日本の水生植物 | 水草雑記帳 Field Note |
科名植物交雑種起源 タヌキモの由来 |
(C)半夏堂 |
Field Note タヌキモの由来 |
開花するノタヌキモ 2009年9月 自宅栽培 |
Chapter1 解明された謎 |
結実しないタヌキモ 突然だが、そもそも「狸」は「タヌキ」なのか「ムジナ」なのか。植物としてはこれに「モ(藻)」が付くと、前者はわりと普遍的な水草、後者は極め付きの希少種になるが、別な読み方もあってなかなか難しい。ムジナは狸ではなく狢ではないかと思うが、郷土料理ムジナ汁はタヌキの肉なので混同もされているのだろう。 近隣の「つくばみらい市」という市に狸渕、狸穴という地名がある。読みは前者は「むじなぶち」、後者は「まみあな」で、こうなるとさらに「まみ」という読みも出てくる。反射的に「タヌキ」と読んでしまう実在の動物名もこうして考えると一筋縄では行かないようだ。 なぜこんな話をしているのかと言うと、本稿テーマのタヌキモも読みに紛れはないものの正体が定かではない時代が長かった「謎の植物」であったからである。そんなものがあるのかどうか分からないが「水草界」では長らくタヌキモは結実しない、とされてきた。被子植物であるタヌキモが結実しない理由はいくつかあるが、代表的には以下のような所だろうか。 (1)交雑種である・・・異なる染色体数の植物同士の交雑 (2)3倍体である・・・種としては同一だが耐寒性のある3倍体が残った (3)種子による世代交代が稀で見過ごされてきた・・・似たような植物がないことはない 交雑種がなぜ結実しないのか、おさらいとして書いておくと交雑種は奇数の染色体セットを持ち減数分裂しないからである。ヒガンバナの2倍体(染色体22)とショウキズイセン(染色体12)との交雑種であるシロバナマンジュシャゲという種があるが、交雑の発生するプロセスで、染色体分裂(ヒガンバナ22÷2=11、ショウキズイセン12÷2=6)が発生し、11+6=17、奇数の染色体を持つシロバナマンジュシャゲが誕生した、という寸法。言うまでもなく奇数は2で割れない。(減数分裂不可能)従って結実もできない。 沈水植物でも似たようなプロセスで誕生したインバモやオオササエビモなどがあり、ほとんどが稔性(注1)を持っていない。仕組みは上記シロバナマンジュシャゲと同様である。交雑種には稀に稔性を持つものもあるので100%というわけではないが、基本原則は同じ。本コンテンツで追っているイサリモもヒルムシロ科の何らかの交雑種と推定されるが、かなりの確率で不稔であるはずなのでシードバンクからの復活は期待できないだろう。これらの交雑種は雑種強勢と言われるように栄養増殖による繁殖はめざましいが、一方で種子がない分株が絶えれば復活はしない。新たに同じ組み合わせの交雑が発生すれば良いが、下手をすれば両親とも絶滅危惧種になっているような現状なのでそれも難しいだろう。 (2)に付いては種内の通常の個体(2n、二倍体)と同質四倍体 (4n) との交雑で生じるが、もともとどちらも同種であって外見的な相違がない。ただし染色体は2/2+4/2=3であるので稔性がない。一方、一般に三倍体は二倍体より草体も大きく発育も盛んであるとされ耐環境性能において優れている。通常の二倍体が様々な理由で淘汰され、三倍体が残ったのではないかという「説」。ただし草体が大きいと言っても個体差、生育環境による差異もあるので目視では確認できない。素人レベルでゲノム解析ができない以上、実生がゼロであることを確実に確認して推測するしかない。 種子による世代交代は多年草にとって必須というわけではなく、根茎や殖芽など様々な手段で越冬できる。極端な例だが水生植物のヒルムシロは種子は生産するが発芽率は2%程度と言われており、かく言う私も長年育成しているが実生株は確認していない。ヒルムシロは結実自体は行なうが、目に見える結果としては同じ、という「説」。しかしこうなると上記(2)と区別が難しい。 (P)タヌキモ 扁平な捕虫嚢が見える Utriculariaの語源(ラテン語のutriculus、小さな嚢、小気泡) 2013年7月 茨城県 解明された謎 この「謎」であるが、2005年にゲノム解析他(交配実験と葉緑体DNA分析、AFLP分析)によってタヌキモはイヌタヌキモとオオタヌキモのF1雑種であることが確認された。尚、母種はイヌタヌキモ、父種はオオタヌキモである。上記仮説(1)が正解だったわけだ。こういう分析手法はガチな文科系人間である私には内容がサッパリ分からないが、長年の謎を一発で解き明かす画期的な手法である、という程度には分かる。 どれだけ画期的かというと、近年の被子植物分類であるAPG(注2)はゲノム解析による分類であるが、これによって伝統的な分類が大幅に変更になっているのである。言わば従来、花の構造や草体の特徴など「見た目」で判断していた「ノリ」が事実はそうではない、と宣告されたようなもので、ハインリヒ・グスタフ・アドルフ・エングラー(新エングラー体系の創始者)やアーサー・クロンキスト(クロンキスト体系の創始者)が一挙に古色蒼然たる歴史上の人物になってしまったわけである。クロンキスト体系など1980年代に出て来たもので、私のような年代の人間にとって1980年代など、つい最近のように思える。科学の進歩が加速度的であることが実感として理解できる話だ。 というわけでタヌキモ科タヌキモ属の科名、属名植物タヌキモはイヌタヌキモ、オオタヌキモの交雑種であると確定された。意外な展開と言えば意外だが(科名、属名植物が交雑種だった、という点で)、同じ水生植物のスイレン科にいたっては科名植物自体が存在しない。これらに付いては科属の分類ベースが上記の旧植物分類によって成されたものであり、遺伝子レベルで解析したものが正解であることは間違いない。 残る謎として、「父方」であるオオタヌキモは北方型の植物なのに、タヌキモはなぜ全国に分布するのか、という点。これはタヌキモの草体が渡り鳥によって伝播した、とされる説やオオタヌキモがかつて全国に分布していたのではないかという説など諸々考えられるが、こればかりは遺伝子の解析でも分からない。たぶんどちらかが正解なのだろうが、検証しようとしても、結末は物証のない刑事事件のようなものだろう。 |
Chapter2 減少傾向 |
犬と狸 以上のようにめでたく?タヌキモの母種と確定したイヌタヌキモだが、「水生植物あるある」で、役に立つ植物に似ているが実は役に立たない=”イヌ”+”元の植物名”のパターンである。イヌガラシ、イヌゴマ、イヌセンブリの流れである。 結果的に犬と狸、2種類の動物名を持つイヌタヌキモだが、そもそもタヌキモが何かの役に(人間にとって、だが)立っているのか、というと正直全く思い付かない。客観的に考えればタヌキモは一般的に資源として利用された形跡もなく、なぜあえて”イヌ”を冠した和名が付与されたのか謎と言えば謎である。 さて、犬と狸、どちらもごくありふれた動物だ・・・と書くと犬はともかく狸なんて見たことがない、と仰る都会の方も多いだろう。ところがどっこい、彼らは都市部でも増加している。夜行性なので気付かれにくいのかも知れないが、相当な個体数が生息していると推測されるのである。雑食性で適応範囲も広いので彼等にとっては生活上は都会も田舎も大差がないのかも知れない。 とてもおこがましくて「都市部」とは言えないが、自分の居住地付近では狸は実によく見かける野生動物で、新品のカメラを買った際に試写しようと家の玄関を出た瞬間に狸と目が合って撮影したことがある。新品カメラの輝かしいファーストショットが狸君。特に周辺に里山が多い「常総ふれあい道路(注3)」では、朝車で通ると1kmあたり1匹程度のタヌキの轢死体を見かけることが多い。道路に設置された動物注意の標識の絵柄もタヌキである。こうして人間の生活圏に順応して生存しているタヌキだが、これに「モ」が付いた水生植物の方はかなり状況が寒い。 同属の中ではやや普遍的なタヌキモ属のイヌタヌキモだが、近年のレッドリストでは準絶滅危惧(NT)に指定された。「父方」のオオタヌキモも同様に準絶滅危惧(NT)である。両種の子であるタヌキモも交雑種ながら(注4)同様となっている。