日本の水生植物 水生植物図譜
アカウキクサ科 Azollaceae
絶滅危惧種表示:環境省レッドリスト2015準拠
外来生物表示:外来生物法第八次指定
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アカウキクサ属

アカウキクサ属 Azolla
標準和名 アイオオアカウキクサ 学名 Azolla cristata × filiculoides 生活型 多年草 自生環境 水田
外来生物:外来生物法指定なし

 外来種アメリカオオアカウキクサ(Azolla cristata、特定外来生物)とニシノオオアカウキクサ(Azolla filiculoides)の交雑種とされる。アゾラ農法の効率化やアイガモ農法の餌不足のために人工的に交配された、という説もある。
 肉眼で観察する限りオオアカウキクサやアメリカオオアカウキクサと区別が困難だが、葉に水を弾くための微細な突起があり、1細胞のものと2細胞のもの、両者が混在して見られるのが種としての特徴となっている。

 霞ヶ浦沿岸部のハス田にはオオアカウキクサ(広義)の繁茂した場所が無数にあるが、在来種のみならず外来種、またこうした交雑種も多く入り込んでいるという。筑波実験植物園の解説(下右画像)によればアイオオアカウキクサは「在来種のオオアカウキクサの生育を脅かしています」とあり、母種であり特定外来生物に指定されたアメリカオオアカウキクサ(アゾラ・クリスタータ)同様に強い排他性を持っている可能性が強い。

(P)2011年8月 茨城県(筑波実験植物園)
2011年8月 茨城県(筑波実験植物園)
在来種を圧迫しているようだ
同左 オオアカウキクサよりもやや平面的か
標準和名 アカウキクサ 学名 Azolla imbricata (Roxb. ex Griff.) Nakai 生活型 多年草 自生環境 水田
環境省レッドリスト2015:絶滅危惧TB類(EN)

 一般的に発生から夏にかけては緑色で、10〜11月ごろ赤く紅葉する浮草。紅葉については諸説あるが、昼と夜の気温差、日照条件が関わっているらしい。いかなる条件によるか冬近くなっても緑色のものもあるし盛夏でも赤い群落もある。
 本種はアゾラの性質を利用した「アゾラ農法」で用いられる有用植物である。すなわち、大気中の窒素を固定して栄養分とする性質により肥料分の無い環境でも植物体を鋤きこむことで窒素分の補給が出来る。また、水面を覆ってしまうことで他の雑草の発芽を抑制する。

 増殖は植物体の分割によって行われ、時に水面を埋め尽くす勢いで分裂を繰り返すので、採集はごく少数で十分。環境省RDBでは絶滅危惧II類(VU)絶滅の危険が増大している種(レッドリスト2015では絶滅危惧TB類(EN))とされている。類似種のオオアカウキクサはより立体的で全体が三角形にならない。

(P)2003年9月 茨城県(自宅育成)

2006年9月 茨城県(自宅育成)
標準和名 オオアカウキクサ 学名 Azolla japonica Fr. et Sav. 生活型 多年草 自生環境 水田
環境省レッドリスト2015:絶滅危惧TB類(EN)

 近所の水田産であるが、正直なところAzolla japonica なのかどうか分からない。アゾラ農法のためとも言われるが外国産アゾラの逸出や種間交雑も激しく種の特定には大きな困難が伴う。フロラからオオアカウキクサとしたが正解であれば絶滅危惧種、外国産アゾラであれば特定外来生物、と両極端な結果になってしまう。
 アカウキクサとの見分けは容易で、アカウキクサは草体がやや平面的な三角形となるのに対し本種はやや立体的で鳥の足のような形となることで区別出来る。本種には但馬型と大和型という「型」があり、全国で一般的に見られるタイプは但馬型、である。これもオオアカウキクサであれば但馬型であろう。

 水田や土浦市近郊のハス田を見るに、なぜRDBなのかという疑問が湧くほど殖える。自宅でも毎年大量に間引きが必要な程で、アカウキクサとともに園芸用肥料として利用しているぐらいだ。本種もアカウキクサ同様に紅葉するが、挙動は同じで似たような条件下で見事に赤くなるものと緑色のままのものがあり、詳しい要因は分からない。

(P)2005年8月 茨城県
2010年8月 茨城県 サイドヴュー 同左 拡大

2005年11月 茨城県 水面を埋め尽くす本種。日向のものは紅葉している
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