標準和名 モウコガマ 学名 Typha laxmannii Lepech. 生活型 多年草 自生環境 湿地
外来生物:外来生物法指定なし

 中国東北部(内蒙古)からヨーロッパにかけて自生するガマの仲間。日本にはビオトープ用など育種目的で持ち込まれたものが帰化したらしい。帰化の状況はさほど広範囲ではなく、これまでに北海道、神奈川県、千葉県、兵庫県などから報告がある程度。茨城県では公園に植栽されたもの以外には確認されていない。排他性や在来種との交雑の可能性など詳細は不明である。コガマに似るが穂がややズングリし丸みを帯びている。
 草丈は1m〜1.3m程度でありガマより小型である。雌雄同株で花は単性、上記の通り特徴的な花序を形成、上部に雄花、下部に雌花部を付る。雌花部は短く数cmである。

 この種が自生する中国東北部(内蒙古)は荒涼としたイメージと異なり、比較的湿潤な地形が多く、日本では絶滅寸前のカラフトグワイなども相当残存しているらしい。「近い」外国であるが、開かれたと言っても日本語も英語も通じない観光コースから外れた地域であって、詳細な調査が事実上不可能な場所なのが残念だ。

(P)2010年9月 茨城県
2010年9月 茨城県 穂はずんぐり丸い 同左
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