日本の水生植物 探査記録
Vol.178 台風直前下総行脚

Location 千葉県山武市・香取市
 Date 2018.06.09(SAT)
Photograph
OLYMPUS OM-D E-M1 / ED 30mm F3.5 Macro
OLYMPUS OM-D E-M10 / ED 40-150mm F4.0-5.6 R
SONY CyberShot DSC-WX500
Weather
Cloudy and partly sunny
Temperature
28℃
            (C)2018 半夏堂

台風前の定点観測


(P)開花が始まったヤマサギソウ
OLYMPUS OM-D E-M1 / ED 30mm F3.5 Macro

成東・東金食虫植物群落

特記事項なし


 まだ6月というのに早くも台風だそうだ。翌日は雨の予報、以降、なし崩し的に梅雨に突入するらしいので定点観測もしばらくお休みにならざるを得ないと思い、久しぶりの房総方面へ。それにしてもこの時期に台風接近とは気候変動も財務省の頭並みに狂ってきたようだ。各地で徐々に植物の開花時期も変化してきたと聞く。

 定点観測というか、成東・東金食虫植物群落は自分のメインの観察フィールドの一つだが、こうも何度もご紹介しているとさすがに書く事がなくなって来た。変化と言えば今回久しぶりに電車で行ったのだが成東の駅舎と駅前が綺麗になっていて少し驚いたことぐらい。
 町村合併で山武市となってもしばらくは何の変化も感じられなかったが、とりあえず市の玄関口と駅前ローターリーぐらいは整備しよう、という所だろうか。悪いことではないと思うが、旅行者的視点で言うと「ここまで来た」感がスポイルされるような気がする。(たまに訪れる人間の勝手な言い分であることは百も承知)

 もう一点、変化したのは以前駅から歩いた時には「ちょっとしんどいな」と感じた道のりが、やや物足りない距離に思えたこと。この所、毎週のように渡良瀬遊水地や日光で長距離を踏破しているのでいつの間にか「鬼足」になっていたようだ。基礎代謝も免疫力も上がってきた(*1)ような気がする。意識してなるべく車を使わないようにしてきた効果かも。ただ蒸し暑いのには辟易したが、暑くない冬にこれらのルートを歩いても植物観察ができないので「歩くだけ」になってしまうので仕方がない。汗をかくのも健康のため。そのように考えるようになったのは、そろそろ健康寿命が気になって来た人生の夕暮れか。

 食虫植物群落に到着すると「夕暮れ」どころか真夜中に突入している(失礼!)高齢者軍団の見学者がわんさか居た。2名のガイドは対応に追われている様子ながら、受付(*2)を済ませた私に「ガイドは必要ですか?」と聞いてくれた。何度も来ている上に植物は普通の人よりやや詳しい。逆にガイドができそうなぐらいなので丁重にお断りさせて頂き、軍団のいないエリアから見てまわった。何度も書いているが、自分が湿地を見て歩くのは植物観察もさることながら「孤独を楽しむ」という大きな目的もあるのだ。そのくせ人に聞かれるとそれこそガイドをしてしまう。根っから良い人なのか、はたまた自己顕示欲が強いのか、それとも両方なのかいまだに自分で自分が分からない。

 この時期、この湿地は何と言ってもイシモチソウである。湿原一帯白い花が開花し、全部で何百株、何千株あるのかいたる所で見ることができる。また、個人的な興味からは外れているがノハナショウブの大群落。こちらもあちこちで全盛期を迎えている時期だ。そういう華やかな植物に背を向けてゴウソやハナビゼキショウなど地味な植物の撮影をしていると、いつの間にか高齢者軍団の1グループが近づいてきた。
 曰く「アヤメが綺麗に咲いている」「ショウブの時期だねぇ」。いや、それは「アヤメ」ではなくノハナショウブだから。アヤメという植物はそもそもですな、それとショウブは、と突っ込みたい所を我慢して心の中で「アヤメが見たいなら佐原に行けば、ちょうどアヤメ祭りやってるし・・・」と思った。・・・ん?佐原?そう言えば何かあったな。そうだ、佐原のコウホネが宿題になっていたと思い出し、時間もまだ早いので自分が佐原に向かうことになった。
 まだ初夏に入ったかどうかという時期、開花状態に不安はあったが、これまで坂戸市、佐野市、日光市、確認せずに適当に行ったがコウホネ(広義)はすべて咲いていた。行けば咲いているだろう、と理屈にならない理屈で自分を鼓舞し成東駅に戻った。