要するにレッドデータでは総じて減少しているとされている。レッドデータが100%正しいとは思わないがこれは水生植物の一般的な傾向であり、従来見られた場所で見られなくなった、というケースがタヌキモ(広義)において最も頻度が高い気がすることも事実。もちろんタヌキモ以上に消えた水生植物も多いが、水面近くに浮く生活スタイルの植物は妙に存在感があり印象に残っているためかも知れない。 (P)イヌタヌキモ レッドデータ記載種ながら自然下では最も見かける機会が多い 2011年6月 茨城県 減少傾向 タヌキモ属の全般的な減少傾向に付いての理由は正直よく分からない。安定して増殖している湖沼もあるが、消滅するとまったく無くなってしまう湖沼も多い。化学的な分析はしていないが(しようと思ってもできないが)、目視する限り両者(増殖する湖沼と消滅してしまう湖沼)に致命的とも思える水質の変化などは見られない。 もちろん水生植物の存続条件の重要な指標である水質は目視、つまり透明度や藻類の繁茂度合いなどでは測れないが、長年水草を探して色々な水面を見ているので、水生植物が存在しそうな雰囲気、というか機微のようなものは感じることができる。 茨城県内ではタヌキモ属が見られる湖沼でもイヌタヌキモだけ、など1種類のみの自生が多いため生態的地位(注5)をめぐる同属他種との競合が激しいのか、あるいは同属他種に対する排他性(アレロパシー)が強いのかと思ったが埼玉県の宝蔵寺沼(ムジナモの最後の自生地だった沼)ではノタヌキモとイヌタヌキモが仲良く共存していたのでそんな事はないのだろう。 タヌキモ属の植物は育成下でも種類を問わず、持て余す程に増殖したかと思うと、明確な思い当たる理由もなく突然絶えてしまうことも多々あり、ムジナモ程ではないまでも気難しさを感じる植物だ。そして上記の通り、育成下でも水質の変化はない。(と思う)栄養補給の手段であるプランクトンの密度なのか、光合成のための密度なのか、あるいはその両方なのか、はたまた全く別の未知の理由なのかタヌキモのみ知る、といった所か。結果的に近隣の自生地では減少傾向が甚だしく、見られる種類も減ってしまっている。一つの傾向として、レッドデータではタヌキモ属植物は以下の通りとなっている。 (P)埼玉県法蔵寺沼 中央イヌタヌキモ 右上ノタヌキモ 2011年6月 埼玉県 *帰化種含む *レッドデータ区分は環境省レッドデータ2017による
こうして見ると実にタヌキモ属植物の半数近くが絶滅危惧種になっている。タヌキモ属が全体的に減少傾向であることはデータ上からも明らかであるが、レッドデータに記載されていない種であっても現実的に見かける機会が激減しており、フィールドワーカーの感覚としても減少傾向は間違いない所だろう。 一般的にタヌキモ(ミミカキグサ、ムシトリスミレの仲間を除く)は貧栄養の水域を好むと言われている。例えば富栄養を好むヒシが繁茂している池にはタヌキモは無く、貧栄養を好むジュンサイがある池では良く見つかる、とも言われている。タヌキモ(広義)の「餌」とされるプランクトン(注6)の多くは富栄養で個体数を増加させるので「タヌキモは貧栄養を好む」と実態が乖離しているような気がするが、タヌキモも植物であって、光合成によるエネルギー調達も可能なので絶対条件ではないと思う。 と考えれば、タヌキモの存続条件は「プランクトン<導電率」ということも言えるかも知れない。食虫植物ということで「食虫」に注目されるが、食虫での栄養補給は補助的な手段と考えればこの説も妥当性がある。多少特殊な生活をしていてもあくまで植物なのである。 右画像はタヌキモが貧栄養の水域を好むという説に対する逆説的な「証明」だが、ヒシやハスが繁茂する富栄養のため池にイヌタヌキモが繁茂している絵である。上記のように県内近隣ではタヌキモ(広義)は次々と消滅しているが、元々自生していた湖沼はおしなべて富栄養である。なにしろここは霞ヶ浦、手賀沼、印旛沼をはじめとする富栄養湖沼上位ランキング常連が集中しているエリアだ。それも昨日今日始まった話ではなく、少なくてもここ数十年は同じ状態である。 しかし一枚の写真(それが10枚、100枚でも同じだが)で逆説的な証明が不可能であることも承知の上。湖沼が富栄養化しタヌキモが消えつつあるのか、富栄養化しても生き残っているのか、時系列的な側面は写真からは判断できない。さらにタヌキモの存続条件としての富栄養化(それが導電率なのかCODなのか知らないが)のデジタルな指標が存在しない以上、それも推測でしかない。というわけでタヌキモが減少している理由は定かではない。 (P)わりと富栄養なため池でハスやヒシとともに自生するイヌタヌキモ 2005年7月 茨城県 |