(P)アヤメではないです、ノハナショウブです OLYMPUS OM-D E-M1 / ED 30mm F3.5 Macro


【6月の食虫植物群落】
この時期、白い花はほぼイシモチソウ
OLYMPUS OM-D E-M10 / ED 40-150mm F4.0-5.6 R
ノハナショウブ、下草はノテンツキ
OLYMPUS OM-D E-M10 / ED 40-150mm F4.0-5.6 R
第二エリアの一部はカルガモの巣があり立ち入り禁止
OLYMPUS OM-D E-M1 / ED 30mm F3.5 Macro
作田川より遠景、そろそろ雲が怪しい
SONY CyberShot DSC-WX500
佐原小野川

景観地区


 成東(山武市)から佐原(香取市)は距離的にはたいしたことがないのだが、なにせ乗り継ぎが絶望的に悪い。特に佐原へ向かう成田線はほぼ1時間に1本、最近は外国人観光客も多いはず、これは何とかならないだろうか。
 成東(総武線)で1時間待ちの間に、例によって駅のコンビニ(以前はなかった)でパンを二つ昼食代わりに食べ、成田で40分待ち、昼過ぎに食虫植物群落の見学が終了したと思ったのに佐原に到着したのは3時過ぎ、観光立国が泣くほどのアクセスの悪さである。

 佐原は相変わらず写真素材の宝庫、レトロで郷愁をかきたてる建造物がいたるところにある。今回、突発的に来てしまったのでモノクロ写真が納得できるPEN-FもTZ85も持ってきておらず残念なことをしたが、メインの目的は宿題のコウホネであるのでそれは忘れることにした。
 今回はあえて留守番させたが、フィルムカメラに生産終了のACROSの買いだめもある。次回は「なんちゃって」モノクロではなく本物で撮影しよう、と思いつつ。レトロな街だがそう思わせる「ブツ」も見つけてしまったのだ。(後述)

 日本に来る外国人観光客は、従来の定番であった京都や富士山といったメジャーな所から、地方の味を求めて多様化しているというが、ここ佐原にも欧米、アジア系、様々な人種が多かった。しかし日本人でもよく知らないし来訪しにくい「穴場」のような佐原の街をどうやって知るのだろうか。(まっ、成田に近いと言えば近いが)彼らが一様に目を向けているのはこの項に掲出した写真のような建物であり、私と同じ、昔の日本的なものを興味の対象としているに違いない。彼らの大先輩の小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)も同じ趣味嗜好で日本に住み着いたぐらいなので分からなくはないが、情報がどこでどのように出回っているのか見てみたい気がする。

 こういう景色を歩いていると自転車に乗った波瑠やダイハツTOCOTを運転する吉岡里帆(*3)が通りそうな感じだが、小野川沿いは観光客が多く、地元生活者の自転車や車も白い目で見られるような有様、観光収入は大きいと思うが一面迷惑な話だな、とも感じた。歴史的建造物のなかには「ここから先は居住エリアなので立入りをご遠慮ください」といった表示を行っている所もあって、大変だなぁと思った。自分の立場に置き換えてみれば、昼飯食っている最中に見物客が乱入してはたまらない。観光も植物見学も「節度」こそ肝要。
 正直、栃木の蔵の街や日光の建物はそこはかとない「あざとさ」が感じられ、観光客への擦り寄りも雰囲気的に多少あるような気がする。しかしここ佐原は実際に生活で使用される「本物」であって、本物のみが持つ迫力も感じられるのだ。その迫力をコンデジ1台で写そうとは僭越だが、あまりの乗り継ぎ待ち時間に「あとはコウホネだけだから良いか」と、メインのカメラ2台はレンズを外してカメラバックにパッキング、バックパックの底に収納してしまったのだ。
 もう一度出して組み立てるのも吝かではないが、マイクロフォーサーズだと安いレンズを組み合わせた場合(というか、安いレンズしか持っていない)、システムが最適化(*4)されたコンデジに写りが負けるのである。大きく引き延ばせば話は別だが、ブログやWeb程度ならこれで十分かな、というのもあった。マイクロフォーサーズはプロも含めてユーザーがおしなべて高価なProレンズ(製品名にProと入っている)を推すが、実のところ「並」レンズとの格差が大きすぎて笑ってしまうほどなのだ。オリンパス伝統の「松竹梅」、竹のPremiumレンズ単焦点を使ってやっと普通である。Canonはそんな事はなく、安いレンズでも写りが良いものは結構ある。今のところ笑っているがそろそろ怒りも感じて来た。