Chapter3 変わった生態 |
捕虫嚢の位置 タヌキモのざっくりしたイメージは水中に浮遊し、捕虫嚢でプランクトンを捕らえて食うというものだが、仕組みとしては捕虫嚢を陰圧に保ち、水と一緒にプランクトンを取り込むというものである。生物的なシリンジである。これが「標準的な」タヌキモ(広義)の立ち位置かと思うが、意外とそうでもない場合もある。 ヒメタヌキモは前項の「貧栄養の水域を好む」にピタリと符合するタヌキモで、事実貧栄養の湖沼などしか見られない。この環境で独自の進化を遂げたと思われる点は、草体の半分以上を土壌に潜り込ませ、捕虫嚢はこの地下部分を中心に形成する点である。すなわち、さほど貧栄養の水中で期待できないプランクトンの捕食よりも土壌微生物の捕食を期待した進化であると言える。 画像は自宅育成のヒメタヌキモであるが、やや水深のある環境であったためヒメタヌキモ自身の枯死体の堆積の中に草体を潜り込ませる、という「技」を見せた。 ヒメタヌキモの生態を上記のように考えた時、この姿は栄養吸収という点においてまったくリーズナブルで納得できるものだ。睡蓮鉢には水質を悪化させるような生き物はおらず、雨水の流入以外の出入りがない。まさにこの意味では「貧栄養」だろう。対して鉢底の荒木田土を中心とする土壌には無数の土壌微生物が生息しているはずであり、食料調達において大きなアドバンテージがある。 この方法論の究極の姿がミミカキグサ(広義)であると思うが、タヌキモがこの土壌の縛りを脱却して水中を浮遊できるようになったのか、はたまた浮遊していたグループが合理的な食料調達の手段を見出してミミカキグサとなったのか、どちらが進化形なのかは分からない。しかし水中を浮遊している草体部分に捕虫嚢を持ち、なおかつ水中にプランクトンが豊富であればこの方向性の進化をする理由がないし、逆に土壌中からの栄養補給で充足していればわざわざフラフラと水中にさまよい出ることもない。ヒメタヌキモは両者の中間的な性質を持つ種として非常に興味深い種だ。 (P)ヒメタヌキモの栄養調達手段である「地下部」。捕虫嚢は見えるが葉緑素は持っていない 2006年9月 自宅栽培 「植物的」な方法論 タヌキモ属の大型種、フサタヌキモは捕虫嚢が小さく非常に少ないとされるが、少なくても育成経験上はあまり見た事がない。これでも成長は盛んであるし、越冬も行う。ここから導き出される結論は、捕虫による栄養調達はあまり行っていない、成長は別の手段に拠る、ということが言えると思う。 こうして考えるとフサタヌキモはミミカキグサや他種タヌキモに比べてより「植物的」であり、食虫植物のカテゴリーを離脱しつつある種なのではないかと考えられる。「植物的」なのは要するにエネルギー調達手段が光合成であるということ。 フサタヌキモが文字通り「フサフサ」しており他種タヌキモより大型になるのは日照の確保を目的としているから、と考えれば合理的な解釈が成立する。(人間にとって「合理的」というだけで、植物は往々にして違う顔も見せるが)ヒメタヌキモのように葉緑素が抜けて茶色くなった部分はないし(枯死部を除き)、土壌に潜り込むこともない。 同じタヌキモ属であってもこうした差異を持つ種類もあるので、元々特異な食虫植物というカテゴリーに加え、興味深い部分はまだまだあると思う。しかしこれだけ急速に見られなくなってしまうと自生地の生態観察もままならず、研究のための材料を集めるのも難しくなってしまうだろう。前項で触れたように本来の自生環境が「貧栄養水質」であるならば、全国的にそうした清浄な環境が失われつつあることは事実であり、近い将来(注7)に見られなくなってしまう危険が大きな水草であると思う。 この傾向はタヌキモ科に限らず、だからどうだ、という事はないのだが、危機に瀕しているのがイバラモ科やミズニラ、トチカガミ科のミズオオバコやスブタなど、個人的に好きな水草が多く危機感以前に寂しさを感じているのが正直なところ。個人でどうこう出来るレベルの話ではないが、問題提起は可能な限り行っていこうと思う。 (P)捕虫嚢の見られないフサタヌキモの草体 2013年7月 自宅栽培 |