(P)長時間眺めていても飽きない立派な木造建築 SONY CyberShot DSC-WX500


【佐原景観地区】
現役の医院の建物だ。これはすばらしい
SONY CyberShot DSC-WX500
実際に使用されている木造建築が多い
SONY CyberShot DSC-WX500
古いオジサンにはたまらんレトロ
SONY CyberShot DSC-WX500
こういう電線も久しぶりに見た
SONY CyberShot DSC-WX500

河骨


 メインの目的のコウホネ、小野川沿いには両岸のほとんどに遊歩道が設置されており、また随所には船着場に降りられる階段もあって観察しやすい。ただし歩いている観光客が多いので川ばかり見て歩いているとぶつかってしまうので注意が必要だ。

 当所のコウホネは前回Vol.170 水郷の街を散策するで触れたように地元では「ナガバコウホネ」として扱われている。しかし一般には通常のコウホネ(狭義)と同一視する見方も有力で、何が違うのか抽水葉を上げ開花する時期に見ておきたい、と考えたのが前回、自分に課した宿題である。これだけだったらどうでも良いのだが、探査記録過去記事で書いたようにコウホネが気になる理由もあったためである。
 そんなもの、誰か調べるだろうと考えられれば気は楽だが、こういう「テーマ」がないと休日はゴロゴロしているだけになってしまう。時間はいくらでもある、と考えられる程もう若くはない。前項で書いたように「健康寿命」というものもある。長生きしても動けなければ意味がないじゃないの。(自分への言訳)
 小野川に出てすぐに抽水葉と複数の花芽を上げた群落があり、望遠レンズ代わりのWX500の30倍ズームで観察&撮影を行ったが、たしかにコウホネとの明瞭な差異は確認できない。「ナガバコウホネ」というがコウホネ(狭義)も抽水葉、沈水葉はどちらかというと細長い。多少の変異があったとしても、それは「幅」、つまり種内のマージンなんじゃないの、と思った。しかし・・・
 群落は意外な程あちこちにあって様々なパターンを観察できたが、驚くことに半数は沈水葉群落であった。先般埼玉県坂戸市の飯盛川で見たコウホネは同一河川とは言いつつ数100mの距離を置いて抽水葉群落と沈水葉群落が存在していたが、こちらはほぼ同一の場所で両者の群落が見られた。これで謎が解けたような気がするが、少し考えたいこともあるのでここには結論を書かない。
 さらに下流に歩いて行くと見て良かったのか見なかった方が良かったのか、柱頭盤の色が変わった花を発見した。これで「書かない結論」的には「なるほどなぁ」ということになったわけだが、もちろんこんな場所(*5)にはシモツケコウホネもナガレコウホネもない。もちろんオゼコウホネやサイジョウコウホネもない(はず)。このコウホネ属に関する深いようで浅い結論は項を改めたい。

 それにしても利根川水系標準の水質、しかもこれだけ船外機を回した観光船が行きかう河川によくこれだけのコウホネ群落があるな、と思った。もともと強い植物なのだろうけど、湧水起源とされる埼玉県坂戸市の飯盛川でもこれほどの密度では群落がなかった。近所で見られる群落は規模が小さく「群落」と呼べるかどうか微妙なほど。この植物の「壺」が何なのか、それも興味が出て来た。


コウホネが自生する佐原の小野川 SONY CyberShot DSC-WX500


【佐原小野川のコウホネ】
沈水葉群落
SONY CyberShot DSC-WX500
ちょっと待った!柱頭盤の色!
SONY CyberShot DSC-WX500
佐原補遺

レトロフューチャーの街


 川があれば船があって金を払えば乗せてくれるのは、我が県にある水郷潮来(*6)も同じだが、世界各国このビジネスの「形」は概ね同じようで、その昔ベニスで乗ったゴンドラも船外機が付いていて著しく風情をスポイルしていた。この観光船も同じで、スゲ笠をかぶりタオルを首に巻いた良い味を出した船頭もライフジャケットを着込んで船外機を操作している。いかにも櫂で漕いで舟歌を歌いそうな親父だが見事に旅行者の期待を裏切っている。
 しかしそれは仕方がない部分があって、この小野川、けっこう流れがあるのである。下流に客を運んでいくだけならまだしも帰りは流れに逆らわなければならないわけで、いくら取るのか知らないが僅かな乗船料ではそれはキツイだろう。

 という話はさておき、おまけに(こっちが強く印象に残っているのでメインのような気もするが)佐原で見た興味深い文物を2つご紹介したい。

 まずは地番。この景観地区一帯の地番は「佐原イ」というようだ。このパターンはたまに地方都市に存在するが、色々考えて地名を付けるのが面倒なのか、これが昔流の合理的考えなのか、地番に「イロハニホヘト」を使用する場合がある。場所により「甲乙丙」パターンも存在する。その場合、佐原のように地名が付与されず、いきなり〇〇市甲、と名乗る場合も。
 念のため後日Yahoo地図で調べてみた所、佐原イから始まってロ、ハ、ニ、ホまで存在するようだ。一丁目、二丁目、でも良いような気がするが、これはこれで面白い。時代が進むにつれて「イロハ」を知らない世代が増えて「何それ?」という話になるかも知れないが余計な心配か。それこそ今だって甲乙を知っている世代がどれだけ残っているのだろう。

 二つ目。佐原駅から景観地区への道沿いにあったカメラ店のショーウィンドウ。もちろん中古カメラ販売ではない。それが何より証拠にはカメラに値札が付いていない。2台並んだCONTAXは167MTとRTSV。それぞれPlanarとVario-Sonnarが装着してある。レトロと言うほど古くはないが、京セラ(*7)は2005年にカメラ事業から撤退しているのでかれこれ10数年。表通りに面したショーウィンドウなので「売る気」が皆無な並びなのが気になった。ちなみに両脇にもOM1(フィルム)やマミヤの中版カメラのような機材が並んでおり単なるコレクションの公開かも知れない。(思い切り西日が当たるのでそこそこにした方が良いかも)
 個人的には先頃、手元に残っているヤシコン(*8)Zeissレンズの母艦として167MTとRXを入手したので167MTはもういらないが、RTSVは安ければ欲しい。なにしろCONTAXのフラグシップの最終生産モデルである。当時の価格が30数万円という、カメラ小僧のあこがれNikonF5を凌ぐ超高級機、今の相場は3〜6万円ぐらいだと思うが、値札があって3万数千円の値が付いていれば間違いなく買っていたと思う。我ながらアホだが欲しいものは欲しい。


 佐原の街は歩いていると場所によって10数年〜50年程度のタイムスリップ感が味わえる。カメラや地番はともかく、そして歴史的建造物もさておき、普通のスーパーや商店もどことなく「現在」を忘れている。時間の流れがゆったり、というのはこういう事を言うのだろう。こういう街は貴重だし、今まで訪れた国内外の街にはない雰囲気がある。オンリーワンである。先に「アクセスが絶望的に悪い」と書いたが、この街に流れる時間には1時間に1本の電車でも十分なのかも知れない。


(P)小野川の観光船。ちょうど1時間に1本の電車が通過した SONY CyberShot DSC-WX500


【佐原レトロフューチャー】
住所表示 珍しいカタカナ地名、しかも1文字
SONY CyberShot DSC- WX500
カメラ屋のショーケース 167MT & RTSV
SONY CyberShot DSC-WX500
脚注

(*1) 歩行と免疫力の関係は以前書いたと思うが、基礎代謝の方も重要である。何が重要って基礎代謝が高ければ同じものを同じ量食べても太らないことだ。何もしていなくてもエネルギー消費量が大きい、なんという福音だろうか。そしてその基礎代謝の量を左右するのは太ももの筋肉という説が有力である。要するに「正しい歩き方」で歩行すれば健康になれるというもの。こう考えてここの所車を使わない湿地まわりをしているが、正直言うと「車で来れば良かった」と思ったことは2度や3度ではない。

(*2) 成東・東金食虫植物群落では「作法」として来訪時に管理棟でモロモロ記入することになっている。個人情報レベルではなく、都道府県、来訪手段、来訪回数程度だが、ボランティアで維持管理を行っている方々には何よりの励みになっていることが想像できる。記入することでパンフレット、開花スケジュールなどを頂けるが、主だった植物の情報が網羅されており価値の高い資料である。