脚注 |
(*1) 植物が有性生殖によって種子を生じることを意味する。(対義語:不稔性)本文に記したように交雑種は稔性を持たない場合が多く、身近な例では桜の代表種ソメイヨシノが不稔である。ソメイヨシノは人為的にオオシマザクラとエドヒガンの交配によって作出された「交雑種」であるからだ。作出された場所も分かっていて染井(東京都豊島区)である。植物に限らず作出したプロダクツには国内の地名や人名を冠した方がよい。なんでもかんでも自国起源にしないと気がすまない韓国人やブランドイメージ利用のためだけに商標登録してしまう中国人対策を考えた方がよい。 (*2) APGは本来分類体系の名称ではなく、被子植物系統グループ (Angiosperm Phylogeny Group)の頭文字を取った呼称で、便宜上、APG体系やAPG分類体系と呼ばれているに過ぎない。実態はDNA解析による分子系統学である。これによって従来分類(クロンキスト体系)は大幅に見直され、新設された科も多い。タヌキモ科はAPGでもタヌキモ科であるが、見かけ通り特異な科であった、ということだろう。 (*3) 茨城県取手市から守谷市を通り、つくばみらい市に至る道路。つくばみらい市までほぼ国道204号線と並行するイメージだが、常総ふれあい道路の方が大規模な商業施設が多く、栄えている場所が多い。隠れた名所ながら、取手市内をしばらく西に走ると3kmにも及ぶ桜並木となり、開花期にはおそらくこれまで見たなかで最も豪勢な花見場所となる。惜しむらくは街道の並木なので桜ばかり見とれていると事故ってしまうところ。 (*4) 早い段階で交雑種であることが明らかになっていたインバモ(ガシャモク×ササバモ)は自生状況を勘案すれば極め付きの希少種と言っても過言ではないがレッドデータには記載されていない。タヌキモは状況証拠的に交雑種であることが分からない状況下で、群落数の減少などの理由で記載されたものと考えられるが、頑なに訂正されていない。同様にシモツケコウホネはいち早く記載されたが、ナガレコウホネ(シモツケコウホネ+コウホネ)は記載されていない。(以上、レッドリスト2017) (*5) ニッチ。(niche)。ある一つの種が利用する、一定範囲の環境要因のこと。生態的地位は一つの種のみが占めるとは限らないが、多くの場合そこに競合関係が発生し、排他的な競争が起きる。同じ生態的地位を占める外来種の侵入によって在来種が衰退する事例が代表的なもの。 (*6) 多くのタヌキモにとってはプランクトンまたはネクトンが「餌」であるが、本文中にあるように土壌に潜り込む部位に捕虫嚢を付けるヒメタヌキモにとってはベントスが主な「餌」になっていると推測される。微生物、と表現すれば済むような気もするが、生活型の区分で言えばこの通り。尚、プランクトン、ネクトン、ベントスの区分は生物の生活型のみであって大きさや種類は限定されない。 (*7) 本文中に表でまとめた通り、タヌキモ属は11種がレッドデータに記載されている。IB類は「近い将来に野生での絶滅の危険性が高い」種であり、II類は「絶滅の危険が増大」している種、準絶滅危惧でも「現時点では絶滅危険度は少ないが、生息条件の変化によっては上のランクに移行する」ものである。今まさに生息条件が変化しており、自分の行動範囲でも1〜2年単位の時間でドラスティックな変化が起きている。 |
Field Note タヌキモの由来 |
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