(*3) 波瑠が出演する大同生命のCMロケ地はここ佐原である。テレビCMをはじめて見た時に街なみにピンと来たが、俯瞰した町の中央にあるNTTの電波塔で確信した。普通の地方都市であればこういうのがあると大々的にアピールするものだが何の痕跡も残していないのは佐原の奥ゆかしさか。自分の地元、茨城県取手市では市出身の竹吉優輔という作家が書いた「レミングスの夏」という作品が映画化され、ロケ地も地元だったので大々的に騒ぎとなったことがあった。(現在でも余波が残っている)まったく奥ゆかしくないねぇ。他に何かないんかい、と言っても何もないのは事実だが。
 さらに分かりやすいのはダイハツTOCOTの「花輪くんの路駐とすれ違い編」CM。最も佐原らしい小野川沿いの伊能忠敬旧宅付近の道路。佐原に観光に行く人はほぼ確実に歩くはずの地点だ。他にも少し前のCM(大杉漣も出演していた)だが、巨大なオロナミンCのオブジェがある町も佐原。(オロナミンはCG合成)

(*4) 特に今回強く感じたのは、OLYMPUS OM-D E-M10のレンズキットに付属していたED40-150mm F4.0-5.6 Rの駄目っぷりで、本記事の写真、イシモチソウとノハナショウブ(群落の方)はこのレンズで撮影したが解像感が悪くぼやけた印象もある。キットレンズの安物に期待するのが間違いなのかも知れないが、キヤノンのEOS Kissのレンズキットに含まれる55-250の望遠ズームは評価が高い。(70-200があるので買いませんけどね)この部分でビギナーの取り込みを図って行かないとなかなかトップランナーとの差は詰まらない。
 対してコンデジ、レンズ交換式ではないので後にも先にも付いているレンズが全てである。全ズーム領域できちんとした撮影が出来るように設計されているのは当然で、もっと言えばセンサーが小さい分、その小さなセンサーで画像が最適化できるレンズを設計しているわけで、コストはかかっているはず。コンデジのわりにこの価格帯のものはこれぐらい写って当然なのである。

(*5) 小野川は市街地を流れるいくつかの河川が合流し利根川に注ぐ「ごく普通の」河川である。シモツケコウホネやナガレコウホネが自生する栃木県とは距離もあるし水系が直接繋がっているわけでもない。その意味で「こんな場所」である。もっとも「ナガバコウホネ」がある、と県が言っているぐらいなので基礎的な調査は行われたはずで、その段階で栃木県にしかない希少種が存在すれば大騒ぎになっているはず。

(*6) 霞ヶ浦から流出する常陸利根川と北浦に挟まれた地峡部にある茨城県の市。交通アクセスの悪さはそれこそ佐原の比ではなく、東京方面はその佐原から分岐する鹿島線のみ。今回の訪問の帰りには成田線の電車が「鹿島線の接続を待ってから発車します」ということで遅延している。そりゃ鹿島方面から東京・千葉方面へ行く人達は電車の接続がなければ佐原で1時間待つようで気の毒この上ない。潮来の先の鹿島はアントラーズで有名になったが、高速道路も潮来IC(東関東自動車道)で打ち止め、救急医療も危ないと言われるほどの街である。みんなでアントラーズの試合を見に行って盛り上げよう!

(*7) 京都セラミックと言った昔から優良企業として知られているが、経営戦略的・財務的に優良企業だけあって見切りが早い。客観的に考えればカメラ事業を継続していたとしても鳴かず飛ばずだったはず。専門のコニカ、ミノルタ、ペンタックスが次々とダメになっている事実がそれを証明しているが、マニアとしては今こそZeissレンズを使うMFオンリーの高性能デジタル一眼レフ(もちろんブランドはCONTAX)が欲しいような気がする。デジカメ黎明期にはプロトタイプ的なデジカメはあったが、今のコンデジどころかスマホにも劣る性能だったようだ。(それでもCONTAXなので価格は高い)

(*8) 日本でのCONTAXブランドはツァイス財団がメーカーを物色し、弱小のヤシカと提携してカメラ・レンズを作らせた経緯がある。そのマウント規格を会社とともに吸収したのが京セラ。富岡光学、ヤシカ、京セラと続くマウント規格をヤシカ・CONTAX、略して「ヤシコン」と呼ぶ。弱小のヤシカに白羽の矢を立てたのは、EFレンズやニッコールレンズ、ズイコーレンズなど自社ブランドを持っている大手のキヤノン、ニコン、オリンパスなどに提携を持ち掛けても秒殺で断られるだろう、という読みだろう。
 ヤシコンが消滅した現在、ZeissレンズはCOSINAがライカMを含む各社マウント用を、SONYがEマウント用を自社で生産しているが、こういうブランド賃貸、知的財産に特化したビジネスモデルは今後日本でも主流になるかも。しかしCONTXという名前の入ったカメラに装着しないZeissレンズに一抹の寂しさを感じるのは私だけだろうか。


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